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誠実さを試す試練だが、真の虚言者は……【9】




        ○◎●◎○




 東側を担当する事になった私は、一部の空耳による、珍妙な悪感情の様な物を受けつつも早足でパーティーから離れて行った。


「普通に海だよな……ここ」


 未だ夢の中にいる愛娘を抱っこした状態で、軽く周囲を見回しながら歩いていた私は、まんま海底だった景色を楽しみながら進んで行った。


 本当は、こんなエンジョイ出来る様な状態ではない事は分かっているんだけど……なんてか、周囲の連中がやたらとコミカル過ぎるので、真面目な態度をしているのが馬鹿らしくなる傾向にあったのだ。

 私としては、もう少し緊張感があっても良いのかな?……とは思うのだが、これはこれで決して悪い訳ではないし……何より、心に余裕が持てるだけの実力もあるからこそ可能にしている態度でもあるんだよな。


 そう考えると、なんだかんだで頼もしさすら抱いてしまう。

 みかん達と一緒にダンジョン攻略する事が出来たのは、私達の幸運だったのかも知れないな?

 

 みんなと別れ、眠ったままの娘を抱いたまま進む事……約十分。


「……ん?」

 

 視界の中に塔の様な物が入る。

 塔の様な物……と表現したのは他でもない。

 形と言うか、建物的に言うのであれば灯台か塔の類いである事は間違いないんだが、その造りが珊瑚で出来ているからだ。


 簡素に言うのであれば、それがたまたま塔の様な形になってしまった塔なのか、最初から塔を珊瑚で作ったのか? そこらで少し悩んでしまう様な?……そんな感じの塔だったのだ。


 目的は探索なので、取り敢えず周囲を調べてみようか。


 思った私は、塔へと向かってみる。

 存外、大きな塔だな。

 一体、何が目的でこんな馬鹿デカイ建物を作ったんだろうなぁ……?


 ふと、こんな事を考えつつも塔の入り口はないかと探してみる。

 すると、正面に門の様な物があるのが分かった。

 なるほど、入り口は普通に正面なんだな。


 見る限り、門は珊瑚で作られた様に見えるが、頑強そうな木製の門の様な形をしている。

 固く閉じている様にも見えるので、もしかしたら開かない可能性もあるな。


 まぁ、その時は強引にこじ開けてやっても構わないんだが……別に泥棒をする気で探索している訳でもないしなぁ……開かなかった時は素直に引き返す事にしようか。


 ……と、心の中で考えていた時だった。


 ゴゴゴゴゴッッ!


 門は、派手な重低音を上げながらもゆっくりと開いてみせる。

 

 自分から開いてくれるとは思わなかったな。

 もっとも? 私からすれば好都合ではあったんだが。


 ゴゴォーンッッ!


 最終的に全開状態になった入り口を見て、私は塔の中へと入って行く。

 思えば、ここはダンジョンの中だったんだよな? そう考えると、ダンジョンの中で更にダンジョンの中に入って行くって言う感覚だ。

 何だか、箱の中にある箱に入る様な? そんな、珍妙な感覚を受けた。


 塔の中に入ると……うむ、予想以上に広いな。

 

 床も壁も珊瑚で出来ているのではないかと思われる所に繋がっていた。

 仕切りの様な物はなく、完全に塔の全体を見渡せる……そんな、空洞の塔みたいな造りだった。


 ただ、右端に螺旋階段の様な物があったので、この階段を使って上に向かう事が可能みたいだな?


 ただ、これだけ上下左右に仕切りがない、実に開放的な空間であった場合なら、わざわざ階段を使うまでもなく滑空魔法グリードを発動して上に行った方が早そうだった。


 周りを見る限りだと、特に何かがある様には見えないし、取り敢えずは上に上がって見るか…………ん?


 そこまで考えていた時、上の方から何かが振って来た。

 いや、厳密に言うと少し違う。

 上の方から下へと、落下するかの様な勢いで泳いで来ているのだ。


 格好からするのであれば、潜って来ている感じなんだろうが……スピードがとんでもなく早く、潜ると言うよりも落ちて来ると表現した方が妥当と思われる勢いで、こちらまでやって来ているのが分かる。


 同時に私は気付いた。


 ここは水中であった……と。

 水中なのに呼吸も出来るし……普段と特に変わらない物だから、ついつい忘れてしまいそうになってしまうんだが、ここは水中だ。


 つまるに、上下を移動するのに滑空魔法の類いを使用する必要はなかった事に気付く。

 そんな魔法をわざわざ発動せずとも、普通に泳げば良いだけだった。


 …………。


 すると、あの螺旋階段は、何の為にあるんだろう?

 別に要らない様な気がするんだけどなぁ……?


 微妙に素朴な疑問が私の脳裏をかすっていた頃……上から落ちる様な勢いで潜って来た存在が、私の眼前までやって来る。


 私の眼前までやって来た存在……それは、全身が魚の鱗で覆われた人形のモンスター……マーマンだった。

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