誠実さを試す試練だが、真の虚言者は……【21】
しかし、そうなると……虚言を吐いては行けない場所とやらは、何処になるんだろう?
何となくではあるが、結局の所……嘘を吐いては行けないのだろう。
……うぅむ。
まぁ、冷静に考えれば常識ではある。
人間としての良識の上で考慮するのであれば、嘘はいけない……なんて事は、子供でも分かる事だ。
うむ、そうだな?
よくよく考えたら、私ほど誠実かつ正直な人間なんて居ないではないか!
「みんなで四方にバラけた後、色々あったと思うんですが……あれは、ちゃんと真実を語ってましたかねぇ~?」
……って、このタイミングで言う? それをっ!?
人間としての常識と、自分の誠実さに自信を込めて胸中で頷いて間もなく、みかんがピンポイントで私にとっての痛い所を突いて来た。
あれは……だな? 実験もあって敢えてやっただけなんだからな?
本当だぞ?……本当なんだけど、今更嘘とか言えないし……つか、蒸し返すんじゃないよっ!?
「た、多分……きっと、真実だったと思うぞ」
本当は虚言も良い所ではあったのだが、もう開き直る感じで言う私。
でも、ちょっとだけ歯切れの悪い言い方になってしまったかなぁ……?
そんな事を考えつつ、然り気無く周囲を見ると……周りの面々も、やはり良い顔はしていなかった。
当然と言えば当然だ。
その件に関して言うのであれば、みんな同罪だからだ!
冷静に考えれば、お前らみんな嘘吐きじゃないかよっ!?
「誠実な事が何よりも重要だって事ですので、嘘は言わない! 嘘はダメ、絶対の精神で行きますから……そこは守りましょ~! 特にういういさん!」
「んなっ!? なんで私なんだよ! 私程、色々と素直で誠実な人間なんて居ないだろうがっ!」
いや、それはどうだろうか?
そもそも、他の面々はボケのネタ的な意味で嘘をほざいていたとは言え、それなりに良心の呵責を覚えて気まずい顔をしていたと言うのに、ういういさんだけしれっと涼しい顔をしてたりするんだから……まぁ、この時点で察しだと思うのだが……?
幾ばくかの疑念が、私の中で微妙に生まれていた頃、みかんが納得混じりの表情になって、ういういさんへと声を吐き出していた。
「まぁ、そうですねぇ……色々と素直かもです。お金への執着心は素直に見せてますし、誠実と言うよりは忠実かもです。主にお金に忠実~」
「金に忠実とか? 何を言ってるんだよみかん! そんなの常識だろっ!?」
常識だったんだ……。
どうやら、お金に忠実な行動を取るのは、ういういさんにとって常識だったらしい。
ある意味でういういさんらしいと言えば相違ないが、完全なる己の闇をこうも露骨に見せて来る人間も珍しい気がする。
……まぁ、そこを含めて、ういういさんらしいと言えばういういさんらしいのだが。
周囲を見ると『ああ、だめだこの人』って感じの顔をしていた。
きっと、私も似たり寄ったりな顔をしているだろう。
私は、そこまで金に執着心を燃やしたりはしないからなぁ……。
個人的に言うのなら、少しばかりういういさんを諭す様な台詞の一つ程度は口にしたい所ではあったんだが……ういういさんの性質が、私の助言程度で簡単に治る代物であるとは思わない。
きっと無駄骨に終わってしまいそうなので、敢えて何も言わないで置いた。
……と、そんな事よりも、だ?
バァァァァンッッッ!
その時、城の前にあった大きな門が、勢い良く開いた。
如何にも重厚そうな門だったが、みかんが軽く押しただけで門は派手な音を立てて開いてみせる。
もしかしたら、みかんの力とは関係なく、魔法か何かで開いたのだろうか?
どちらにせよ、簡単に開いてくれるのは結構な話だな。
開いた門の向こうから見えて来るのは、城の庭園と思われる。
うむ、何と言うか……王族が好みそうな美しくも品のある庭園だな?
特徴的だったのは、庭園にも珊瑚で彩られたオブジェみたいな物があった事だろうか?
全体的に見て、これぞ海底の美しさ! と、私達へと無言で語っている様な?……そんな、色鮮やかな光景が視界一面に広がっていた。
「さながら、海底の楽園だな、ばっぱ! 私、ちょっとだけならここに宿泊したいかもっ!?」
城門を越え、海底の庭園へと足を向けたいよかんさんが、嬉々としてはしゃぎながらも周囲を見渡していた。
……観光気分全開な感じだった。
「アリンが寝てて良かった」
私は誰に言う訳でもなく呟く。
きっと、アリンが起きていたら、いよかんさんと一緒になってはしゃいでいた事だろう。
決して悪い事ではないとは思うんだけど……私としては遠慮して貰いたい気持ちの方が高いかな。
何と言っても、これから決戦が始まるのだから。




