誠実さを試す試練だが、真の虚言者は……【14】
同時に思った。
今の私は、みかんと同等の存在……と言うか、ボケ発言だと思われているんだと言う、とてつもなく恥ずかしい現実がそこに存在していた事に!
一応、少しは冗談めかして言った台詞だったし……多少は、ツッコミに近い台詞がやって来るかなぁ……なんて、思ってはいたんだけど……まさか、ボケをボケで返して来るとは思わなかった!
しかも、一見すると嘘と言うより、単純に惚けているだけにも聞こえるし……ああ、だけどこれも嘘吐きに値するのかなぁ……?
もしそうであれば、みかんにも何らかのペナルティが発生するんだろうか?
それにしては、何も発生する様子はないなぁ……。
私も、やっぱり何らかの危害を受ける様子もないし……実は、部外者には関係のない話だったのだろうか?
一応の嘘を吐いていたみかんが……しかし、何かが起こる気配すらないまま、飄々としていられる状態をみて、更に胸中がハテナで埋まる私がいた頃、
「私の方は、レア素材を持ってるモンスターが数体いたけど……ちょっと注意不足でさ? 逃がしちゃったんだよねぇ~? 惜しかったよな? なんてかさ? 逃がした魚はデカイ的なさ?」
これまたみかん同様のボケをかまして来る。
いや、もう……絶対に嘘だよな? それ!
みかんとは違い、惚けると言うよりも真っ赤な嘘をさもそれっぽく言っている。
もはや、完全に姑息な嘘の部類だ。
うむ! これは、確実にペナルティを受けるんじゃないだろうかっ!?
結果的にではあるが、ういういさんが被験者となる形で姑息な嘘をしれっと吐いているシチュエーションが発生していたのだが……やっぱり、ういういさんに何らかの変化が発生する様子がない。
これはどう言う事だろう?
やっぱり、ペナルティは部外者には課せられないと言う予測で当たっているんだろうか?
私の中にあった謎が膨れ上がっていた頃、最後にみかんの友達でもあるレイスの報告を聞いてみる。
既にみかんへと報告済みだった関係もあり、レイスではなくみかんの口から出て来た報告ではあったんだが……話によると、北側には大きな城があったらしい。
ただ、城の中はもぬけの殻で、攻略に関係する何かはなかったとの事。
これ以上の調査は時間の無駄だと思ったので、お宝を手に入れてサッサと撤収したとの事。
妙な含みのある内容になっている話に聞こえるんだが……敢えてツッコミは入れないで置こうか。
私としては、お宝があった時点でもぬけの殻って事はないだろう? と、大きく言ってやりたい所ではあったんだけど……このボケに至るまでの経緯を作り出したのは私自身でもあったし……そこにツッコミを入れられる立場ではないかなぁ……なんぞと思い、自粛した。
果たして。
「総括すると~、城があったレイス君達方面が攻略に関係しそうな所っぽいですねぇ」
身も蓋もないまとめ方をして来るみかんがいた。
私の眉間に思わず皺が寄ってしまった。
「……もぬけの殻って言う話をしてたのにか?」
本当は、ここをツッコむ気はなかったんだけどな?
しかし、お前が原因で、私も結果的に大ボケの立役者に祭り上げられてるんだ!
もう少し違う場面で言えば良かったと後悔してるし……密かに、結構な価値のある宝石を、あわよくば秘密に出来ると思ってのあざとい気持ちなんぞも相まって、口から出任せを言ったりはしてたんだけど……だからって、しれっと言うか? 普通っ!?
「そこは大丈夫ですよ~。レイス君達はノリでボケてくれただけですからねぇ~っ!」
そして、更に輪を掛けて身も蓋もない言葉を言って来るみかんがいた。
もはや、完全に嘘を隠す気がないだろ? お前はっ!?
そして、私の言った冗談も、完全なる大ボケ行為に昇華しちゃってるよ!?
本当は、ちゃんと『これは実験だった』と言うつもりだったのにっ!?
誰かれに突っ込まれた発言を受けなかったら、このまま有耶無耶にして置こうとは思ってたけど、それでも本当の事を言うつもりはあったんだぞ!
くそ……これで、完全に私はただの大ボケ発信者になってしまった。
まぁ、しかし……逆に言うと、塔で手にした宝石を私の懐に納める事が出来た事だし……うぅむぅ……。
…………ま、良しとして置こう!
結局の所、借金が悪い!……って事にして置いた私は、以後もみかんの話に流される形で話をして行き、レイス達が発見したとされる北側の城方面へと向かう事になって行くのだった。
こうして、次の目的地が決まった私達は、再び全員で北へと歩いて行く。
大体、十分程度は歩いたろうか?
レイス達の報告にあった通り、大きな城が見えて来た。




