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夢と、現実の狭間【8】

 このまま長期戦になってしまえば、スタミナが切れた仲間から順に駆逐されて行く事は必死だ!


 ……どうする?

 まだ、体力がある今の内に、なんとか退路を確保して逃げる手段を考えて置くか?


 ……こんな事を考えていた時、ローグルさんが動いた。


 ローグルさんは、素早く入り口を塞いだのだ。


 厳密に言うと、テントの入り口にやって来たローグルさんは、大見得を切る形で大きな声を張り上げてみせる。


「貴様ら、良く聞け! お前ら西の人間は、我々南西大陸軍の名を語った狼藉者だ! ここでこんな風に南西大陸の国境海域を越えて来た時点で、貴様らに大義はない! やっている事は無法者の侵略行為だ!」


 もはや、一方的に西大陸の軍勢に喧嘩を売っているかの様な言い種ではあったし、テントの外にいた血気盛んな兵士の何人かは、叫んだローグルを見て即座に攻撃をして来たりもする。


 しかし、そこはそれ。


 ローグルさんだって、伊達や酔狂で百年迷宮に挑戦していた冒険者ではない。


 私の見立てでは、ランクS+かSS-程度の実力があるんじゃないないかと予測する。


 それだけの腕前があるのなら、他のダンジョンでは最強クラスの冒険者だ。


 ……まぁ、百年周期の超高難度に生息するモンスターを相手にするには、いささか実力不足ではあったんだが。


 ……そこはさておき。


 テントの出入り口にやって来たローグルさんを真っ先に排除しようと攻撃して来た兵士は、いとも容易たやすく返り討ちに遭う。


 素早くローグルさんを突き殺そうと長槍を振るった兵士だったが、槍は掠りもせずに空を舞い……次の瞬間には兵士の首が宙を舞っていた。


 ぶしゅぅぅぅぅっ!……っと、周囲に鮮血が舞い散る!


 これによって、周囲の兵士達が尻込み状態になってしまう。

 

 今の動きを見て、周囲の兵士達はローグルさんの強さが尋常ではないと悟ったのだ。


 そして、無闇に突っ込んだ所で、自分の首を吹き飛ばされるだけに終わると言う顛末を、自分の脳裏に浮かべる事が容易い状態になっていた。


 されど、周囲には味方しかいない。

 全員で掛かれば、如何にローグルさんが鬼神の様な強さの持ち主であったとしても、数の暴力によって淘汰する事が可能ではないか?……そう思うかも知れない。


 だが、テントを背にしているローグルさんと対峙出来る人数は、頑張っても三人ぐらいだ。


 つまり、数がいたとしても、その圧倒的な有利を完全に活かす事が出来ない。


 むしろ、スペースがない分、先頭に立った兵士は軒並みローグルさんの剣を受ける事になってしまうだろう。


 よって、無作為に突っ込む事は、いたずらに西大陸軍の犠牲を増やすだけだ。


 結果、攻撃する事を止め……睨みを効かせる形で対峙していた西側大陸の兵士達。


 まさに、攻めあぐねている状況が自然と生まれている中、再びローグルさんが周囲の兵士達へと高らかに叫んで見せた。


「貴様らの大将は、既に俺達の手によって拘束された! ここで俺達に危害を与えれば、大将の首を貴様らの前で飛ばしてやる!」


 ……いや、ちょっと?


 勝手に捕虜宣言しないでくれないかな?


 結果的に、こっちが相手へと脅迫しているかの様な体制になってしまった。

 

 ……まぁ、方法としては決して悪くはないんだけど……なんて言うか、こっちが悪役になってしまったかの様な気持ちになってしまう。


 他方、その頃……ローグルの宣言通りの状態がテントの中でも展開されていた。


 つまり、大将でもある落ちゲーみたいな名前の准将殿をロープでグルグル巻きにしていたのだ。


 やたら手慣れているのか? コラムズ准将の近くまでやって来たコニアさんが、手早くロープを使って拘束していた。


「オイ、貴様! 誇り高くも栄光ある西軍の准将たるこの私を、この様な安っぽい縄で縛り上げて……はぁはぁ……しかも、かなりキツめに縛るとは……ぐふふふ……もっと縛れっ!」


 ……途中、なんかおかしな発言をしている変人がいた気がしたけど、そこは聞かなかった事にして置こう。


 ともあれ、テントの中にいた将校達は既に全滅状態にあった。

 西軍って、この程度の実力しかなかったのか?

 それとも……やっぱり、ここにいるのは精鋭と呼べる程の実力はなかったと言う事なんだろうか?


 その答えなど私には分かり様がない物の……圧勝する形で打ち倒された兵士を尻目に、この駐屯地の大将でもあるコラムズ准将を捕まえる形を取っていた。


 ……その時だった。


「ふむ……そろそろ、頃合いか」


 族長がニィ……と笑みを作りながらも、ローグルさんのいるテントの出入り口方面へと足を向けた。


 ……?


 何をする気なんだ?

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