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夢と、現実の狭間【6】

 そして、ミドリさんも実は私と同じ感じで、口にこそ出さなかったけど……心の何処かに強い者と戦う自分を思い浮かべていたのかも知れない。


 全く以て野蛮な思考と言える……言えるけど、私はミドリさんの気持ちが良く分かるぞ!

 ……折角、こんな時代にやって来たんだ。

 心置きなく暴れてやりたいじゃないか!


 ……と、話が反れてしまったな。


 私が胸中で色々と考えている中、族長がこの軍の最高司令官に当たるのだろう、やたら勲章を付けた男の所へと向かった。


 最高司令官と言う位だから、それなりの年輪を重ねているのかと思いきや、実は結構若かった。

 見た感じはまだ三十才を越えていない様に見えるな。


 座っているので、正確な身長が分かる訳ではないが、比較的小柄な体躯だった。

 恐らく160センチと言った所だろうか?

 全体的に見て、少し偉ぶった態度をしているが、実際に口を開いてみると……もっと偉そうだった。


「ヤマネ子……だったか? こないだも同じ事を通告しておるからもう分かっているだろうが……ここは、間もなく戦場になる。大人しく我が軍の命令に従って里を破棄するにせよ、もう時間はないぞ? もちろんここに来たのは、里を破棄する事を我々へと通達する為の物ではあるのだろうが、もう少し早く決心して欲しかったな?」


 コラムズ准将だかテトリス准将だかは、面倒そうな顔になって族長へと答えた。


 すると、族長は愛想の良い笑みのまま言う。


「そうですな? 私も少しばかり時間を取らせてしまいました。そこに関しては反省しましょうか? コラムズ准将? 答えはいいえ。これでよろしいですか?」


「……なんだと?」


「耳が悪いのですか? 二度も言う必要などないと思うのですが? 答えはノーですよ? あなた方ごとき軍人にちょっと脅された程度で、簡単に里を明け渡す?……ふふふ、ちゃんちゃら可笑おかしいですね?」


「貴様……正気か?」


 言ってから笑う族長の言葉に、コラムズ准将は驚きと怒りを混じらせた様な表情を作ってみせる。

 

 コラムズ准将の考えでは、完璧にあり得ない話だと思っていたのだろう。

 

 仮に、族長に吐いた嘘がバレたとしても尚……里の獣人達が取る事の選択肢は里を捨てて逃げる事しかないと確信していた……そんな顔をしていた。


 だが、真っ向から対立する様な態度を当然の様にして来た族長を見て、コラムズ准将は思わずポカンとなってしまった。


「もちろん正気ですよ、コラムズ准将? 私は……否、私達は西軍の脅威には屈しません。南西大陸軍に扮装してまで里の獣人達を追い出したかった、その下衆な考え方も嫌いです。西大陸にはこんなクズしか居ないのか? と勘ぐってしまいたくなりますねぇ?」


 唖然となるコラムズ准将へと、族長はここぞとばかりに高飛車な態度で口を動かした。


「……ほぅ」

 

 そして、族長の言葉を耳にし、コラムズ准将の顔色も変わる。

 どうやら、一定の納得をしてみせた模様だ。


「一つ、お前に尋ねてやろう。どうして、我らが南西大陸軍ではなく、西軍だと思ったのだ?」


「私からすれば、むしろ本気で騙す気だったのか? と、言いたくなりますが?……それでも言うのなら、難点か申し上げましょう? まず一つ。南西軍の軍服ではない。この時点で、南西大陸の軍ではないとハッキリしておりますよね? 二つに言葉が不躾ぶしつけ。本土から近いガサキ国の国王は、私達に一定の貸しがあります。この関係もあって、南西大陸軍……特に私達の島から一番近いガサキ国軍の兵士達は、基本的に礼儀正しい態度を取ります。明らかに横柄な態度を取っている時点で、私からするのなら敵勢力にしか見えませんでした……最後の三つ目」


 そこまで言うと、族長は満面の笑みを作ってから、声高に叫んでみせた。


「私が生理的にアンタを受け付けないからだ!」


 そう言う理由なのかよっっ!?


 最後のはダメだろ!……とかって、思わず叫びたくなってしまった私がいる中、


「なら、この話は白紙と言う事で良いな?……もっとも、今更幾ら詫びを入れた所で、もう遅いが」


 コラムズ准将だかぷよぷよ准将だかは、怒りで顔を大きく引き釣らせながらも族長に答えて行った。


「詫び? どうして私がアンタごとき木っ端将兵に頭を下げなければならないんだ? 口だけ達者で、上手く周囲を蹴落として来ただけの下衆野郎に?……ふん、そんな頭は私にはないね!」


「良かろう! なら、死ね!」


 完全に喧嘩を売っていたろう族長の叫び声が周囲に轟くと同時、コラムズ准将の号令が掛かった。


 そこからグルッと! 私達を素早く囲んでみせる。


 こう言った所は流石軍隊と言った所か?


 中々に統率された動きを私達に披露していた。

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