誠実さを試す試練だが、真の虚言者は……【5】
「二人して……どうして、そこまでコントがしたいのですか……」
ある意味、狙ってやっている様にも見えるういういさんといよかんさんの様子を見て、みかんが吐息混じりになってから言うと、間もなく二人が目を通している水質検査報告書を読んでみせる。
「なるほど……これは興味深いです~」
水質検査・報告書を読んだみかんは、読んでから少し間を置いた後に唸り声を吐き出していた。
なんて言うか、試験管の中に謎の錠剤を入れていた時のシズ1000と同じ様な顔付きだったな。
簡素に言うのなら、この報告書を見れば、あの謎めいた態度の意味が分かりそうだ。
……うむ。
「へぇ? そんなに興味深い事が書いてあるのか? それなら、私も少し読んでみたいんだが?」
ちょっと気になった私は、報告書を読むみかんの真横に立つ形で、その内容に目を落とした。
……ふむ、なるほど。
報告書の内容を見る限り、成分は普通に水だ。
科学的に言うのであれば、単純かつ純粋な水としか言えない。
厳密に言うのなら、真水と言う訳ではなく、そこらから湧いて来る湧き水なんかと同じ代物だと言う事が、シズ1000の検査によって分かった。
ただ、科学的な専門用語が結構書いてあったりするので、余りそう言った物に触れていない人間が見ると、何が書いてあるのか良く分からないと言う状態になりそうだな?
しかし、ポイントはこれだけ『ではない』と言う所だ。
科学的な意味で行くと、単なる水でしかなく……強いて言うのなら、毒素に値する成分は一切ありませんよ? と言う事を証明する内容になっており、そう言った検査結果から『この水は安全』と言う様な結果を出しているんじゃないかと予測する事が出来る。
しかし、さっきも述べた通り……科学的な分析結果とは別の物も記されている。
こっちが、中々に興味深い。
果たして、科学的な分析とは別の物と言うのは、魔導的な視点から見る分析結果だ。
こちらも、魔導的な専門用語と、それに精通する式の様な物まで書かれているので、知らない人からすれば謎以外の何物でもない内容になっている。
正直に言うと、シズ1000はもう少し読み手に優しい報告書を書いた方が良かったんじゃないかなぁ……なんて事を思ってしまった。
どちらにせよ、そっちの方が本題と述べても良い検査結果と言える。
色々と専門用語の羅列になっている為、そう言った物を一切出さない感じで述べると、まずこの水……呼吸が可能だ。
検査によると、水の中に魔導式が存在しているらしい。
その魔導式がキッチリ丁寧に書かれているんだが、その魔導式を解いて行くと……なるほど、確かにこれは水中で呼吸可能な魔法に化けるな。
ただ、結構高度な魔法と言える。
良くもまぁ……こんな複雑な魔導式を組んで来た物だと感心出来るレベルの内容でもある。
他にも魔導成分的な物を見ると色々入っている模様だ。
「マジか? やっぱり、特殊迷宮には特殊な水があるんだな……仮にこの報告書が真実であるのなら……とてつもなく不思議だぞ」
私は報告書とにらめっこをしながら答えた。
……うぅむぅ……。
何と言うか、成分と言うか、中身を見れば成る程と納得出来る部分も結構あるんだが……かなり複雑かつ緻密な計算を元に作られている為、複合で魔法が発動している不思議な水になっているのが、実に興味深い。
同時に思う。
どうして、ここまで手の込んだ真似をしているのか?
もちろん、その答えは水没した先にあるんだろう三層目に向かえば分かる事なのかも知れないが。
「そうですねぇ……魔法学的にも科学的にも超自然現象かもです」
程なくして、私の言葉にみかんは相づちを打って来た。
……?
魔法的にも科学的にも超自然現象?
……あれ? そこまで凄い内容だったか?
頷くみかんの言葉に、若干の違和感を抱く私がいた頃、
「そんなに唸る様な内容なのですか? それなら、私も読んでみたいのですが?」
間髪入れる事なく、ユニクスが私達の合間に入って来た。
そんなユニクスは、みかんと仲の良さそうな雰囲気になっている情景が気に喰わない!……って顔をみせていたりもする。
…………。
どうでも良いが、私をレズの視点で物事を考えて欲しくはないんだが?
ともかく、みかんと私の合間に入って来る感じでやって来たユニクスは、報告書の内容に目を向けた。
「……えぇ……と?」
そして、内容を理解する事が出来ずに、眉を寄せてしまう。
……結局、みかんの言った含みのある台詞を邪魔しに来ただけじゃないかよ……?
地味に迷惑な事をしてくれるなぁ……全く。




