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アリン、居なくなる【5】

 ……と、こんな事をしている場合じゃなかった!


 これまでは、このエリアまで難なく進んで来た冒険者だと思っていたが故に『どうせ簡単に倒してしまうだろう』とか言う軽いノリでいたが、そうじゃないのなら話は別だ!


「行くぞ、ユニクス! 事情は知らないが、冒険者がむざむざとモンスターにやられてしまう所を見過ごす訳には行かない!」


「かしこまりました、リダ様!」


 言うが早いが、私とユニクスの二人は素早く他パーティーで戦っている戦闘に乱入する形で、攻撃を開始した。


 スーパードラゴン呼吸法ブレイズレベル3!


 途中で補助スキルを発動させて。


 余談だが、ユニクスも補助スキルを発動させていた。

 

 ドラゴン呼吸法ブレイズ極!


 まぁ、私やアリンが使っている補助スキルの下位互換ではあったんだが。


 しかし、このスキルの効果も莫大と言える能力上昇が見込める。

 今のスキルを発動させる前の私も、かなりお世話になった補助スキルでもあり……これを見様見真似みようみまねで独自に発動させる事が出来る様になったユニクスの能力には驚かされる。


 ……まぁ、それでも下位性能のスキルだから、超龍の呼吸法と比較すると、レベル1ですら半分にも満たない能力上昇しか見込めないだけどさ。


 ……話が反れてしまったな。

 そろそろ本文に戻ろうか。


 極論からして、


 ドゴォォォォッッ!


 戦闘は物の数秒で終了してしまった。


 跳ねる様に湖からジャンプしていたモンスター目掛けて飛入れた飛び蹴りが綺麗に入り、そのまま吹き飛んで行った。


 そこから数十秒程度して、モンスターは水面にプカァ……と浮かんで来る形で真横になっていた。


 ……うむ。

 レベル3を発動させるまでもない相手だったな。


 なまじ、ここまでやって来た腕利きの冒険者が手こずる相手と言う固定観念があった物だから、レベルも対ボス戦仕様まで高めていたんだが、どうやら雑魚戦仕様でも問題はなかった模様だ。


 所で、これは何だろう?……ナマズだろうか?


 普通、こう言うのは湖じゃなくて池とか沼に生息してそうな気がするんだけどな?


 結局の所、一発で決着がついてしまい、モンスターの姿をしっかりと見るのが倒した後と言う、あべこべな行動をしていた私は、水辺にプカァ……と浮いていた巨大ナマズの様な物を軽く見据えた。


「ありがとうございますっ!」

  

 完全にひっくり返った状態で水面に浮かぶ巨大ナマズを見据えていた頃、戦っていた冒険者と思われる人物の声がやって来た。


 やたらハキハキとした、元気な声だな?

 それに、直ぐお礼を言って来る姿も良いぞ?


 そんな事を考え、


「いや、偶然居合わせただけだから、お礼を言われる事でも……」


 礼儀正しくお礼を言って来た冒険者に向かって声を返した私であったが、間もなくその声は途中で止まってしまう。


 ……何故か?

 お礼を言って来た冒険者が……密かな事にも見知った顔であったからだ。


「あれ? 確か……あなた、イリの娘さんか何かだったか?」

 

「……え? あ、ああああっっ! リダ会長! ど、どうしてここにっ!?」


 ……あ、やっぱり知り合いだったのねぇ。


 驚いた顔になって答えた冒険者の言葉を耳にして、私は少しばかり気まずい顔になってしまった。


 同時に、私は眼前にいた冒険者が何者であるのかを知る。


 この子は……イリとキイロさんの娘とか言う子だ。


 詳しい事情は私も良く知らないのだが……なんでも、未来の女神による手違いが起きて、現在の時代にやって来てしまった、言わば未来人の様な存在。


 通常の歴史なら、イリとキイロさんの二人が結ばれて子供が生まれて……そして、今いる彼女がその子供に当たる筈なのだが、それら全ての経緯をすっ飛ばす形で現在に生きる、なんとも不自然極まる存在。


 いつか、この不自然な時間の流れが、何処かで大きなツケとならなければ良いのだが。


 どちらにせよ、現状では特に時の矛盾……タイムパラドクスの類いで問題が発生する事なく済んでいるらしく、つい最近までイリの仕事をする関係とかでトウキに住んでいたりもする女の子だ。


 思えば、トウキに住んでいたはおろか、同じ学園で勉強をしていたりもするんだよな……まぁ、学年が違ったから、直接顔を見る機会はほぼ無かったんだけど。


 名前はミドリだったか?


「ちょっと、色々と事情があってさ……はは」


 冒険者の少女……ミドリに対し、私は誤魔化し半分の笑いを見せて言う。

 

 私としては、本当の事を言うには少し心の準備が必要だと思えたのだ。

 いや……だって、かなり恥ずかしいからな!

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