激戦! リダさん、どうしてかイリさんと戦う【5】
少し遅れて、強大な爆発と爆風が周囲に巻き起こる。
......えぇと。
周囲にいた人、大丈夫だよね?
ちょっと心配になったけど、今は直撃したイリを確認するのが先だ。
イリであるのなら、直撃を喰らっても尚、死ぬ様なタマではない。
そこは、うんざりするまでに良く知っている。
けど、流石にノーダメって事はないだろ?
てか、結構な痛手を受けていて欲しい所なんだけど。
そんな事を考えていた時だ。
「リダの癖に、味な魔法の使い方をするじゃないかよ」
爆風の砂煙が舞う中、女になっていたイリがニィ......と、不気味な位に好戦的な笑みをゆっくり作りながらやって来る。
......うぉう。
「単なるゴリ押し脳筋女だったお前が.....ここまでやるとは本気で思わなかったぞ」
悠々と口を動かすイリは、軽く頬が煤けた程度のダメージしか受けていなかった。
「どんだけ化物なんだよ、お前は......」
ちょっと呆れた。
けれど......でも、さ?
「ふふ......あはははっ!」
私は笑った。
流石過ぎるよ、イリ!
本気で戦ってる私を相手にしても、全然対等に戦ってるよ。
「......」
イリは無言のまま顔を引き締めた。
きっと、ヤツは分かっている。
私が笑い始め、テンションが上がって来た時こそ、私の本領が発揮される事を。
「化物は、おめーだ......リダ」
嘆息混じりに答えたイリは、かったるそうな顔付きを少しだけ見せつつも、瞬時に闘気を高めて来た。
「ハンッ! 化物に化物と言われたくないねぇっ!」
私も精神統一状態で気迫を全面に押し出した。
瞬間、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
私のエネルギーにシンクロする形で大地が震撼する。
行くぞ、アホ賞金稼ぎっ!
これが、会長様の力だっ!
私は再び残像を産み出す。
「残像連脚か? 流石に二回も同じ技を受ける程、俺は甘くないぞ?」
イリは鼻で笑う形で迎撃体勢を取った。
多分、口だけではないだろう。
もし、ここで残像連脚を出したら、イリは逆にカウンターして来る勢いだ。
そう言う事が出来る様なチートなヤツなんだ!
本当! 二度と戦いたいとは思えない!
......でも。
私がアツくなれる。
そんな、貴重な......仲間なのさっ!
八人の残像を作ったまま、私はイリに突き進んだ。
当然、今度はイリも単純に避けるだけではなく、攻撃までして来るのだろう。
......さっきと同じなら、な?
だが、違う。
残像は、あくまでも囮だ。
正確に言うのなら、八人の中に一人だけ残像ではない私がいる。
本体を一瞬で見抜く事が大事だった。
これまでは、わざわざ別々の方位から、対象を囲む様に攻撃をしていたのだが、今度はそれぞれが全くのランダムでイリに攻撃を展開している。
言ってみれば、私が分身を使って戦っている様な感覚だ。
本物か残像かの区別が付かない攻撃。
......そして。
この残像に翻弄されてしまうと、何処かで隙を突いた本体の私から必殺技を受ける事になる。
「......終わりだ」
私は、一瞬の虚を突いて、イリの真後ろを取った。
この瞬間を待っていた。
神龍三連脚!
私は自分の全神経を右足に注ぎ込み、
ズドンッッッ!
まるで、鉄球でも衝突したかの様な轟音を出す蹴りでイリを蹴り上げた。
「ふぐぁっ!」
顔をくしゃりと歪めながらも、まるでボールの様に空へと飛んで行く。
その上空に待っていた私。
蹴り上げたと同時に、イリが飛んで行くスピード以上の早さで上空に飛んだ私は、
ドゴォォッ!
やっぱり大金槌で叩きつけられたかの様な撃音を轟かせる一撃をイリの腹部に叩きつける。
この一撃でイリは上空から一瞬で地上に落ちて行き、
ズドンッッッ!
地上に激突。
土煙がもうもうと上がる。
......直後。
地上へと落下する以上の勢いで直角に落ちて来た私が、
ドコォォッ!
地中に埋っていたイリに止めの一撃を放つ。
飛び蹴りと言うより、上空からメテオが飛来して来た様な一撃だ。
衝突にも近い為、最後の一撃をイリにぶつけた瞬間、激突の余波で周囲から爆風にも近い衝撃波が吹き荒れる。
......やったか?
現時点で、私が繰り出す事の出来る最強技でもある。
これでも尚、立ち上がるとするのなら......私の勝機がかなり薄くなるだろう。
そうじゃなくても、今回はイリが比較的防戦に回ってくれた事で、攻撃をする事が可能になっていた。
簡素に言うのなら、何らかの形で再びイリと再戦する事があった場合......次は勝てる自信がない。
必ず負けるとは言わないがなっ!




