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嘘つきは、エリアボスの始まり【3】

 一方、無邪気な少女の様な態度ではしゃぎまくるいよかんさんを見て、みかんが気恥ずかしそうな顔になって声を出していた。


「にしゃは、ちっと騒ぎ過ぎだ……もうちっと静かにしてらんにのが?」


 恥ずかしい感情そのままに苦い顔になって、いよかんさんを窘める。


 恐らく、無邪気過ぎる程の態度と言うより、露骨な御国訛りを連発している姿が、妙に恥ずかしい気持ちになっているのかも知れない。

 何となくではあったけど、みかんの態度を見ていると、そんな風な顔をしている様にもみえた。


 国の訛りは、その国に住む人間の証しと言うか、生きた証の様な物でもあるから、そこまで恥じる様な事でもないと思うぞ?


 基本、中央大陸の言語は大陸共通語で統一されているから、その人間が何処の国を生きて来たのか? 言語からは分からない場合も間々ある。

 全く異なる言語を使っているのであれば、その時点で違う国や地域からやって来ている事がすぐに分かるが、この世界……と言うか中央大陸の場合は大陸共通語で言語が完全に統一されている為、陸続きになっている外国は全て同じ言語を使用しているからだ。


 これはこれで、他国の人間との意思疏通やコミュニケーションの取り易さがあって、全体的に見てもメリットの方が多いのだが、反面で出身国が何処なのか分かりにくい等の素朴な物も発生する。


 そこで無意識に出て来る、その国特有の方言や訛り辺りが、出身国の大きな判断材料になる訳だ。


 つまり、私の言いたい事は、分かり易くて結構!……と言う事だ。

 

 それだけナチュラルにお国言葉を言う事が出来るのは、その国に長く住んでいた者か、出身国の人間かのどちらかでしかないので、私としては分かり易くて良いんじゃないかな?……と、そう考える。


 しかしながら、クシマ国の人間は……特にトウキ帝国の人間に対しては言葉に一種のコンプレックスを抱いている傾向にある。

 ここは、当のトウキ人がクシマ国の訛りを茶化す傾向にある為、クシマ人が馬鹿にされていると思い込んでしまう節があるのが要因と予測出来るが……まぁ、その他にも色々とコンプレックスに繋がる原因があり、結局はクシマ人も言葉訛りをみずから捨てる風潮にある。

 

 自分が誕生し、自分が生き、自分が住んだ、愛着のある土地の言葉を簡単に捨ててしまうと言うのは、若干の侘しさを感じたりはするのだが、トウキの人間も地元特有の言葉を余り使わない傾向にあるから、これは世界的な時代の流れであるのかも知れないな。


 何にせよ、御国訛りは決して恥ではないと思うぞ?

 むしろ、先人が作り出した大切な伝統の言葉でもある。

 もう少し大切にした方が良いと私は思うんだが……どうだろう?


 ……まぁ、我がトウキ人も同じ事が言えるんだけど。


 …………。


 そろそろ話を戻そうか!


 私達は、入口から続いている白地に水色の縦線が描かれている絨毯に沿う形で歩いた。


 他に選択がなかった訳ではないが……進路と言うか、方向的にこの絨毯に沿って歩くのが一番早く、この城の主に会う事が出来るのではないかと考えたのだ。

 この考えが間違えであったのなら、また元に戻って違う道を歩けば良いだろう。


 簡素に言うのなら、まだ慌てる時間でもないので、まずは一番それっぽい所から向かっていた訳だ。


 おごそかな雰囲気のある絨毯の上を歩いて行くと……途中、甲冑を着てた兵士っぽい存在とすれ違ったりもするが、こちらに何らかの危害を与える様子はなかった。

 むしろ、敬礼の様なしぐさまでして来る始末。

 これはどう言う意味が込められているのだろうか?


「何故か、歓迎されている……と言うか、絨毯に従って動く事を推奨してますねぇ……?」


 絨毯の上を歩きながら、みかんは少し訝しい顔になって言う。

 

 特に疑う必要性はなかった……いや、厳密に言うと、確かに不自然なまでに私達を誘導させたがっている様にも見えなくはないので、訝しい顔になっているみかんの気持ちが分からなくもない。

  

 そもそも、この城にやって来る前には、巨大烏賊による襲撃を受けていたからな。

 所が、いざ城内に入ると、今度は地味に歓迎されている雰囲気すら出来上がっている。

 ここに大きな矛盾と懐疑の二つを感じてしまうには仕方のない事だった。


「……一応の警戒だけは怠らない様にしないとな」


 怪しむみかんの表情を見て、私も顔を引き締めてから相づちを打った。


 ここは、敵の本拠地に当たる場所でもあるんだ。

 注意や警戒は、幾らやっても足りないと言う事はないレベルでもあった。

 そう考えるのであれば、ここは否が負うにも気を引き締めないと行けない場面と言えた。

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