嘘つきは、エリアボスの始まり【10】
ういういさんとしても、何か口にしたい気持ちとかが多少はあるっぽい顔をしていたんだが、色々と気を遣って何も言わなかったんだろうなぁ……と思われる態度をみせている中、ユニクスが真剣な顔になってういういさんへと声を吐き出していた。
「……すまない、この爆発は思ったよりもキツい。リダ様の様な温もりを感じる爆発とは異なる爆発だった」
そんな爆発はないと思うぞ?
真顔でほざくユニクスの言葉を耳にした私は、思わずツッコミを入れたい心情で一杯になってしまう。
一方、倒れたユニクスを、上半身だけ起こす形で抱きかかえていたういういさんの表情もビミョー極まる顔になっていた。
顔では『温もりのある爆発って何だよ?』って感じの顔になっていた。
確かにその通り過ぎて、私は何も言う事が出来なかった。
「……ほう、今の一撃を喰らってもまだ生きているとはね? 私の予定ではゲームに敗北した者は死ぬと言う、良い見本になってもらう予定だったんだが……ふふ、タフな人だね? まぁ、私は紳士だから、今回の所はこの辺で勘弁して上げよう?」
他方で、コメディアンが何か言っていた。
相変わらず自意識過剰なヤツだと言う事だけは理解出来る台詞だった。
ああ、あと一つばかり分かった事があるな?
「……なるほど。罰ゲームと言う名の虐殺をしたい訳か」
納得する感じで、私は独りごちる。
誠実かつ正直に答えろと言っておきながら、相手を屁理屈で言い負かそうとしている時点で、ここを通すつもりなど最初からないのだろう。
ある意味で、分かり易いヤツで結構な話だ。
「これはまた、心外だねぇ……私は、常に誠実かつ平和主義な紳士さ? 私程、常に真実を語り、公平さを尊重する者はいないと思うんだが? どうだい?」
「私が知る平和主義的な紳士とは程遠いが?……まぁ、良い。次は私が水晶に立ってやろう……お前のゲームとやらに付き合ってやるかどうかは知らないがな?」
余裕のある笑みを作りつつ……内心では、私の答えた台詞にいきり立っているんだろうコメディアンを前に、軽やかな嫌味を返してみた。
特に挑発するつもりなんか無かったんだけど……コイツの場合は、色々と言ってやりたくなる事が多過ぎて……つい、な?
どちらにせよ、少し調子に乗り過ぎている事は足しかだ。
ここらで、ガツーンッ! と言って置かないと、更に調子に乗って来そうだ。
「へぇ? それは面白いね? 私の様な紳士的な態度を少しは見習うべきだ?……いや、そうだったね? 利かん坊に何を言っても無駄だと言う事など、博学多才な私にとって常識クラスの知識ではあったね?」
「聞こえなかったのか? 御託は良い。さっさとやれ」
完全に調子に乗りまくり、絶好調状態で寝言をほざきまくるコメディアンへ、私はぴしゃりと言葉を返した。
直後、コメディアンの眉がピクッ! っと動く。
ああ、やっぱりな? って感じの反応だ。
コイツは、どんなにやすい挑発であっても、簡単に触発されるレベルの短気な輩なんだろう。
少し、カルシウムでも取ったら良いんじゃないのか?
「……失礼。確かに少しお喋りが過ぎましたね? それでは質問を……」
「その前に言う。このゲームが公平だと言うのなら、私の方にも問いを与えるべきではないのか?」
「……は?」
コメディアンは、パックリと口を開けて来た。
……うむ。
より、コメディアンらしい顔になったぞ?
「いきなり何を言い出すんだね? 君は? これは私が君へと質問をすると言う公平なルールから来ているのだよ?」
「それが公平ではないと言っているんだ?……分かるか? 今やっているゲームとやらは、お前が一方的に質問をするだけの、実に不公平極まりない理不尽なゲームだ」
正確に言うのなら、ジャッジもコメディアンが勝手に決めている。
もはや、公平と言う単語が何処に存在するのか?……もしかしたら、この芸人は公平と言う単語の意味を知らないチンパンジーなのかも知れない。
その理由に、
「……んなっ!?」
私の答えた正論に、思いきり驚きの表情を露骨に作って来たからだ。
やっぱり、このコメディアンの知能は、チンパンジーと大差ない模様だ。
二度言う様で恐縮ではあるが……公平の意味を知らない様にしか見えないのだから。
「異論はあるか? 公平と平等を重んじる水の大将さんよ?」
「……ふふふ、本当に君には驚かされるね? 否定をしたい所ではあるけど、互いに質問をし合うと言うルールは確かに公平だね? 良いでしょう? それでは質問を言い合うと言う形で行こうか?」
「なら、最初に問う。さっき私達に見せた、下の階層へと向かう階段……あれは本当に次へと向かう道なのか?」
厳密に言うと、鍾乳洞だったが。
どの道、意味は通じるだろう。
「なんだい? そんな簡単な質問で良いのかい? それなら、答えはイエスさ? 誠実かつ真実だけを好む、この私が言っているのだからね?」
コメディアンは胸を張って堂々と言う。
そんな自称・紳士に向かって私は言った。
「その言葉、ダウトだ」
ニィ……と、含み笑いを作って。




