リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【10】
「俺が知ってる限りでは、こんな所だな」
「そうか、ありがうな。かなり助かったよ」
ゴルゴンの情報をくれたイリの言葉に、私は素直に謝意を込めた笑顔を見せていた。
そんな私達がいた場所は、トウキの郊外にある地下バー。
冒アカが、私の地元で本当に良かったよ。
生徒はもちろん、先生にすらバレない酒場を何軒か知っていた私は、イリやキイロを案内する形で今の地下バーにやって来ていた。
会長時代は勿論なのだが、学園に転入してから以降も禁断症状が出た時はたまにやって来て、ここで一人くぴくぴやっている。
今後も、たまにはここで一人静かに飲もうとしてたんだけど......無理かも知れないな。
理由は、私とイリの周囲に存在してる連中が無言でそれを語っている。
「流石はリダ様。ちゃんとお酒が飲める場所を確保していたのですね」
「本当、呑兵衛だよね......リダって」
「ふぇ~......トウキにもこんな店があったんだぁ......なんか、新鮮っ!」
何故か地味に感心するユニクスと、ちょっと呆れ半分に言ってたフラウと、好奇心だけで口を動かしているルミの三人がいた。
この三人に、私の秘密エリアをバラしてしまったのは痛いなぁ......私一人だけなら、99%バレない自信があったけど、四人で酒場とかバレる確率急上昇だろうし。
まぁ、秘密の酒場は他にもあるから......それでヨシとして置こう。
そこは、一応は良いとしても。
「イリとキイロはこれからどうするつもりだ?」
「そうだな......一応、近所のホテルにでも滞在する予定なんだが」
「けど、トウキってホテルの滞在費用が結構バカに出来ない感じがするよねぇ......」
それとなく聞いて見た私にイリが軽く考えながら声を返すと、キイロがやや困った顔になって言う。
なるほど。
最初の旅費は福引きの景品だったかも知れないが、仕事で長期滞在が決まったのなら、相応の維持費が必要になって来る。
もっとも......こいつらの場合、かなりの高給取りと言うか......結構、金を稼いでいる訳だから、そこまで気にするレベルではない様な気もするんだけどさ?
「別段、家計が厳しいとか、そう言う訳ではないないけど......やっぱり未来を考えると少しでも貯蓄はあった方が良いと思うんだよ、私は」
私が素朴な疑問を考えていた所で、キイロがその答えを口にする。
......うむ。
「なるほど、しっかりした嫁さんがいるな、イリ」
「そう言うんじゃねぇよ......」
少しだけ感心していた私がいた所で、イリが苦い顔になる。
そこから、即座に私達の会話へと乱入して来たお姫様。
「その話しは聞き捨てならないんですけどー?」
ぬぅぅっと、厳めしい顔になって後ろから登場。
......そうな。
思えば、ルミと言う恋敵がキイロにはいると言う、良くある構図がそこにあった。
しかし、控えめに考えて、この恋は上手く行く筈がない。
賞金稼ぎと一国の王女が結婚とか、あり得ないからだ。
......うーん。
もう、面倒だからキイロと早く結婚してくれないだろうか?
中々、良い奥さんすると思うし。
「まぁまぁ、ルミさん落ち着いて」
純然たるお冠状態になっていたルミ姫様がいた所で、ユニクスがやんわりとした顔で宥めに入る。
けれど、この時の私には分かる。
淑やかな顔をしっかりと作りつつ、その内面......ユニクスの守護霊が、地味に黒ずんでいた事を。
......そして。
「これが落ち着いていられますかっ! 大体、キイロはもうイリのお嫁さんになったつもりで......うぷぅっ!」
カンカン状態になっていたルミの口に、半分と言うか完全なる強引さでワインボトルを突っ込んで来た。
うぁ......。
「これで姫も、しばらくは大人しくなりますね」
なかなかにエグい事をしれっと平然とやってのけたユニクス。
流石は元悪魔だ。
「......っ!」
他方のイリは慄然とした顔になって、思いきりビビって見せる。
......?
何だ?
「どうしたイリ? 大魔王でも降臨したかの様な顔して?」
「大魔王ではないが......降臨するんだよ」
......は?
「ふ......ふふふ」
刹那。
ゆらぁ~っと妖艶に動くルミの姿があった。
「中々の美酒でしたろー」
一気に酔いどれモードになっていたルミは、フラフラの状態のまま......ええええっ!
「もう、面倒れす。浮気者のイリは吹き飛んじゃいなさいっ!」
い、いや! ちょ、ちょっと!
こ、ここ酒場だぞっ!
私は咄嗟に周囲へと魔導防御壁を張った。
同時に。
超炎熱爆破魔法!
ええええええっ!
な、なんでそんな魔法を使え......。
ドォォォォォォォォォンッ!




