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嘘つきは、エリアボスの始まり【12】

 まぁ、私がジャッジメントをして良いとするのであれば、間違いなくコメディアンの言葉よりもレイスの言葉を信用するけどな?


 ……しかし、私が一方的なジャッジを下すのは、いささか公平さに欠ける。

 正直、不公平な事をしているコメディアンを相手に、こっちもわざわざ公平な態度を取る必要なんざ無い気もするんだが……私としては『だからこそ公平でいたい』と考えていたりもする。


 ここで理不尽な事をしたら……結局は、このコメディアンと同じレベルの人間って事になってしまう。


 ハッキリ言おう!

 私は、コイツと同類にだけはなりたくないのだ!


 そして、この気持ちはみかんも同じだったのだろう。


 しっかりと根拠のある発言である事を説明して来た。


「貴方が下の階層へと向かう入り口と称して見せた物に、みかんさんがそれとなぁ~く近付いた時がありましたよねぇ~?」


 ああ、あったな……そんなの。

 私の視点からすれば、能天気極まるボケた行為ではあった。


 素直に『はい、そうですか』と通らせてくれそうに無いのは、わざわざ言われなくても気付くレベルだったと言うのに、さも当然の様にあっけらかんと向かっていたのを思い出す。


 しかし、一見すると単なるボケをかましているだけの様に見えて……実はちゃんと目的があってやっていたと言う事になる。


 そう考えると、やっぱりみかんも、中々の狸だよな。


「それがどうかしたのかい?」


「あの時、さりげなぁ~くレイス君一号にお願いして、中に入って行って貰ったんですよねぇ~?」


「……っ!?」


 みかんの言葉に、芸人の顔が一気に強張った。


 やっぱりお前はコメディアンに向いているんじゃないのか?

 そのリアクションは一般人には出来ないぞ?

 一種の才能ってヤツだ。


 そして、リアクション芸人にも匹敵するオーバーなリアクションが、そのまま真実への一本道になっている様に、私の目に映った。


「ほで(それで)です? レイス君一号が入って、中を確かめてみると……単なる真っ暗な行き止まりに当たったらしいのです。この時点で、次の階層へと向かう道ではないと言う事が実証されたのですが……問題は次です」


 ここまで答えると、みかんの眉が一気によじれた。

 もはや、憤懣やる方無い……って顔になっていた。


「行き止まりのエリアまで行くと、中から大量の毒素を含んだ水が溢れて来て……そのまま通路内の全てを水没させてしまったそうです……つまり、これが生身の人間であったと仮定するのなら、間違いなく死亡している凶悪なトラップだったと言う事になりますねぇ~?」


「それは、君の虚言だろう? 誰が一体、何の方法でそれを見たと? まさか、そこにいる良く分からない悪霊が見たと?……ふふ、バカを言っては行けないなぁ? それはどう見ても悪霊が君達に嘘の報告をしたと言う……」


 みかんの説明に……しかし、それでも往生際の悪い台詞でしらを切ろうとするコメディアンが、かなり必死で反論を試みたのだが、全てが言い終わるよりも早くみかんの口が動いていた。


「いい加減にしないと、みかんさんも本気で怒りますよ~? ここのダンジョンマスターに好かれたかどうかしたのか分からないですが、みかんさんは単なるホーンド程度のモンスターごときに、これ以上へりくだった態度を取るつもりはないのです~」


 途中から怒りの度合いが強まっていたみかんだが……ここに来て、更に怒りの感情を爆発させる勢いを見せて来たみかん。


 うぁ……。

 なんて言うか、マジで怒ってるよ……。


 これは……なんて言うか、コメディアンは大きな失敗をやらかしたな。

 元来、そこまで怒る事もない……と言うか、姑息で理不尽で卑劣な行為さえしなければ怒りを一切みせないみかんを、ここまで怒らせるのだから……ある意味、色々と才能があるな、このコメディアン。


 もっとも、芸人としての才能ではないかも知れないけどさ。


 そして、往生際の悪さも極まっていた。


「……ホーンドだって? ちょっと待ってくれよ? そもそも、ホーンドって何? え? モンスター? そんな水モンスターなんて、何処にいるのさ?」


 如何にも『言ってる意味がさっぱり分かりません』って感じのリアクションを、やっぱり無駄にオーバーにみせて来た芸人を前に、マジで怒り状態になっていたみかんは、


「みかんは、ホーンドが『水モンスター』だなんて一言も言ってないですよ? 良くホーンドは水系……ホーンド・サーペントである事に気付きましたねぇ~?」


 もう、これでもかと言うばかりの正論を口にしていた。


 ホーンド・サーペント。

 

 地獄からやって来た、悪意しか持たない悪魔のフィーンドと似ているし、ゲームの世界なんかで出て来るホーンドは、フィーンドをホーンドと呼んでいる事が多い。

 つまるに……ちょっと紛らわしいので、軽く説明を入れて置こう。


 ホーンド・サーペントと言うのは、水辺に住む怪物の一種。

 人間に対しては優しいホーンドもいる為、フィーンドとは大きく事なり、中には穏やかで誠実なホーンドも存在している。

 

 全体的に見ると、軟体動物みたいな化け物だ。

 色々な伝記にホーンドは出現しているが……正直、悪いホーンドは最悪だ。

 ホーンドに対して悪意を持った人間の末路は賛嘆で……凄惨な殺され方をしている。


 もっとも、私が知る限りで、ここまで理不尽かつ自分勝手なホーンドは居なかったのだが。

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