リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【6】
裏通りにある小さな書店。
根本的に地元の人間位しか足を運ばないだろう立地条件の書店だが、こう言う小さな書店ならではのメリットもある。
それは、
「お姉さん。こないだ言ってた本、出てる?」
「あらリダさん、いらっしゃい。こないだの本ならさっき入荷してるよ」
とっても融通が効く所だ。
もしかしたら、この店の特色なのかも知れないが、小さい書店は存外、一人一人の顧客を大切にする。
大きい書店だと、嫌でも客の数が多くなってしまうせいが、どうしてもおざなりになってしまいガチな部分もある。
客をさばく数が段違いなのだから仕方ない所もあるんだが、小さい書店だとその分、個人を優先してくれる訳だな。
ここらの関係もあってか、私は結構小さな書店で本を購入する事が多い。
まぁ、ここらは飽くまでも個人の好みレベルなんだがな。
本を購入して、目的を終わらせた私は足早に店を出る。
いつもなら、ここで暇してる書店のお姉さんと世間話の一つでもして、ゆったり帰ったりもするのだが、今回は連れが三人もいるしな。
思い、私はすぐに書店を出る。
「ありがとうね。また、いらっしゃい」
いつもの営業スマイルを受けて私は書店を出る。
そこから、ルミやユニクス、フラウが各々、欲しい本を購入して私達と合流する。
ルミが買ったのは、女を磨く為に必要な条件とか言う......まぁ、ハウトゥ本と言った所か。
まぁ、こう言うのを買って、世間知らずなお姫様は、耳年増姫へと成長して行くのだろう。
果たして、それは成長と表現しても良いのかで悩む所ではあるんだが、取り敢えず良しだ。
他方のユニクスは......『同性愛は成立する』とか言う本。
取り敢えず燃やしてやりたくなった。
最後に、特に買うつもりはなかったけど、皆何か買ってるから一応買うか的なノリで本を買っていたフラウ。
買ったのはお洒落雑誌の類いだった。
一番マトモに見えた。
まぁ、ともかく。
これで用事は済んだな。
普通に昼食でも食べに行こうか。
そんな事を考えながら、裏通りを歩いていた時だった。
「......すいません、ちょっと良いですか?」
軽く、声を掛けられた。
「? はい? 私ですか?」
「ええ、貴女ですよ......リダさん」
私は声を掛けられた方角に顔を向けた。
......うん?
なんで、この人は私の名前を知っているんだ?
見る感じ、透き通った肌をした、綺麗な美人だった。
けれど、私は彼女を知らない。
間違いなく初対面だった。
それなのに、私の名前を知ってるこの美人は一体?
ふと、そんな事を考えていた時だった。
「その人の目を見てはダメッ!」
不意に予想外の角度から声がした。
......え?
良く分からないが、私は目線を反らす。
「......チッ」
直後、美人は舌打ち混じりにその場から離れて行く。
......。
何がしたかったんだろう?
「大丈夫ですか、リダさん! 石になってないですよね!」
何がなんだか良く分からず、ぼーっとした顔になっていた私を前に、そこで聞き慣れた声が私の鼓膜に入って来る。
この声は、キイロか?
そんな事を考えながら、声がした方向を見ると......うむ。
私の視界には、現時点のイリVer本編だと確実にネタバレしまくってるヤツが私の近くに駆け寄って来た。
......ぐむ。
ま、まぁ......あれだ。
時間軸的に、こっちの方が早く時間が流れていると言うか、向こうはまだ一編の中盤だけど、こっちはもう二編目に入ってるからと言うか......。
と、ともかく、だ?
ネタバレが嫌な人は、九月二十四日まで読まないと言う手もあるぞ!
......と、講釈もそこそこに。
私の眼前に現れたのは、半分がドラゴンで半分は人間と言う、ドラゴン・ハーフの少女。
元々は、西にある大陸のエピダウロスと言う、ドラゴンと人間が仲良く共存している街の出身で、ここらの関係もありドラゴン・ハーフが比較的一般的な場所に住んでいた経歴がある。
ネタバレを控える為に、ここらはオブラートを包む表現になるのだが......なんやかんやあって、最終的にはイリの自宅に押し掛けて来る。
現在は、魔導大国ニイガでイリと一緒に暮らしていた筈なんだが......?
「どうして、キイロがこんな所に?」
答えたのは、ルミだ。
まぁ、知ってる人も多いだろうが、ルミの故郷はニイガであり、そこの姫様でもある。
また、冬休み中に帰郷した時、キイロとは数多くのドラマを展開しており、今いる四人の中では一番の顔馴染みだった。




