【6】
私としては、普通に学園生活をする上で楽しくやれる友達がいればそれで良いんだよ。
「大体、どうして師匠とか、畏れ多いとか……そんな事になるんですか?」
あたしゃ、少し呆れて言う。
「それはもちろん、リダ様の魔法の凄さです! あんな召喚魔術を生で見れただけで、私の胸は興奮モノです! 鼻血モノです!」
鼻血出すんぢゃないよ!
結構可愛い女の子なんだから、あんた!
ショートボブをきれいに纏めた金髪の女の子で、いかにも清楚な感じがして、魔法で鼻血出す様な娘には見えない。
「きっと、リダ様はそこらの冒険者より一億倍は強いです! ああ……やっぱり私の師匠になって欲しい!」
彼女はうっとりした顔をして、瞳にキラキラ星を作っていた。
はぁ………わかった。
「師匠は、ちょっと難しいのですが、私が使う魔法を教える程度の事なら、良いですよ?」
「マジで!」
そう言って来たのは、さっきのチャラ男だ。
お前には言ってないのだが?
「実は、俺も魔法使いを目指しててさ? 冒アカでも来年は魔法を選択科目にしようとしてたんだよね」
チャラ男は聞いてもいないのに、言って来た。
ちょっと話しが反れてしまうが、今の私はこの学校の一年生としてやって来ていた。
なので、来年進級したとすると二年生になる。
冒アカは二年になると己の意思でそれぞれの専修学科を決める事が出来る。
まずは一年、自分の得意分野を探して、そこから自分の得意な道に進んでもらおうと言うカリキュラムだ。
だから、言ってる意味は分かるんだが。
「あの………私ごとき、一介の学生ではなく、専門の先生に相談した方がよろしいのでは?」
私はそれっぽい事を言って、遠回しに断りを入れる。
悪いが、もうボッチは卒業してるんだ。
お前の様なチャラいのは生理的に無理なんだよ。
「ええー………良いじゃんか。ケチな事いわないでさぁ」
「あはは………」
「そこまでにしておけ ルーク。リダも困ってる」
今の所は猫を被りたいだけに、困った顔して苦笑しつつも胸中でのみ怒りを放出していた私を見かねて、パラスが言って来た。
あんた、良い男だな!
「………わかったよ。けど、気が変わったらいつでも教えてくれよな、リダちゃん」
うぁ………なんて慣れ慣れしいんだ、コイツわ。
思わず顔に出そうになったけど、なんとか我慢出来た。
これでも忍耐は強い方だ。
けど、正直限界だ!
「そ、それじゃ、取り合えず私はこれで」
逃げる様にチャラ男から立ち去る。
パラスには、それとなく手だけ振った。
振り返してたのが見えた。
うむ、良い友達になれそうだ。
同時にチャラ男もブンブンやってた。
取り合えず無視した。
そこから二歩、三歩歩いて気づく。
さっきの女子が普通に後ろにいた。
あなたは何処の守護霊ですかね?
「普通に横を歩いて下さると助かるのですが……」
まるで、どっかの従者か貴族の召し使いみたいな感じで私の三歩後ろくらいを歩いていた。
流石に引くわ!
「で、でも……リダ様の横を歩くなど畏れ多くて……」
「畏れ多くないので、大丈夫………ああ、そう言えばまだ名前を聞いてませんでしたね? 教えてもらっても良いですか?」
「それは申し訳ありません! 私はルミと言います! ルミ=トールブリッジ・ニイガです!」
「………え?」
………いや、まて?
その名前にはメチャクチャ覚えがあるぞ?
この世界は、サードネームがある時点で相応の身分があり、最低でも貴族のお嬢さんになるのだけど………いやいやいや!
「ニイガ王家の御姫様?」
「あ、わかりました? 凄いです! 博識です!」
………まぢか。
あたしゃ、思わず絶句したよ。
ニイガ王家と言ったら、超魔導都市を首都にする大国だぞ!
三万を超える魔導兵と、一万近い魔導騎兵を主力とした、魔法大国の御姫様なのかよ、あーたわ!
「えぇと、ルミ様とお呼びすればよろしいでしょうか………?」
あたしゃ、思いきり腰が引けたよ。
多分、会長の肩書きが言えても様付けで呼んでるよ。
ニイガって本当にキングダムな所だし。
「絶対に呼ばないで下さい!」
「えぇと、ではどの様にお呼びすれば………」
「普通にルミで大丈夫です。そもそもクラスメートと申してたのはリダ様ではありませんか!」
「なら、せめて私の名前をリダと呼称して頂けないでしょうか?」
つまり、お互い様だと言いたい。
「……なるほど、わかりました」
ルミ様も分かったのか、そこで納得加減に渋々頷いた。
「では、です? 私も普段の言葉にするので、リダさ………リダも普通に話してくれますか?」
まぢで?
王女様にタメ口とか、本気で心臓に悪いんだけど!
「そ、それはちょっと………」
「駄目なら、私もリダ様とお呼び上げ致します」
ぐぬぬぬっ!
し、仕方ないなぁ………。