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リダさんの追憶【3】

「そうだよな。今のリダからするのなら、そうなるんだろう」


「......今も昔もないだろう? そもそも、どうしてお前にそんな台詞を言われないと行けない? そもそも、そんな台詞を言うだけの筋合いがあるとでも言うのか?」


 気味が悪いまでに落ち着いた表情で、ゆっくりと語るアインに対し、私のフラストレーションが弾けそうになった。

 全くの意味不明だった。


 その態度も、喋り口も。


 そして、その後に出て来た台詞も......何もかもが理解不能な物ばかりだった。


「俺がこの世界に転生する時、お前も良く知ってるだろう道化師が、俺に二つの特殊な技術スキルを与えて来た。一つはお前も噂程度には聞いているだろう『予見』だ。ある程度までなら、俺は未来を見る事が出来る」


「ああ......その技術スキルで、私の一年後を予見したのだろう?」


 そして、今の私がいる。

 あるいは、この今ある状況も、ヤツは何年も前から予見の力を使って見ているのかも知れない。

 そこから転じるのだろう結末を含めて、だ。

 実際はどうなのか知らないがな。

 

「そうだな......全ては俺の予見通りに、事が進んでいた」


「そうかい......」


 私はギリッ! と、歯を激しく食い縛る。

 つまり、コイツの言う通りであるのなら、


「私の仲間達を殺した事も含めて全部......お前は予見する事が可能だったと言う事か」


「......」


 私の言葉にアインは無言になった。

 少し考えている様にも見える。


 だが、しばらく生まれた沈黙の後、ヤツは答えた。


「そうだ」


「......そうか」


 短く、でも確実に答えた。

 これで、コイツを許す選択肢が、私の中で完全に消滅した。


「なら、次の予見もお前は見る事が出来るか?......恐らくこうなるだろう」

 

 答え、私は魔導式を頭の中で紡ぎ、右手をアインに向けてから叫んだ。


「お前の死だっ!」


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 ドォォォォォォォンッ!


 超爆発が周囲にこだました。

 私の激情その物とも言える、憤怒の一撃だった。


「道化師は、この一つ目の技術スキル予見とは別に、もう一つの技術スキルを俺に与えた」


「......っ!」


 声は後ろから聞こえた。

 あの一瞬で、そんな所に?


 これが『予見』の力なのか?

 私が、あのタイミングで既に超炎熱爆破魔法フレインダムドを放つと分かっていたからこその芸当だと言うのか!


 ......。


 普通に厄介な技術スキルだな。

 最初から、私の動きは丸分かりと言う事になる。

 率直に言えば、見切っているも同然と表現出来た。

 少し甘い見積もりをしていたかと、若干の焦慮しょうりょを抱きつつあった中、アインは依然としてゆったりとしたスタイルのまま、私に話しを続けていた。


「道化師が俺に与えた二つ目の技術スキル......それは、夢を見せるスキルだ」


 夢だと?


 こうと言われ、私はここ数日に体験した、妙に懐かしい不思議な夢を思い出す。

 なるほど......そうか。


「何回か見た夢は、お前の仕業だったと言う事だな」


「そう言う事だ。お前が見た夢の数々は、俺のスキルによって見た......お前の追憶だ」


「追憶だと?」


 凄まじく違和感のある言葉だった。

 最初に見た原っぱの夢はまだ分かる。

 私がまだ子供だった時の夢だった。

 今でも鮮明に覚えている。


 だが、次に見た夢は......私にとって全く身に覚えのない異世界だった。


 魔法とか無くて、その代わりに科学があって......やたら発達してて、ここよりも多角面に発展した世界。

 私にとって全てが新世界でしか無かった。

 共通する点と言えば、人間がいる世界だと言う事位だろうか?


 探せば他にあるかも知れないが......夢の中で少しだけ垣間見た世界に過ぎない為、それ以外の共通点を見出だす事が出来ないでいた。


 ズバリ言えば、


「最初の夢は分かるが、二回目の夢はどう考えても私の過去じゃない......あれは、完全な異世界だ」


 私は真剣な顔でハッキリ断言して見せた。


「異世界......そうか、そうなるんだろう。この世界しか知らない『今のお前』ならな」


「さっきから何が言いたいんだ......?」


「お前は考えた事がなかったのか? 自分の前世についてを」


 ......は?

 ポカンとなる。

 

「そんな物ある訳ないだろ? オカルト過ぎて、話しがついて行けないんだが?」

 

 地味に呆れてしまった。

 全く考えた事がないと言えば嘘になる。

 けれど、だ?


「真剣に自分の前世を考えた所で、何がどうなるって言うんだ? 妄言をほざきに来たのなら、他でやってくれないか?」


「妄言か......はは。妄言であってくれたのなら、俺はそっちの方が良かったんだがなぁ......?」


 アインは力なく呟いた。

 まるで独白するかの様な口振りだった。

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