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リダさんの追憶【2】

 昨日、チズの自宅で告白した一連の話しがそれだ。


 あれから、私はユニクスから色々と『彼』についての話しを聞いた。


 最初は、私の知らない謎の人間であるのかと思っていた。

 だが、実際は違った。


 彼の正体......それは、私のクラスで剣士の授業を受け持っている人物。

 名前はアイン・リッチ。


 最初、私は同じ学園内に潜む学生だと思っていたんだが......どうやら先生だったらしい。

 地味に盲点ではあるんだが、なるほど確かに先生である可能性もあるわな。


 アインは私がこの学園にやって来る事を既に一年前から予見しており、そして転入して来る私を消そうと企んでいたのだと言う。


 剣聖杯終了後に、色々と物を知っているユニクスを殺そうともしていたらしいのだが......私の呪い(加護)を受けた事で、何とか難を逃れたとの事。


 実際の所は、偶発的に勇者としての能力に目覚め始めていた事で、アインの脅威から逃れていたりもするんだけど......まぁ、そこはちょっと勘違してると思う。

 この辺は、後で何回かユニクスに説明していたんだけどなぁ......未だに私のお陰って事になってる。

 いや、まぁ......別にどっちでも良いんだけどさ。


 なんにせよ、ポイントはそこではない。


 重要な事は、ユニクスの述べる『彼』の存在だ。

 ヤツは、少しやり過ぎた。


 私を狙っているのなら、私だけを狙えばよかったのだ。

 学園を破壊すると言う、実に非常識な挑発をした事で私が送り込んだ数多の冒険者を......コイツは殺した。


 私が学園へとやって来た理由の一つ......それは、殺された仲間達の敵討ちがある。


 特に最後に送り込んだパーティーは全滅している。

 誰一人として生還する事なく、物言わぬ姿での本部帰還になってしまった。


 ......そして。


 最後のパーティーは全員、私にとって長い付き合いのある大切な大切な親友でもあったんだ。


 単なる挑発であったのなら、命まで取る必要なんか無かったんじゃないのか?

 それを......どうして全員、殺した?


 許せなかった。

 如何な事情があったとしても、どんな悲劇が存在していようと、私の親友達を殺したアインだけは......絶対に許せない。

 例え法で貴様を裁く事が出来なかったとしても、私が必ずお前を裁いて見せる。


 かつて、命を懸けて幾多もの困難を乗り越えて来た親友との弔い合戦は、もう間もなく始まろうとしていた。


「今日の夜だ」


 私は、隣のベンチに座っていたユニクスへと、そうとだけ答えた。


「......そうですか」


 ユニクスも、ただ黙って頷くだけにとどめた。

 きっと、他にも色々と思う所があるのだろう。

 もっと、私に言いたい事なんかも沢山あったのだろう。


 しかし、言いたい衝動をグッと堪え、喉元にまで押し迫っている台詞を飲み込んでから、私に口を開いた。


「止めはしません......ですが、一つだけ約束して下さい」


「なんだ?」


「絶対に......絶対に、生きて帰って来て下さい」


 ユニクスは切実な己の気持ちを強い言霊に変え、神妙な顔付きのまま私に答えたのだった。




  ●○◎○●


 


 ......思えば、この学園に来て色々あったと思う。


 無愛想な少年が、実は巨人だったり。

 初めて出来た同性の友達が、実は一国の王女だったり。

 何かと夢見ガチな天才魔法少女が、実は越えられない壁にコンプレックスを抱きつつ、尋常ではない努力をする秀才だったり。


 そう言えば、最初以外は魔法少女に変身してなかったな。

 実は、ここにも意味があるんだが、この話しは別の機会で話そう。  


 あー、後は悪魔から転生した勇者がいたな。

 これでレズじゃなかったら、大団円だったと思うんだけど。


 命を狙われていた暗殺者を、逆に腕利きの賞金稼ぎから救うとかもあった。

 本当に色々あったと思うよ。


 だけど、これで全てが終わる。

 

「......来たか」


 学園から少し離れた、大きめの公園。

 そこに、私は一人の男を呼びつけた。


 授業が終わってすぐ、私は職員室へと向かった。

 そして、迷う事なくアインをこの公園に来る様に言ってみせた。


 今日の午前零時。

 公園広場で話しがある......そうとだけ述べた私は、一方的ではあったが、約束をした場所で立っていた。


 こんな、独りよがりな挑発にも等しい内容で、本当にアインがやって来るのか、いささか不安ではあった。

 だが、どうやら杞憂に終わった模様だ。


「こんな時間の、こんな場所に呼ぶとは......流石はリダ・ドーンテン。本当、その猪染みた猪突猛進な性格は変わらないんだな」


 そうと答えながら、落ち着きのある態度で公園に現れたアイン。

   

「妙に慣れ慣れしい台詞を言うヤツだな......」


 アインの台詞に、私は不快をあらわにして、そうと吐き捨てた。

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