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夢と、現実の狭間【13】

 私としては、その言葉が良い心の支えになった。


 とても有り難い台詞だな。


「心配してくれてありがとう。そう言って貰えて、私の気持ちもかなり楽になったよ」


「……いや、それはそれで良いんだが……ほ、本当にやるのか?」


 かなりハラハラした顔になって言うローグルさん。


 ……うむぅ。


 確かに、現状を考慮するのであれば、私バーサス西大陸軍千人と言う構図なのだから、心配しない方がおかしい。


 まして、私の様な可愛い小柄な乙女なんだから、ローグルさんの視点からすれば心配しない方がおかしいのだ。


 しかし、ローグルさんに言いたい。


 それは、一般論と言うヤツだ。


 既存の概念ってヤツだ。


 世の中と言う物は、時に既存の概念には当てはまらない出来事が起こる事だってある。


 それがまさに今なのだ。


「ローグルさんには正式に伝えてなかったかも知れないが……そうだな? 自己紹介の仕切り直しをさせて貰おうか?」


 思い付く感じで答えた私は、そこで自分の冒険者カードの複製(コピー)をローグルさんに差し出してみせる。


 世界冒険者協会・会長ことリダ・ドーンテンの冒険者カードを。


「…………ああ、なるほどな」


 冒険者カードを見たローグルさんは、少しだけ驚いた顔をみせ……そして納得した。


「どうりで強い訳だよ……リダ会長。只者(ただもの)ではない事は薄々気付いていたけど……とんだ大物じゃないか」


 冒険者カードを見て納得が行ったのか?

 そうと答えたローグルさんは、もう私を止める様な態度をみせなくなっていた。


 ……ぐむ。

 少し失敗したかな?

 これでは『私は化け物です』と、自分からアピールしてしまった様な物だからな。


 ……いや、だけど……これで良いのかも知れない。


 今後、ローグルさんは今回の経験を経て、また一つ冒険者としての成長を果たす事になるだろう。

 また、一つ……高みを目指す事になるだろう。

 そう言った意味で、一つの座標が必要だ。


 より強く……たくましく。

 困難な状況に置いても、それらの危機を全てはねのけてしまう様な冒険者になる目標。


 その道しるべに、私がなれるとするのなら……若干の遺憾こそあれ、光栄でもある。


 よし、やってやるか。


 このフレーズを言うのは久しぶりな気がするけど、敢えてローグルさんに言おうか。


「見せてやるよ? 会長様(ラスボス)の実力を、さ?」


 不敵に笑い、私は西側大陸の兵士達が大挙している渦中に、その身を投じて行くのだった。




        ○◎●◎○




 駐屯地の外れ……間もなく草原地帯が見える所まで向かった私。


 正直、駐屯地のど真ん中でやっても構いはしなかったのだが……そのまま戦闘を開始すれば、駐屯地のテントや設置物をアレコレ破壊してしまいそうだったからな。

 口コミを広めて貰う為に、一人の死人を出さずに退去して貰わないと行けない関係も考慮すれば、コイツらがオネンネしないと行けない施設も確保しなければならない。


 だからして、元来であるのなら駐屯地の外にある草原で戦闘を仕掛けようと考えていたんだが、


「……おい、何処まで行く気だ? まさか、逃げるつもりなんじゃないだろうな? いい加減にしとけよ? テメーの墓場なんて、何処だって変わらないんだからよ!」


 戦う場所を変える為に歩いていた私へと、挑発する形で答えた兵士の言葉を耳にした事により、私は足を止めた。


 我ながら、中々の短気だとは思う。


 思うんだけど……やっぱりムカついた。


「人が折角、仏心を出して、駐屯地の被害を少しでも軽減してやろうとしていたと言うのに……気が変わった。お前ら、ここで私に殴られろ」


「……なに? へぶわぁっ!」


 頭に来たから、挑発した兵士をぶん殴る。


 これが開戦の合図に変わった。


 次の瞬間、周囲にいた全ての兵士が私へと襲い掛かって来る。


 もう、数えるのも馬鹿らしい程の槍が、私目掛けてやって来た。


 ここで上に飛んで槍をかわしてやっても構わなかったのだが……敢えて、それらを受け止める形を取る。


 理由は主に二つ。


 一つは、勢い良く多角面から槍が振り抜かれている事。

 つまり、このまま避けると、避けた槍が他の兵士達に向かってしまい、綺麗な同士討ち状態になってしまう。

 なるべく死人を出さないと言う事も目的の一つだしな?

 周囲には、もう、西大陸軍の兵士だらけだ。

 こんな人だらけの状態で槍の一撃を避ければ、それだけで違う敵兵に槍が突き刺さってしまう危険性は十分考えられるだろう。


 ……なんで私が、敵の心配をしないと行けないのだろうか?


 次に二番目の理由。

 こっちは至ってシンプルな理由だ。


 この程度の攻撃なら、避ける必要もない。


 ……そう。

 私からすれば、鋼鉄の刃が雨の様に降り注がれていても、そんな物……傘すら要らない些末な攻撃に過ぎなかった。

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