黄金島の二層目は、火山地帯【24】
「……およ? やっと来ましたか~? あ、それといよかん。これで五戦五勝な? 向こう五日分のキャンプ準備はにしゃ(お前)がやれよ?」
私達が揃って呆れている中、ようやく私達の存在に気付いたみかんが、軽くこちらの方を見て声を掛けた後、ニィ……と高慢知己な笑みをふてぶてしく浮かべてから、謎の女性へと口を開いていた。
……うむ。
どうやら、名前はいよかんと言うらしいな。
みかんの態度を見る限り、親しい存在なんだろうと予測する事が出来る。
そして……。
「ま、待ってばっぱ! これ、いかさましてね? おかしーもん、だって! 私、ここまで将棋が下手でねし!」
……びみょ~に言葉が訛っている彼女……いよかんさんの言葉から察するに、みかんの孫にでも当たるんじゃないかと思われる。
…………。
いや、待て?
みかんの孫……だと?
お前、いつも二十歳を自称しているけど、実は幾つなんだよ?
……いや、思えばみかんの場合、割りと平気で数千年前の話をしてくるからな。
実年齢など、下手をすればみかん本人も知らないかも知れない。
そう考えるのなら、みかんに孫がいても全くおかしな事じゃなかった。
ついでに言うのなら、いよかんさんが使っている言葉訛りは……恐らくクシマ訛りだ。
昨今では地元の人間ですら使う事が少なくなっているらしいが、みかんが良く使う訛りがこのクシマ訛りだったりもする。
ああ、そう言えば……確か、みかんの地元と言うか、実家ってクシマにある小さな町にあるとか言う話を聞いてたなぁ……。
その他、色々と思い出して見ると、いよかんさんがみかんの孫である事に疑いの余地が全くない事に気付く。
クシマ訛りなのは、みかんと同郷だからだ。
孫なんだから、むしろそっちの方が流れ的にも自然ではあるな。
そして、やたら親密なのも納得出来る。
理由はもう言う必要すらないだろう。
つまり、家族であるからだ。
けれど、みかんって孫が普通にいるんだなぁ……しかも、予想以上に大きなお孫さんと来た。
ここも、みかんの尋常ではない実年齢なんぞを考慮するのであれば、特段驚く程の事でもなかったりするけど、それでも少しばかり意外ではあったかな?
そんな事を考えていた私だが、問題はみかんに孫がいた事などではなかったと言う事実に直面する。
みかんに孫が居た事は、私にとっての意外ではあったが、私がこのダンジョンにいると言う事実は、みかんにとっての驚愕にすら値したであろう。
だって、理由なんか塵も芥も知らないだろうし。
「……よ、よう、みかん」
軽い口調でみかんに声を掛けていた私は、微妙に顔を強張らせてしまった。
どうしよう……みかんだって何があったんだ? って気持ちになってるよな?
つか、ういういさんにはもう事情を話しているから、遅かれ早かれバレはするんだけど……でも、会って直ぐに言いたい内容でもないんだよな……。
「……え? まぢでリダです? え? ええええっ!?」
ああ、やっぱり驚くよな?
そりゃ、立場が違ったら、私だって驚くと思うよ。
「ま、まさか……百貨店を爆破した事で多額の賠償金を支払う事になったから、手っ取り早く借金をなくす為に、わざわざ黄金島くんだりまで来てるとは……」
……って、なんで知ってんだよっっっ!?
もう、見事なばかりにドンピシャな事を言ってたみかんに、私は思わず絶句してしまう。
「いや、ばっぱ……そのボケはさっきやったし」
しかも、結構前にも同じ事をしたのかよっ!
そして、それがボケであってボケではないと言う残念な顛末!
きっと、みかんも冗談で作った設定(?)だったのかも知れないけど、ビックリするぐらいに全部大当たりなんだよ、それ……。
「…………」
もう、言葉が出ないよ、私。
果たして、みかんは物凄ぉ~く気まずい顔になっていた。
……おい、やっぱり本気のボケだったのかよ?
それなのに、全部言い当てるとか……マジで勘弁してくんない? 私も、事情を説明するつもりではいたけど、思いっっっきり、言いにくくなったじゃないかよっっ!?
「あ~? えぇと、です? ちなみに、幾らの負債だったです? 少しぐらいなら、カンパして上げても良いですよ~?」
そこからみかんは話のベクトルを強引に変える様にしてお茶を濁して来た。
きっと、みかんなりの気遣いで、そうと答えているんだろう……いるんだろうけど、今はその気遣いすら私の心には痛く突き刺さる想いだ!
もう、スゴい居たたまれない感じなんだよ! 今の私はっ!?
てか、もう良いよ! 面倒だよ! 微妙な空気になったついでに、開き直ってやるよっっ!




