リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【11】
......えぇーと。
こうして、私にとって生徒にも先生にもバレないだろう、昔からの馴染みがあった地下の酒場は爆破された。
それでも、私が咄嗟に防御壁を周囲に張り巡らしたお陰で、被害は最小限に止めたんだがな?
私なりに最大限の努力はしたんだ。
だが、地下にある小さな酒場で、よりによって超魔法をぶっ放したルミ姫様!
つか、なんでいきなり超炎熱爆破魔法なんて使える様になってるんだよっっ!
シラフの時は全然......魔導式を組み立てる事すら出来なかったって言うのにっ!
後日談ではあるのだが、イリは以前にも勢いでルミに酒を飲ませてしまった時があって......その時は、上位炎熱魔法をぶっ放して、酒場を半壊させたらしい。
......。
ここに新しい教訓が生まれた。
ルミにお酒は飲ませるなっ!
その後、昔からの顔馴染みと言う事で、全額弁償すると言う条件付きで出禁だけは免れた。
余談だが、約500万マール程度の代金を請求された。
あ、後で絶対に金を返して貰うからな、ルミィィィィィッ(泣)
数時間後。
色々あって、もう軽く日付変更線を跨いでたろう時間に、ようやく私達は地下酒場から解放される様に出て来た。
もう最悪だったよっ!
マスターに何回も何回も頭を下げて、周囲に散乱した色々な物を片付けて、瓦礫状態の残骸を纏めて!
なんでこんな事を私達がしないと行けないんだって感じの事を散々やった所でお開きになった。
一番ムカつくのは、それをやった当事者がソッコーで寝落ちして、何もやらなかった事だっ!
「くそ......後で、なにか仕返ししてやる......」
私は薄く、底意地の悪い笑みを浮かべていた。
「ある意味でお前らしいけど、悪趣味な悪役の笑みっぽく見えるからやめて置いた方が良いぞ?」
ある意味で私らしいって、どう言う意味かなっ!
イリが眉間に皺を寄せ、明らかに私からのツッコミを期待してるんじゃないかって台詞を言っていた時だ。
「遅かったな」
聞いた事のない声が、地上から聞こえて来た。
地下酒場の階段を上っていた途中......私達の前に現れたんだ。
地下酒場の入り口で仁王立ちしていた男は......うーん。
「どうでも良いけど、アンタ誰? 今日は色々あり過ぎて、もう面倒な話しとか聞きたくないんですけど?」
顔でも疲れたって感じになっていた私。
「そっちに用事がなくても、こっちにはあるんだよ」
男は、依然として仁王立ちのまま、私達へと淡々と答えて行く。
「......ああ、お前か」
そこで、イリが何かに気付いた。
「何だ?、知り合いか?」
「あ......」
他方で、キイロも男の正体に気付いたらしく、ハッと息を飲んで見せた。
???
一体、何だって言うんだよ?
「......多分、用事があるのはリダだけだろうよ」
「私だけ?」
「そうでしょうね......けど、当然そう言う訳には行かない」
イリとキイロは互いに顔を引き締めていた。
「じゃあ、どうするつもり?」
そこから、更に別の角度から声が転がって来る。
この声......なんとなくだけど、ちょっとだけ聞いた覚えが......あっ!
少しして、声の主が私達の前に現れる。
コイツは......ゴルゴンの血筋を持つとか言う暗殺者の女かっ!
私の中にも瞬時に緊張が走る。
「どう言う風の吹き回しだい? 一ヶ月も姿をくらましていたと思えば......今度は即日で何回も襲いに来るなんてさ?」
夕方、書店から出て来た所を石化させようとして......今度は正面から二人掛かりで乗り込んで来たって寸法かい?
随分とやる気の度合いが違うねぇ......?
「こっちにもこっちの事情があるのさ」
私の質問に、仁王立ちのままだった男が返答する。
情報では、魔人と呼ばれてるらしいが......それ以外の情報はないらしい。
外見を見る限りだと、普通に人間だが......果たして?
「奇襲をしない暗殺者ってのは、らしくないな......ま、そっちの方が俺は好みだがな」
そこで、イリが冗談めかした言葉を吐き出す。
見る感じ、緩い雰囲気を感じてしまう様な顔付きだが、実際は完全に闘志の様な物が瞳から放たれている。
他人の目にはどう映っているか分からないけど、私からすれば純然たる喧嘩腰だ。
「これは......一波乱ありそうですね」
近くにいたユニクスが珍しく顔を強張らせて呟いた。
大体、どんな状態であっても自分の感情を表に出さないユニクスですら、現状の事態に思わず表情を露にしてしまった模様だ。




