激戦! リダさん、どうしてかイリさんと戦う【11】
そう言えば、ルミはイリ達に別れの挨拶とかしなくても良かったんだろうか?
何だかんだで色々と親密な仲になっていた様な気がしたんだがな?
「なぁ、ルミ? イリ達、もう帰っちゃったけど、挨拶とかしなくても良かったのか?」
「.........は?」
私の言葉を聞いたルミは、思いきり愕然とした顔になって、おもむろに外へと飛び出した。
そして叫んだ。
「ちゃんと私に挨拶位、して行きなさいよぉぉぉぉぉぉぉっ!」
......。
ああ、忘れてたのね、あの二人。
そして、近くでフラウ達と一緒に喋るのに夢中で、イリとキイロが飛竜に乗ってニイガに帰って行った事に気付かなかった訳だ。
つまり、私からすればどっちもどっちな気がする。
「まぁ、春休みにまたニイガに里帰りするんだろう? その時にまた会えば良いさ」
「うぅぅ......うん」
ルミは、まだ何処かで納得の出来ない顔をしつつも、なんとか強引に自分に納得させる感じで頷いた。
「それにしてもさ? リダ? チズさんってさ? 昨日リダを狙った暗殺者なんだよね?」
そこからルミが不思議そうな顔になって私に尋ねて来た。
「うん? そうだな」
「でも、今日は友達感覚でその人の家に来てるんだよね?」
「感覚と言うか、友達だ」
「......そか、なるほど」
ポンと手を打つルミ。
そして感心してみせた。
「やっぱりリダは凄いよね。昨日まで敵だった相手でも、次の日には友達になってるんだから」
「それ、誉めてるのか?」
「誉めてるよ。普通の人にはない、絶対的なカリスマだよねぇ」
カリスマねぇ......。
そんな代物が私にあるのかどうかまでは分からないが、一夜にして敵を味方に変えると言うのは、確かにそこまで滅多にある事ではない。
けど、だ?
「ユニクスだって、最初は敵だったろ?」
「そうだねぇ」
「良くわかんないけど、キイロも確か最初はお前を狙っていたんじゃなかったか?」
「今はイリを狙ってて、凄い迷惑だけどね!」
「まぁ、そこは置いとけ。話が面倒になる......とにかく、今は味方だろ?」
「味方ではあるね」
ルミは、一応の頷きを返した。
この姫様からすると、キイロは未だに敵対しないと行けない間柄なのかも知れない。
恋のライバルと言う意味で、だ。
私個人の意見からすると......もう既にその対決はワンサイドな結果が出ている気もするんだが、そこを突つくと更に話が脱線しそうだったから、言わない事にしておいた。
「そうだろう? つまり、さ? 昨日の敵は今日の友になる事ってそこまで珍しくないって言うかさ? なんでもかんでも倒せば良いわけでも無い訳だ?」
「そうだねぇ......なるべく、皆と仲良く出来るのなら、そっちの方がみんながハッピーになれて良いねぇ」
つまり、そう言う事だよルミ姫様。
互いに協力する事が出来るからこそ、人間は強いんだ。
逆に言うのなら、一人の力はそこまで強くはない。
個々の強さは弱くても、みんなで力を合わせる事で、無限の強さにまで昇華して行く。
これこそが、人間の人間たる強味でもある。
だからこそ、救える命は......その幸せは、しっかりと救わないと行けないんだ。
そこまで考えた時、ルミが穏和な顔になって言う。
「チズさん達を助けるんだね?」
まるで見透かす様に。
「そう言う事だ。協力してくれると助かる」
「とーぜん! 泥船に乗った気持ちでバーンッ! と助けちゃうよっ!」
「泥船だったら沈むだろ!」
小粋にふざけた事を言うルミに、思わず私は喚き声を返してしまった。
きっと冗談で言ったんだろう。
......多分、そんな気がする。
「けど、助けるにしても......どうするのが良いのかな?」
「そこだよ、ルミ」
私は真剣な顔になっていた。
問題は、チズ達を助ける方法にある。
一番手っ取り早いのは、暗殺依頼をして来た諸悪の根元を叩く事なんだが......これは少し無理だ。
謎の道化師ってのは、ほぼ間違いなく伝承の道化師を言ってるんだろう。
コイツを直接叩けるのなら、もう既にやっているんだ。
じゃあ、どうするか?
さしあたって......今の私らが出来るだろう事柄は、
「道化師の側近だかって言うスーツの男を叩く事かな」
「? スーツの男? なにそれ?」
全くちんぷんかんぷんって顔になっていたルミを前に、私は自分が知っている限りの内容を口にする。
「一昨日、チズ達に脅しを掛けて来たヤツだ。私の素性をある程度まで知っていて......その上で暗殺しないと、身籠っているチズの子供を殺すと脅して来た」
「うぁ......なにそれ? 最低過ぎる」
ルミは眉間に皺を寄せ、怒りの感情を見せた。




