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アリン、居なくなる【18】

 うーむぅ……。

 これは、少しばかり雲行きが怪しくなって来たぞ。


「その、少しだけでも良いんで、お手伝い出来る事なんてありませんか?」


「……ない」


 一応、もう一回だけ尋ねて見るが、バンダナさんのべもない台詞が返って来るのみで終わった。


 近くにいるボーシさんは元より、私に助けを求めていたサンバイザーさんも又、口をつぐむ。


 どうやら、ボーシさんの言葉を素直に聞いた形を取った感じだ。


 こう言う所は、素直に従うんだな?

 感じからして、我が物顔で言葉を口にするタイプの変な魔法使いって感じに見えたんだけど……そう言う訳ではないんだなぁ……。


 ……と、そこはともかく。


「分かりました。少しは助けになるとは思ったんですがね……」


 現状で、この三人から事情を聞き出す事が難しい。

 そう思った私は、すんなりと引く感じの台詞を口にした。


 まぁ、最初の目的は、ワープトラップによってここにやって来た自分達が、元の世界と時代に戻るヒントの様な物がないかどうかを知る為にやって来ただけだったからな。


 ……まぁ、ここに関しても、なんの成果も上げられなかったんだが。


 …………。


 私、地味に空回りしてる様な……?


 い、いや!

 まだ、諦めるのは早い!

 このワープトラップに関しても、何処かに突破口がある筈だ!

 こっちについても、しっかりと元に戻れる方法を考える事にしよう。


 ともかく……今は、ここにいても仕方ないな。


 思った私は、適当に挨拶をする感じでサンバイザーさんの自宅を去って行くのだった。




      ○◎□◎○




「……リダ様。あなたの御優しい性質は私なりに重々理解してはおりますが、今はご自分の事を優先的に考えた方がよろしいのでは?」


 ……とは、ユニクスの台詞だ。


 結果的に客人扱いで族長の屋敷に泊まる事になった私達は、屋敷の中にある客間なんだろう部屋の一つにやって来ていた。


 屋敷と述べても、他の家より少しばかり大きいと言う程度の規模しかなく、この客間もそこまで洒落た物がある訳でもない。 


 里全体がそうなのだが、何処か質素かつ古典的で、昔ながらの素朴な佇まいがまんま現実の世界として存在している……そんな感じの場所だった。


 ……まぁ、本当に時空を越えて来てしまったのなら、ここは私の知る時代から約百年も前の世界と言う事になるのだから、古めかしい光景があっても何らおかしな事ではないのかも知れないが。


 そこを差し引いても質素かつ素朴だと言う事を考慮すると……ご丁寧にも裕福な里と言う訳ではないのかも知れない。


 普通に考えたのなら、島の外れにあるのどかな田舎の里なんだろうから、そこまで裕福であろう筈もない。

 里に住んでいる獣人も、大体が自給自足の生活をしているみたいだし……そもそも、お金と言う概念があるのかどうかさえ怪しいレベルだった。


 よって、かなり素朴かつ質素な客間ではあったのだが……それでも、かなり頑張って用意してくれたんだろうなぁ……と言う気持ちが伝わる場所だった。


 そんな……口こそぶっきらぼうだけど、何処か人情がある里の族長によって準備して貰った屋敷の客間に戻ってすぐに、ユニクスの口が動いた。

 それが、冒頭の台詞でもある。


「まぁ、ユニクスの言いたい事は分かるよ。しかし、一宿一飯の恩程度は返さないと行けないなぁ……とね?」


「一宿一飯の恩程度であるのなら、他にも色々とあるのではないでしょうか? 例えば、部屋の掃除を手伝うとか……ともかく、私達はヒーローではないのです。里の中にある問題に首を突っ込むなどと言う様な、内政干渉にも繋がる様な真似は出過ぎた行為だと思うので、そう言った面は自粛なされた方が、リダ様の為だと思うのです」


「……はは、否定はしないけど……内政干渉とは、大きく出たな」

 

「実際にそうなると思うんですよ? それに、バンダナさんでしたっけ? あの方は、私達の事を余り良く思ってない様にしか見えないんですよ?」


「ああ、やっぱりユニクスにもそう見えるか」


 眉を捻って言うユニクスに、私も即座に相づちを打ってみせた。


 そして、それは同時に私としての気掛かりでもある。


「この関係……って、もう少し友好的な関係へと改善する事が出来ると思うんだけど……どう思う?」


「……はぁ」


 私の言葉を耳にして、ユニクスは吐息混じりだ。

 顔では『リダ様の悪い癖が、また始まったよ……』と言わんばかりだ。


「言いたい事は分かります。リダ様らしい発言だとも思います……しかし、今はそんな事をしている場合ではないと思うのです。一刻も早く今のワープ状態から元の場所へと復帰し、アリンと合流する事。そこを念頭に考えるべきだと、私は思うんですよ?」


 ユニクスは、神妙な表情になって私へと口を動かした。


 ごもっともとしか、他に言えない台詞をありがとう!

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