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夢と、現実の狭間【12】

 何にせよ、今は世界大戦が行われていた頃の世界情勢を語る所ではない。

 私、個人の話だ。


「その……一つ、聞きたいのですが? 一騎当千の強者とやらは、私と言う事になりますよね?」


「もちろんそうだ。中央大陸最強の冒険者にして、チート級の実力を保持する史上最大の怪物、リダ・ドーンテン会長! この名を西大陸に轟かせ、恐怖の象徴にする事が目的と言って良い」


 …………。


 いや、それって難点が結構あるんじゃ?


 基本的に、私はこの時代の人間ではないので、今回の戦いには参戦するかも知れないが……以後の戦いに参戦する事などない。


 言うなれば、これは大きなハッタリだ。

 

 中央大陸には、千人の兵士を圧倒するだけの実力者が居ると言う『噂になる』だけで終わってしまう。

 実際にはその限りではないと言う事がバレたら、西大陸の覇気が上がってしまうんじゃないのだろうか?


 そして何より……噂の渦中に(まつ)り上げられてしまう当人……つまり、私自身がとてつもなく不本意だと言う事だ!


「あの……私は、こう見えて可憐な乙女でありまして……そんな、軍隊を相手に千切って投げ、千切っては投げをリアルに行う悪魔の様な存在にされるのは、甚だ不本意なのですが?」


「どうしてだい? 凄い事ではないか? ここで奮闘すれば、さぞや西大陸の面々が驚く事になるだろうよ? 中央には千人の兵を前にしても決して怯まない……否、それ所か血も涙もなく全て倒して行く恐怖の悪魔がいる! そう噂されて行くんだ。誇らしい事だとは思わないかい?」


 思うかぁぁぁぁぁぁぁっっっ!


 本気で言ってるのか? この山猫はっ!?


 だから、さっきから言ってるだろう?

 私は可愛い女の子なんだぞ!

 それなのに、どうして血生臭い世界で生き生きと相手をぶっ飛ばす感じの、バイオレンスな存在になっているんだっ!?


 おかしいだろ! 根本的な部分がっ!

 私は、もっと男がこうぅ……きゅん! っと、ときめいてしまう様なキャラを演じたいんだ!


 ……って、違った! 演じるもなにも、それが私の素だ!

 

 …………。


 ……うむ。


 流石に素でそれが出来るかと言われると、少し無理がある様な気がしたけど、そうじゃない。

 

 少なからず、私は平和主義者だ。

 そこだけは間違いないのだ。

 触る者みな傷付ける様な存在ではないのだ。


 だけど、このままだと私は自分が生まれても居ない時代に変な伝説を作ってしまう!

 私にとって、かなり不本意極まる伝説をだ!


 それだけに、私としては気乗りしない。

 いや、気乗りしない所か、完全にやりたくないレベルだ!


 ……が、しかし。


「じゃあ、この中のメンバーでリダさんの代わりを務められる様な人が居るのかい? 言って置くが、これは里の命運を懸けた大一番なんだ……生半可な気持ちでいて貰ったら困るんだよ? それと、リダさん。アンタだって、自分のいた世界に戻りたいのだろう? その話だって無くなる。それで良いのかい?」


「…………」


 真顔で答えた族長の言葉に、私は思わず沈黙してしまった。


 ……く、くそぉ……。


 確かに不本意極まる話だが、背に腹は変えられない!

 

 つまるに……元から私には選択権などなかったのだ。


「そろそろ、約束の十分が経過するな?」


 私は約束なんかしてないんだけどなっ!?


 ニィ……と笑みで言う族長に、私は苦い顔を作りつつ、


「そうですね……」


 力無く頷いた。


 くそぉ……マジでやりたくないんですけどっ!?


 私はみんなに優しくて笑顔が眩しい、物静かな女の子って言うポジションを狙っていたと言うのにっっ!?


 本当……毎回、どうしてこんな事になってしまうのだろうか?


「流石はリダ様です! リダ様程の実力者であるのなら、あの様な雑兵ごとき千人いようと一万人いようと、まるで虫けらを扱う様に倒されて行くでしょう! 鬼神リダ万歳! 鬼のリダ・ドーンテン閣下、万歳!」


 ドォォォォォォォンッッ!


 肩を大きく落として落胆していた私がいた所で、いつの間にか復活していたユニクスが私のリアルタイム逆鱗に触れて爆発していた。


 どうしてお前は、毎回毎回、ロクな事を言わないんだ?

 つか、沈んでいる精神に、漬け物石を乗せる様な真似を、どうしてして来るんだっ!?

 

「それでは、行って来ます」


 爆破された事で再び目を渦巻きにして倒れたユニクスを確認した所で、私はテントの外へと向かう。


 テントの中に兵士が侵入しない様に見張りをしていたローグルさんの横を通り、テントの外に出て来た。


「リダさん……あんた、正気か? 幾らなんでも、滅茶苦茶過ぎないか?」


 テントの外に出た私を見て、ローグルさんが心配そうな顔をして口を動かして来た。


 ……うむ。

 どうやら、正常な観点を持つ常識人がここにいたみたいだな。

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