表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
772/1397

アリン、居なくなる【21】

「一つだけ知りたいんだが……ローグルさんはどうして、族長の言葉を信用したんだ?」


 眉を捻りながらも、私はローグルさんへと尋ねてみた。

 根本的に色々と謎めいた物が不自然に多々存在している状態ではあるが、現状で一番知りたい疑問はこれだ。


 私の期待と予測も加味されてはいるが、ローグルさんは中々の切れ者だと思えた。

 それだけに、根拠もない所から強引に信用を引っ張り出して来る様な真似をして来るとは思えないし、何らかの裏付けがあったからこそ、私達にも協力して欲しいと頼みに来ているのではないのだろうか?


「……魔法を使ったんだよ。リダさんが求めていた魔法を……さ」


 ……っっ!?


 な……なんだと……っ!?


 唖然となる。


 だって、おかしいじゃないか?

 里一番の大魔導師様がサンバイザーさんで、他に魔法を使える獣人はこの里には居なかったんじゃなかったのかっ!?


 比較対象が居ないからこそ『里一番の大魔導師』なんて事を名乗れた訳で?


 もし、族長が魔法を使えて……かつ、空間転移魔法を発動する事が出来たのであれば、族長こそが里一番の大魔導師なんじゃないのかっ!?


「そ、それは……本当なのか?」


「ああ、間違いないね……実際に、俺は空間転移魔法を発動させている所を見た」


 どうにも信じられない気持ちで一杯になっていたが故に、ついつい二度尋ねてしまった私の問い掛けに、ローグルさんは再び頷いてから後ろにいたコニアさんとミドリさんの方へと目を向ける。


 すると、二人も超が付く程の真剣さで首を縦に振って来た。


 ……そんな二人の顔を見る限り、嘘を言ってる様子には到底見えない。


 そうなると……この話は本当なのだろう。


「どうして、空間転移魔法を使う事が出来ると言うのに、私達へと本当の事を言わなかったんだろうな……」

 

「さぁ……そこまでは俺も知らない。だが、リダさんの予測が確かであるのなら、俺達は時空を越えている……なら、もう一度元の場所まで時空を越えて行けば戻れる……光明が見えて来たとは思えないか?」


「……そうだな」


 明るい口調で答えたローグルさんに、私はちょっとだけ間を置く感じの頷きを返した。


 空間転移を行う場合、発動する者が一度行った場所か、一定の座標を見てワープ先を決める。

 つまり……単純に純粋に時空を越えて元に戻る術を手にしたとしても、まだ帰る事が完全に出来るとは限らない。


 ……ただ、かなり前進した事だけは間違いなかった。

 族長へ、上手に説明する事が出来、なおかつ族長がしっかりと理解する事が出来たのなら、私達が本来の居場所へと空間転移して帰る事が出来るかも知れない。


 ただ、その可能性は決して高くはないだろう。


 ……反面、ゼロでは無くなった。


 ……うむ。


 可能性が1%でもあるのなら、それをやってみる価値は十分あるな。


 今までとは違い、空振りに終わると言う事が無くなり、更に明確な目的まで生まれた。

 ここまでお膳立てが出来上がっているのなら、もうやる事は一つしかないだろう。


「……よし、私達は里を救う手助けをしよう! その見返りに、私達は空間転移魔法を里の族長に発動させて貰う。これで、お互いにウインウインな関係になるな?」


 答え、私はユニクスへと視線を向ける。

 ユニクスは少しだけ気まずい顔を取りつつ、おずおずと答えた。


「そうですね……里を救う事が私達の居場所へと戻る近道に繋がるのであれば、この話に乗らない手はありません」


 そこまで答えたユニクスはちょっとだけ苦笑混じりになってから再び口を開く。


「私はリダ様の事を最重要視して物を述べているだけなのですからね? 決して里の獣人達を最初から見捨てると言う冷徹な思考を持っていたり、自分に何の得もなかったから反対していた訳でもありません。状況から考えて、人助けなどしている場合ではないと判断しての事なのです。そこは御理解して頂きたいと切に願います」


 そして、かなり言い訳混じりな台詞を口早に言って来た。

 わざわざ言わなくでも分かっているから安心しとけ。


 普段は、変態勇者でしかないユニクスが、お得意のレズキャラを完全に封印し、かなり真剣になって私へと助言していた。

 自分は里の人間に恨まれようとも、私を優先しようと言う情念の様な物も感じられた。


 ……本当。

 普段から、この位の気持ちで私に接してくれたのなら、私だってポンポン爆破魔法を使わなくて済むと言うのに……。


「ああ、もちろん分かってる。今のお前は私の事だけを最重要視しての発言だったと思うし、信頼もしてる……今後も期待しようじゃないか」


「……っ!?」


 ゆったりと笑みを作って答えた私に言葉に、ユニクスは思いきり息を飲んだ顔になっていた。

 そこまで驚く様な事を言った覚えはないんだが……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ