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夢と、現実の狭間【10】

 しかし、これは今の今まで周囲に被害が及ぶと言う理屈から、ユニクスへと爆破制裁をする事が出来なかったシチュエーションを幾度か経験し……実に歯痒い想いをして来た私が、周囲への配慮を考慮した上で、ユニクスを心置き無く爆破してやろうと言う目的から考案した新しい爆破方法でもある。


 まず、爆破魔法を発動する少し前に、ユニクスの周囲へと防御系の魔法を発動させる。


 防御系の魔法は、直方体の様な形をしている。

 ……まぁ、人間一人がすっぽり入る、細長い段ボールの様な物を思い浮かべてくれれば、大体そんな感じだ。


 直方体のバリアが形成される事で周囲に爆風が行かない環境を作り出し、その直方体の中だけ爆破した結果、今の様な現象が発生するのだ。


 爆破魔法によってユニクスは爆破されてしまうが、その周囲にいるあらゆる概念には一切の損傷を与えない……まさに画期的な爆破魔法だ。


 正直、ここまでするのなら別の魔法を発動させるとか……そこまで爆破魔法に拘らなくても良いのでは? とか、色々と素朴な疑問が浮上するかも知れない。


 しかし、爆破魔法は私にとって一種のアイデンティティーであり、個性の一つなのだ。


 なんと言っても、私の名前はリダ『ドーン』テンだからな!

 ドーンの部分はなくてしは行けないのだよ!


 そしてなにより、爆破魔法を使おうとする度に、周囲の気遣いをしろと言う言い訳紛いな台詞を毎回言っては、どうにか難を逃れようと考えるユニクスの鼻を空かしてやりたいではないか。


 ここで違う魔法を使ってしまったのなら、何となく負けてしまった様な気がして仕方がなかったのだ。


 ……結果、私はユニクスをどんな状態であっても爆破制裁可能な状況と言う方法を自力で編み出したと言う訳だ。


 これでユニクスはもちろんの事、人形をこよなく愛する変人学園長にもしっかりと爆破制裁を加える事が出来る様になった。


 ふふ……今後は、周囲の環境などお構い無しだと言う事を念頭に置いて発言をする事だなっ!


 ……閑話休題。


 そろそろ本題に戻そうか。


「私の爆破魔法なんてどうでも良いんだ。やり方が知りたいんであれば、後でゆっくり教えるから……それより、今は……」


 そこまで答えた私は、苦い顔になって族長へと顔を向けた。


 そんな族長は、未だに大見得を切る形で胸を張り、予想外な展開になってしまったと言うばかりにポカーンっとなっていたローグルさんの真横で大きく声を張り上げていた。


「リダさんと、諸君達の戦いは今から十分後に行う! それまでの間……精々、準備をして置く事だ!」


 十分しかないんですかねぇ……?


 勝手に、色々とカリキュラムを組んで行く族長さん。

 私の意思は何処にあるのでしょうか?


 一通り、言うだけ言った族長は、ゆったりとした足取りでテントの中……つまり、私達の前まで戻って来る。

 そして、快活に微笑みながら私を見て言う。


「……って、事だから。よろしく頼む」


 どう言う事だよっっっ!?


「あの……メチャクチャ過ぎると思うんですけど……?」


 私はげんなりした顔になって族長へとぼやき文句を口にすると、


「あれだけの軍隊を一人で相手にする事が出来るのは、リダさん位しかおらんからな? 仕方ないんだよ」


「……いや、ここには私の他にも仲間が居るじゃないですか?」


「そこは否定しないよ? ただ、無傷で乗り切れるかと言われたら疑わしい。あれだけの数が相手だ……この中のメンバーに怪我人はおろか死者が出る可能性だって十二分に考えられるだろう」


「……で、私だけになる……と?」


「リダさんなら、100%死なないからな」


 ……それは、どんな根拠を元に、そうおっしゃるのか……?

 正直、私の事も少しは考えてほしいんだが……?


 こんな事を内心で考えている中、


「それに、もう一つリダさんだけにした理由があるんだ」


「なんですか?」


 まさか、死ぬのは私だけで済むから……とか、そう言うふざけた理由じゃないだろうな?


「相手も死人が少数で済むからだよ」


「……は?」


「だから、相手も死人が少しで済むからだ。他のメンバーの場合……相手を打ち負かすだけの実力があったとしても、相手を生かしたまま圧倒する……なんて器用な事が出来る程の実力差までは持ち合わせていない……が、リダさんならこれが出来る。千人はいるだろう軍隊を前にしても尚、相手を痛め付けるだけに抑えられる……意図的な手加減をしても尚、相手を圧倒してしまうだけの実力差があるのさ」


 族長はニッ! っと笑みで答えた。


 ……だから、なんでアンタはそう言う事をさらっと言えるんですかね!


 あながち外れでもない分だけ、私の心情もかなり複雑になっていた。

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