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激戦! リダさん、どうしてかイリさんと戦う【2】

 イリとジャンは互いに睨み合う形から、一気に行動を移した。


「おぉぉぉっ!」


 咆哮にも近い叫びを激しく放つイリ。


「......」


 他方のジャンは無言ながらも、気合い十分の気迫を見せてイリへと攻撃を繰り出す。

 さっきまで無手の状態だったジャンだが、いつの間にか手には二本の短剣ダガーを手にしていた。

 判然とはしていないが、多分......あの短剣には猛毒の類いがたっぷりと塗ってある。


 ハッキリとは見てないけど、刀身の色が普通じゃない。

 ここから考えても、短剣の刀身に何らかの細工をしている事だけは確実だった。


 他方のイリは、普段通りのベアナックル。

 根本的に武器を持たないのが、イリのスタイルだった。


 まぁ、実は私も武器を持たない戦闘を好んでやる傾向にあるから、分からないでもないんだけどさ?

 でも、イリの場合は格闘的な戦術が得意だから無手で戦うとかではなくて、単純に喧嘩技が得意と言うか......武道家ではなく喧嘩屋って感じだった。


 それは、今の攻防を見ても良くわかる。

 

 ジャンの暗殺技なのだろう短剣の斬撃をかすりもせずに全て避け、


 ドムゥッ!


 重量感のある、力任せのボディーブローをジャンに叩き込んでいた。

 ボクサーの様に、ルールを元にした殴り方は当然しない。


 鳩尾みぞおちを狙って、強烈な一発。

 下手な暗殺者より暗殺者らしい。


 要は、相手の急所をわざと狙って攻撃してる。

 その気なら、目潰しだって平気でやる。

 

 簡単に物を言うのなら、


「殺し合いに汚ねぇもクソねぇからな!」


 ゴッッッ!


 イリがそうと叫んだ直後、ジャンの首が不自然にへしゃ曲がる。

 ......。


 いや、そうな?

 殺し合いにルールはないよ。

 私も同感だ。


 私らがやってるのは、ルールがある試合なんて、真っ当なモンじゃない。

 お互いに命を賭けてる、命の取り合いだ。


 強いてルールがあるとしたら......相手を殺したら終わる。


「ジャンッ!」


 イリに蹴られた事でなぎ倒される様に倒れたジャンを見て、即座にゴルゴンの女......チズが駆け寄って来た。

 頭から落ち、完全に卒倒してるジャンは......ああ、だめだ。

 今すぐ、上位復活魔法リザクレションを掛けないと死ぬ。


 チズは倒れたジャンに駆け寄って、即座に上半身を抱き抱える為に、その場へとしゃがみこんでいた。

 そこに、イリは立っていた。


「......っ!」


 チズは絶句する。

 圧倒的なプレッシャーをチズに与えたイリは、毅然とした表情のまま口だけを動かしていく。


「お前らの罪状を言う......殺人。これだけだ。元来、これだけであるのなら俺クラスの賞金稼ぎが動く事はない......が、お前らは殺した数が違う。桁違いだ」


 冷淡に、ただただ機械的に無感情な声を吐き出して行くイリ。


「お前達には、二つの選択肢を用意している。一つは衛兵に引き渡され、法に殺される。もう一つは」


 こうと答えた所で、イリの瞳は更に冷淡な物になった。


「俺に首を跳ねられる事だ」


「......」


 チズは慄然とした顔のまま、何も言う事が出来なくなっていた。

 まさに、言葉が出ない状況だ。


 そこから、起死回生とばかりに石化の力をイリに向ける。

 ちょうど、イリがチズを真っ直ぐに見ていたからだ。

 

 しかし、石になるどころか、何の変化も起きなかった。


「魔眼の情報は既に出ていた。当然、対策もして来る」


 言うなり、イリは自分の目を指してみせる。


「予め、自分の瞳に魔眼を封じる魔導壁を発動させておいた。わざと目だけにしたのは、カモフラージュだな。気付かれなかったら、最低でも一回はお前の不意を突ける」


「......くっ!」


 チズは苦々しい顔になった。

 同時に、絶望を知ったらしい。


「選べ。俺は慈悲深い」


「選ぶ必要はないぞ」


 ......。

 まぁ、お節介だとは思うけどさ。


 イリが完全に王手を掛けていた所で、私はそうと言って見せる。


「......は?」


 ああ......まぁ、そう言う顔になるよな。

 

「この二人は、確かに罪を幾つも作った。罰を受ける必要もある」


「分かってるじゃねぇか」


「だが......この街に来てからの二人は、確実に変わった。恐らく、前々から変わろうとしていた末の事だったんだと思う」


「......?」


 イリの眉が思いきりよじれた。

 顔では言っている。

 何言ってんの? お前?......と。


 そんなイリの素朴な疑問に率直な私の意見を言うとな?


「罪を憎んで人を憎まずってヤツだ。改心しようと考え、今後も平穏に静かな生活を送るつもりなら、それでも良いんじゃないのか?」


「......正気か?」


 イリは信じられないと言わんばかりだった。

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