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夢と、現実の狭間【7】

 瞬く間に囲まれ、逃げる間もない状況下になった所で、


「ふはははははっっ! 大人しく里を引き渡して置けば、この様な事にはならなかった物を?……所詮は獣と言う事か? 我々人間の持つ思慮深い心遣いなど、最初から無意味だったと言う事だ!」


 勝ち誇った顔で大きく笑うコラムズ准将がいた。

 早くも勝った気でいるのか。

 それはちょっと気の早い判断だな?


「思慮深い心遣い? ふん、そんな物など最初からなかったろう?……西側から手を出したと言う事になれば、世界情勢的に見て体裁が悪いから、そうしただけの話だろう? 秘密裏の内にこの島を占拠し、外堀を埋めた所で南西大陸に難癖を付けて、強引に宣戦布告まで持って行こうとしていた魂胆が見え見えなのだが? こんな猿にでも分かる単純な行為が、人間様の『思慮深い心遣い』だと言うのか? もしそうであるのならば、獣人は大天才にすら成りうるぞ? はははっっ!」


 直後、またも煽り文句を口から高らかに放つ族長。

  

 もう良いから!

 口じゃなくて、手を動かす準備をしてくれないかな?

  

 もう、兵士さん達が私達を殺す気まんまんな状態でこっちを睨んでるんですよっっ!?


 尋常ではない殺気……いや、殺意を持った兵士達が私達を取り囲んだ状態のまま攻撃体制だけをみせている。


 恐らく、コラムズ准将だかマジドロ准将だがの号令が掛からない限りは攻撃を展開しないつもりなのだろう。


 あるいは、私達の誰かが攻撃を展開して来たら、迎撃するつもりでいるのかも知れないが。


 どちらにせよ、一触即発状態であった事に変わりはなかった。


 ……果たして。


「殺れ! 殺ってしまえ! こいつらを消した後は里の獣も処分しろ! 全てが終わった後に、本部の連中には上手く言いくるめて置く!」


 コラムズ准将だか……う~ん、ネタが無くなって来たな……他に落ちゲーあったかなぁ……まぁ良いや、ともかくパズルっぽい事が出来そうな名前の准将は顔を真っ赤にした状態で周囲の兵士達へと号令を掛けた。


 その瞬間、私達の戦いの火蓋が切って落とされる。


「では、リダさん、頼みましたよ!」


 直後、あれだけ散々煽り文句をのたまっていた族長が、ササッッ! っと、私の後ろに隠れていた。


 …………。


 ……いや、良いんだけどさ?


 どうせ、後ろにも兵士はいるし……。

 

 だけど、私達に思いきり問題だけをぶん投げて来た様な気がして仕方ないんだが……?


 何とも微妙な気持ちになってしまう私がいたが、事態は悠長に族長へとツッコミを入れていられる程、ゆっくりと構えては居られなかった。


 眼前にいた兵士が素早く私を切り捨て様と剣を振り抜く。

 

 へぇ……流石は上官クラスの兵士だけあって、中々の業物をお持ちだ。


 ……が、腕は二流以下だな。


 振り抜かれた剣筋を見極め……私はスゥ……っとかわし、


 ゴッッッ!


 カウンターで、兵士の鼻っ面辺りに鉄拳を浴びせた。


 瞬間、兵士は物凄い勢いでテントの端まで飛んで行き……そのまま突き破って行く。


 ……うむ。


 これは……あれだ。

 補助スキルはおろか、補助魔法すら要らないレベルだな。


 ハッキリと物を言うのなら、わざわざ避けるまでもない。

 戦闘が始まったと言う意思を持つと自動的に展開される透明な壁で、簡単に受け止める事が出来る程度の威力だ。


 仮に、この程度の連中しか居ないのであれば……百人居ようが千人居ようが、私にとって変わりない。


 厳密に言うと、結果は変わらないな?


 それでいて、私としても安心する。


 この程度のレベルであるのなら、ローグルさんやコニアさん達だって十二分に対応する事が出来る!……と。


 案の定、一斉に攻撃を仕掛けて来た兵士達を返り討ちにする形で戦況は進展している。


 攻略しようとしていたダンジョンのモンスターから比較すれば、今いる兵士達の実力など塵芥にも匹敵するだろう。


 ……うむ、もう安心だな!


 コラムズ准将の号令によって一斉に私達を襲った兵士達は、物の一分も必要とせずに沈黙してしまう。


 ここまでは、私も予測通りの結果になったのだが……しかし、まだまだ油断は出来ない。


 今いる、このテントの外側には、コラムズ准将の部下とも言える兵士達が軽く千人単位で居るのだ。


 そして、この指令部があるテントで激しい戦闘が始まったと言う事を、既に外の連中も気付いた事だろう。


 もちろん、このまま静かにしている筈もなく……次々とテントの中に西大陸の兵士達がやって来るに違いない。


 そうなったら大変だ。

 如何に個々の能力で圧倒していたとしても、数が段違いに違い過ぎる。

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