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嘘つきは、エリアボスの始まり【15】

「……何をするつもりだ?」


 ホーンドは額に汗を流しながら返答した。

 

 見る限り、まさに満身創痍と言って差し支えのない状態にあるホーンド。


 当然と言えば当然だな。

 みかんの超爆発の威力はかなりの物があったし……それを受けて、まだ意識がある時点で異常なまでにタフと述べて良いレベルなのだから。


 しかし、身体のあちこちは完全に消し飛んでいるし、反撃が出来るだけの余力が残っている様にも見えない。


 ……そう。

 見えないと言うのに……しかし、ヤツはまだ何処かに余裕を残している。


 気のせいであってくれるのなら、これ程助かる事はないんだが……。


 けれど、何となくではあるが、このホーンドにはまだ奥の手みたいな物が隠されているんじゃないだろうか?

 少なからず、誠実と言う単語からちょうど180度離れた所に位置するホーンドの薄汚れた性質を加味すれば、何かを隠していても全くおかしな話ではなかった。


 故に、隙あらば逆転を狙った姑息な何かをして来る危険性を予測し……私は神妙な眼差しでみかんとホーンドの二人を見据えていた。


 ……そして、私は悟ったのだ。


 私が予測する事が出来ると言う事は、みかんにだって同じ予測が出来ると言う事を。


「こうするです」


 パチンッ!


 みかんが軽く指を鳴らした瞬間、


 ドォォォォォォォンッッッッッ!


 何処か遠くで大きな爆発が起こった。 


 ……?


 何が起きたんだ?


 良くは分からないが、私の予期せぬ場所で、謎の大爆発が起こった事だけは理解する事が出来た。


 ……爆発させた主は、もちろんみかんだ。


 普段のみかんであるのなら、ボケの一環として明後日の方角を誤爆するとか言う、アホな事を狙ってやる事もあるのだが……今回に限って言うのであれば、間違いなく違う。


 当然、マジボケとか言うオチだってないだろう。

 

 少なからず、超が付く程にマジな顔になっていたみかんの顔がそうだと無言で語っている。


 そして、みかんがやろうとしていた目的が……その真意が明らかにされたのは、ここから間もなくの事だった。


 謎爆発が起こった直後、ホーンドがバッタリと倒れた。


 あたかも操り人形の糸が切れてしまい、そのまま崩れ落ちる感じで身体を倒していた感じだった。


 特に受け身と言うか、身体を守ろうとする事なく頭を地面に叩き付けていた姿は……もう、不気味としか言えないぞ?

 生きた人間がこれをやっているとすれば、間違いなく大怪我レベルだ。

 下手をすれば、打ち所によりけりではあるが……死んでもおかしくない倒れ方だった。


 こんな所を見ても、こいつはやっぱり人間ではなかった……と、こんな事を考えていた頃、


『き、ききき、貴様っ!? な、なにをしたっっ!?』


 人形と大差ない状態で倒れ、ピクリとも動かなくなったホーンドの近くに、謎の軟体生物が出現する。


 何て言うか、大昔の火星人っぽい謎生物とでも言おうか? 一応、口とか角とかモンスター風味に付いているし、それらを総体的に見るとキメラの様な化け物とも表現する事も可能ではあったが……この時点で私は、この謎生物の正体が何者であるのかを悟る。


 ああ、なるほど。


 こいつがホーンドの本体だったのか……と。


 最初は、己の肉体を変化させる感じの魔法を使い、その姿を変えていたのかと思ったのだが、どうやら違ったみたいだ。


 真実は、さっきのコメディアン・テイストな青年を何処かで操っていた……と言う事なんだろう。


 そうなれば、色々と合点が行く。


 満身創痍の状態で、反撃はおろか逃げる事だって難しい状況に置かれていたと言うのに、それでも何処か余裕を残した表情を微かに見せていたのは……眼前にいたコメディアン風味の青年が本体ではなく、文字通り単なる人形の様な存在であったからだ。


 ともすれば、本物の生きた人間だったかも知れないし、どっかの墓場から漁って来た元・人間を使っていたのかも知れないが……なんにせよ、今倒れている青年の方はホーンドに操られていた『だけ』の存在に過ぎない。


 本体は別の所にいて、悠々と私達と会話をしていた事になる。


 そこで、さっきの爆発だ。


 一見すると、明後日の方角で謎の大爆発が起こった様に見えるが……実際は、安全だと思って油断していたホーンド本体を狙った爆撃をしていたと言う事になる。


 どうやら、みかんは全てを見抜いていた模様だ。

 

 …………うむ。


 コイツだけは敵に回しては行けないな。


 相手の策略を完全に見抜き……むしろ、逆手に取る形で本体へと不意打ちの爆撃を仕掛けていたみかんを知り、私は心から味方で良かったと安堵の息を漏らしていた。

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