夢と、現実の狭間【4】
しかし、族長には何か考えがあって述べているのだろう。
この族長は、全て見透かしているかの様な、特殊な能力があるんじゃないか……って位に、色々と先を見据える事が出来る。
そこらを考えるのであれば、ここは族長の言葉に従った方が良いだろう。
……でも、乱闘になる位なら、ここで爆破しておしまいの方が楽なんだけどな。
こんな事を考えながらも、私は先を進む族長について行く形で仮設駐屯地へと向かって行く。
仮設駐屯地を見ると、里の人間が言う本土の軍……つまり、南西大陸軍が使っている旗とエンブレムがあちこちで見受けられた。
……うむ。
これだけを見ると、ここの兵士は南西大陸からやって来た兵士にしか見えないな。
ふと、こんな事を考えていた時だ。
「……なるほど、確かにコイツらは西側の連中だな」
苦い顔になって言うローグルさんの姿が。
どうやら、ローグルさんの感覚からすると、一発で分かるレベルの様だ。
……どうしてなんだろう?
「コイツら、旗やエンブレムだけはどうにか用意出来たみたいだが……それ以外は全部、西大陸軍の物を使っている。兵士の制服を見ろ? あれはどう見ても西側の服だ」
……ああ、そう言う事か。
しかし、良く西軍の兵士の服装を知ってたな?
ここは百年前だと言うのに。
「ローグルは、こう見えて兵士マニアだからね? 大陸だけじゃなくて、その国の武器や服装まで全部細かく知ってるのよ」
……そ、そうだったのか。
程なくして、苦笑混じりになったコニアさんが、周囲の面々へと説明する感じで言って来た。
思わぬ所で、想定外な特殊能力があったな!
「すごぉ~い、ローグルさん! 日常生活にはなんの足しにもならない事かも知れないけど、今のローグルさんはとんでもなく輝いているよ!」
そこから、ミドリさんが満面の笑みを作ってから、軽くグッジョブして来る。
きっと、本人は心から誉め称えての言葉なのかも知れないが……私には、少しローグルさんを小馬鹿にしている様にしか見えなかった。
だからだろう。
ミドリさんに言われたローグルさんは、少しだけ苦笑混じりになってしまう。
「……はは、あんまり威張れた趣味ではないと言う所だけは自覚しているつもりだよ」
「そんな事ないないっ! 威張って良いよ~! 凄く威張ろう! 今がまさにその時だよ!」
そこまでやられると、私も対応に困るからやめて欲しいのだが……?
無駄にハイテンションで元気極まるミドリさんの言葉に、私は内心でのみぼやきにも近いツッコミを入れた。
……そんな中、私達は仮設駐屯地の入り口に到達する。
入り口には見張りの兵士が四人ばかり存在していた。
それぞれ、自分の武器を手にし、常に周囲に危険がないかを緊張した面持ちで監視していた……そんな感じだった。
恐らく異国の地でもあるイイキ島に居る為、普段以上に緊張感を持って入り口に待機しているのだろう。
気持ちは分からなくもないな?
やっぱり、来た事も見た事もない所に来れば、いやでも緊張してしまう物だ。
だからと言うのも変な話ではあるのだが、かなり遠くの方にいた時点で、連中は私達がこちらの方にやって来ている事を知っていた模様だ。
……そうか。
すると、爆破するつもりがあったとは言え、爆破魔法のポーズを取ってしまったのは迂闊だったか……?
いや、コイツらは軍人であって魔導師ではない!
あの格好だけで、自分達の基地を爆破してやろうと考えていた!……と、ピタリ賞な予測を出す事が出来るとは思えない。
……てか、そうであって欲しい!
「地元の里に住む獣人だな? コラムズ准将からの許可は降りている……入って良いぞ」
四人いた見張りの兵士の内、やたら太ったデブ……もとい、恰幅の良い兵士が、やたら偉そうに族長へと声を向けて来た。
……おや?
ここでふと思った。
見張りなのだろう太った兵士の言葉は……かなり流暢な大陸共通語だったのだ。
もちろん西大陸の言葉ではない。
……?
なんで、コイツは普通に中央大陸の言葉を話す事が出来るんだ?
何とも言えない違和感が、私の胸元にモヤモヤと沸き上がる中……私達は駐屯地の中へと進んだ。
見る限り……本当に仮設の駐屯地としか、他に形容する事が出来ない様な場所だった。
旧式と言うか……私の知ってるテントとは若干の事なりがある物の、あちこちに兵士達が待機しているのだろうテントが張ってある。
……うぅむ。
かなり規律の取れた部隊の様だな。
張られたテントを見る限り、しっかりと区画整理した状態で均等に張られている。
この一点を見ても、かなり訓練された兵士達が、この仮設駐屯地に居ると言う事が分かった。




