アリン、居なくなる【14】
「所で、その……変わり者の魔導師さんは、どちらにいらっしゃいますか? もしかしたら、助けて貰いたい事があるかも知れないのですよ?」
「うん? サンバイザーに会いたいって? アンタも物好きだねぇ?」
名前はサンバイザーですか。
魔導師・サンバイザーとか、どんな魔法を扱うんですかねぇ?
やっぱり、光を遮断する魔法を得意とするんでしょうか?
……つか、どうしてこんなツッコミを入れたくなる様な内容なんだよ!
私は胸中でのみ、思わず魂の叫びを上げてしまった。
「サンバイザーの自宅なら、この屋敷からすぐソコさ? 案内役に、ここの使用人のバンダナと、相棒のボーシを付けて置くから、後はこの二人に聞いて頂戴」
使用人はバンダナとボーシですか。
バンダナとボーシの案内を受けてサンバイザーの家に行くのですか?
あんたらの名前は、みんな頭に被る物なのですか?
「ああ、そうそう。族長にも後でもう一度、ちゃんとお礼を言って置きなさいよ? わざわざ屋敷に人数分のベットを用意してくれたんだから」
……へ? そうなのか?
てか、私達の前に現れた獣人って、この里の族長だったんだな。
会話の中で、それっぽい台詞は何回かあったけど、普通に聞き流していたぞ。
つか、本当にいい人だな、あの獣人さん。
「ベットは、力持ちのニットボーが運んでると思うから、そっちにもお礼が言えたら言って置いた方が無難だね?」
力持ちのニットボーさんですか?
それは、ちょっとだけオシャレな力持ちの方ですか?
つか、なんでアンタらの名前は、全部被り物なんだよっ!?
「分かりました、リダ様。この里の名前はキャップと言うのでしょう。その結果、この様な名前の方が多いのでは?」
直後、ユニクスがポンッ! と手を打ってから、いかにも『閃いた!』と、言うばかりの顔付きで答えて来る。
…………。
いや、幾らなんでも、そんな訳が……。
「おや? 良く分かったね? そうさ? ここはキャップの里と言う名前だね?」
……あるのかいぃぃぃぃっっ!?
何なのっ!? いや、マジで何なのっ!? この里は、存在自体がコミカルに出来てるのっ!?
何となく真面目に考えるのが馬鹿馬鹿しくなって来た私がいた。
そんな中、ミサさんは穏和にコロコロ笑って言った。
「まぁ、特に何もない所だけど、良い所さね? ゆっくりして行くと良いよ?」
……そ、そうですね。
きっと、ミサさんからすれば、生まれた時からそう言う名前だし、周囲の面々だってやっぱりそうなのだから、私の様に『これはどんな喜劇だ?』と思う事もないのだろう。
だけど、私的に言うのなら、ふざけ倒してるネーミングだと思うんだが……?
いや、この際……名前なんかどうでも良い!
ともかく、一度その魔導師に会ってみるか。
こうして、私は自称・里一番の大魔導師の住む自宅へと向かって行く事になるのだった。
○◎□◎○
暫く後、私とユニクスの二人は、里一番の大魔導師だかの元へと向かう。
ミドリを始めとした三人は、取り敢えず里の周辺を軽く散策したいとの事で、今回は別行動と言う事になった。
まぁ、ローグルさんなりの考えがあったのだろうし……何より、今は情報が色々と足りな過ぎている。
この里の情報が、どれだけ今の自分達に有用な物があるのかは定かではないが、ともすれば何か得られる情報があるかも知れない。
私達にとって有用かつ有益な情報ではなかったにせよ、何らかのヒントに繋がる情報程度なら、手に入れる事が出来るかも知れないし……ここらに関してはローグルさんに任せようかと思う。
ともかく、私は私なりのやり方で、このおかしな状況を打破してやろう。
「……でも、魔導師が自称だと、やっぱり不安が強くなるな……」
ポツリと、私は言う。
人間以外の種族が魔法を使えるからと言って、その存在が必ずしも空間転移魔法を使う事が出来るとは限らない。
人間の世界では禁忌の魔法なので、空間転移魔法がどの程度の難易度を持つのかは不明だ。
……でも、一瞬で時空を越えてしまう様な魔法だし……決して簡単な魔法とは思えない。
そう考えると、自称・里一番の大魔導師様に使える魔法なのかどうか?
悩めば悩むだけ、それは無理なんじゃないかなぁ……と言う結論に到達してしまう。
……い、いや! まだ、慌てる時間じゃない!
完全にそうと決まった訳ではないじゃないか!
そうだ……そうだぞ、私!
聞けば、里でも随一の変わり者らしいじゃないか!
そう言う変わり者の大抵は、おかしな魔法を好んで使えたりする物だ!
こう考えれば、まだ光明が見えて来る可能性だって否めない…………気がする!




