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夢と、現実の狭間【21】

 どういう方法を使ったのか? その詳細までは知らないが、私は精神のみ肉体から分離して他の世界へとワープした。


 結果、気付いた時には、全く知らない場所へと空間転移してしまったかの様な錯覚へと陥ってしまったのだ。


 精神のみ分離してしまった私は、実質夢でも見ているかの様な状態になっていたのだが……実際は、精神を具現化させる事で現実の世界で夢を見ると言う、実に奇妙な現象が起こっていたのだ。


 つまり、私にとって夢を見ている感じではあるし、実際に肉体から精神を引き剥がされている関係上、私その物は夢を見ているに値する状態になっていたのだ。


 だが、分離した精神は時空を越え……今とは違う場所で『実在して』いた。


 結果、これは私にとっての夢であり……実は、時空を越えた先にあった現実でもあった。


 そして、これら全てが、この階層のエリアボスが行った試練だった。


 ここのエリアボスは……まぁ、話の流れからして察する事が可能かも知れないが……獣人の族長だ。


 私もこの族長は只者ではないなとは思っていたが……正体を聞いた時は流石に驚いたぞ。

 ここのエリアボスである可能性と言うか、そう所までは予測していたんだけど……驚いたポイントはそこではない。


 ここのエリアボスの名前を聞いた時が、一番の驚きだったんだ。


 まぁ、そこに付いては後で話そう。

 とりあえずは話を続けようか。


 夢であり、現実でもあるこの世界にユニクスとやって来た私は、自分でも知らない内に木の階層にやって来た冒険者が無条件で受ける事となるだろう試練を受けた。


 それが、今までの内容だな。


 鬱蒼と生い茂る森の中へと放り込まれる形でさ迷い……そして、ローグルさん達と合流し、最終的には族長の頼みを聞いて西大陸の軍隊と戦う事になって行く。


 ここに関しては、もう言う必要はないだろう。


 私からすれば、遠い大昔に起こった過去の歴史みたいな物だ。


 その時代にリアルタイムで生きていた訳ではないので、実際に今と全く同じ様な出来事が起こっていたのかなんて知らないけど、ここのエリアボスでもあった族長の話を聞く限りであるのならば……私が行った行動によって『これで過去が正しい歴史に変わった』との事。


 何ともおかしな事を言う。


 族長の口振りは、まるで……私がこのダンジョンに挑戦をし、現在の階層へとやって来た時に過去へと旅立つ事……それら全てが決まっていたかの様な口振りだった。


 もしそうであれば、私がこのダンジョンに挑戦しないと言う現在があった場合、どうなってしまうのだろうか?


 ふと、この様な疑問が浮かんだ時……まるで私の胸中を見透かす感じで族長は答えた。


 もし、その様な事が起こっていた時は、歴史はより悲しい物になっていた……らしい。


 族長の話を何処まで信用すべきか? 少しばかり考えてしまう所ではあるのだが……彼女の話が正しいのであれば、私が飛ばされた所が、過去から未来を変動させる為のターニングポイントだったらしい。


 過去へと行って未来を変える。


 これは、良くあるタイムスリップ物の映画なんかでは良くある物だ。


 実際に、時間を自由に行き来する事が可能になれば、過去に行って未来を変える事は可能の様な気がするのだが……実際には、そこまで単純な代物ではないらしい。


 族長の話を聞く限りであると……時にも、自浄作用の様な物があるらしいのだ。


 簡素に言うと、時間と言うのは一定の流れの様な物が最初から存在しているらしい。


 一例を述べよう。


 例えば、本来あった時間の流れであるのならば、小石に(つまず)いた事で馬車に轢かれてしまい、そのまま命を失ってしまう様な人間がいたとしよう。


 そして、この悲運を回避させる為、未来からやって来た人間が小石を取り除いたとする。


 こうすれば、転んでしまう大本である小石が無くなってしまう為、馬車に轢かれると言う悲運もなくなり、悲劇は回避される様に見える。


 ……が、実際にはどうなるのか?


 小石を取り除いても、違う理由……例えば別の小石が『偶然同じ場所に転がって来て』その小石に躓いてしまう。


 結局は、違う小石に変わっただけで、その人が馬車に轢かれて死ぬと言う結果だけは変わらないのだ。


 これが、時間の中に存在する自浄作用……時が定めた運命とも言われている。


 ……らしい。


 最後におかしな言葉を付け加えてしまったのだが……私も族長から聞いている話をそのまま言っているだけなので、こんな表現になってしまうんだよな。


 ともかく、こんな感じで……だ?

 未来を変えようと過去に向かったとしても、単純に過去へと向かうだけでは未来は変わらないと言う事が言いたいのだ。

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