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夢と、現実の狭間【18】

 ……って、そうじゃない! そうじゃないだろ、私! 絵的な物なんてどうでも良いんだよ!


「……お前は生きろ。私は無駄な殺生はしない」


「……なんだと?」


 真顔で答えた私に言葉に、男は眉をピクリと動かした。


 少し……否、かなり意外そうな顔をしていた。


 その上で、男は言う。


「お前は、南西大陸に住む、野蛮な原住民ではなかったのか?」


 ……侵略者が、どの口で物を言ってるんだよ。


 私からすれば、一方的に武力で訴え掛けようと、わざわざ千人程度の部隊を率いてこの島に上陸しているお前らの方が、十分過ぎるまでに野蛮な行動を取っていると思うんだけどなっ!?


「アンタが思っている程、私は野蛮人じゃない。ちゃんと文化的な生活もしているし、博識とまでは行かないが、浅学と言われる筋合いはない程度には知識も所持している……どんな事でも西側の人間ばかりが優秀だと勘違いしているのなら、それは大きな幻想だと言う事を知るべきだな?」


「……なら、私はどうすれば……」


 そんなの、私の知った事か。


 本当はそう言いたい私がいたのだが……こんな事を言ってしまった日には、またもや妙な反発をされそうで怖かったので、


「西に戻って、他の大陸との対話を進めるべきだな……今後、西は中央と南西の両方から攻撃を受ける事になるだろう」


 私なりに、過去の歴史を思い出す形で男へと助言めいた台詞を口にした。


 今と言う時代が、正確に何年前なのかは分からないので、少し差異が発生しているかも知れないが……私の予測が正しいのであれば、中央大陸が西側諸国の連合体……つまり、西大陸の脅威に対抗する為、一つの連合軍を形成する時期だ。


 そして、この時期にカントー帝国も誕生する。


 トウキを首都とした、強固かつ強大な帝国だ。

 

 このカントー帝国を主軸に中央大陸は一つの大きな連合軍を結成し、西大陸の連合軍に対抗出来るだけの実力を持って行くのだった。


 余談だが、この時期に中央大陸の中にあった他の国も併合や統合などをし、現在の地域図と限りなく同じ状態になっていたりもするぞ?


 例を述べると、魔導大国ニイガもこのタイミングで隣国にある島国のサァドと併合をしているし、元々は三つの国で形成されていたクシマも一つの広大な国へと統合されて行った。


 広さだけならカントー帝国と大差の無い、広大な国土を持つクシマの背景には、世界戦争で一丸となる為、三つの国が一つに統合された事で生まれた為、他の中央大陸の国よりも広い国土面積を誇っている訳だな?


 ……まぁ、人口密度は……察しだが。


 閑話休題。


 この様に、中央大陸ではまさに統合と併合のラッシュが続いていたのだ。


 西への脅威に対抗する為……侵略されない様に、自分達の人権を……子供達の未来を勝ち取る為、命をとして戦う準備をしていた訳だ。


 こうして世界戦争の中核は西大陸連合軍と中央大陸連合軍による熾烈かつ凄惨な戦いへと発展して行くのだが……ここで、中央大陸に朗報が入る。


 なんと、南西大陸の国々が連合部隊を編成し、中央大陸に加勢する方針を取って来たのだ。


 この南西大陸の動きにより、西の命運は暗転した。


 一応、話によると……北にある超大国・ホッカイと西側連合が手を結ぶ可能性があったらしいのだが、色々あってご破算になって行ったらしい。


 ここに関しての経緯は知らないが……仮に、この同盟が成立していた場合、中央大陸の命運は劇的に悲運へと傾いたかも知れない。


 あるいは、私の知っている歴史以上に凄惨な戦争になっていた可能性もある。


 そう考えるのであれば、ホッカイが西大陸の連合軍と手を組まなくて良かったと思う。


 最終的に命運が尽きた西大陸連合軍が白旗を上げるのは、中央大陸連合が南西大陸連合と手を握り、双方からの二面攻撃を受ける事で、中央大陸連合軍が当時の西大陸諸国の中心的な国家・キートを制圧した事で戦争に終止符が打たれる。


 その後、様々な紆余曲折を経て……現在は互いに友好的な関係を大陸単位で築く事になって行くのだが、それはまた別のお話。


 ここらについては、機会があった時に述べる事にしよう。


 そこらはともかく。


「今ならまだ間に合うだろう。西と中央は武力による主張をするのではなく、対話による平和的な討論をするべきだ。お前達が始めて行く、勝手な争いに巻き込まれる一般人の身にもなれ」


 私は真剣な顔になって、上官っぽい男に答えた。


 ……そう。

 ここは声を大にして言いたい。


 国の意思だか何だかは知らないが……上に立つ人間の都合で死ぬ一般人の気持ちを少しは考えた事があるんだろうか?


 確かに、そいつはその国の生まれで……愛国の為、国を守る為に命を懸けると言うのは、これ以上ない道徳であるのかも知れない。


 しかし、考えてほしい。


 最初から、戦争と言う選択肢以外を国のトップが選んでいれば、庶民は普通の生活をのんべんくだりんと送る事が出来たのだ。

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