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黄金島の二層目は、火山地帯【20】

 そう言えば、確かにシズ1000は言っていた。


 一億七千万飛んでお茶菓子一袋分!……と。


 本当に、お茶菓子が宝箱に入っているのかよっ!?

 つか、お茶菓子一袋分の金じゃないのかよっ!?

 普通にこんなのを宝箱に入れるんじゃないよ!


 伝説のお茶菓子とか言う、普通に考えてもおかしな表現としか他に形容する事の出来ない謎のお茶菓子は、文字通り本当に宝箱の中に現物が入っている、伝説の海苔煎餅だった。


 そのまんま過ぎて草が生えてしまう……つか、なんで海苔煎餅?

 そして、この煎餅の何処に伝説感があったりするんだろうか?

 見た感じ、ただの海苔煎餅にしか見えないのだが?


「う~!」


 シズ1000は、瞳をキュピ~ン☆ っと光らせながらも海苔煎餅を右手に持ち、あたかも伝説の武器を手にしたかの様な勢いで天高く掲げた。


 いや、それ海苔煎餅だぞっ!? ただのお茶菓子だぞ? 

 なんで伝説の武器みたいな扱い方してるんだ? マジな話っ!?


「おおおおおっっ! 煎餅なんだおぉぉぉっ!」


 直後、アリンが猛烈なテンションで叫ぶと、テンションそのままに素早く宝箱へと向かい、伝説の海苔煎餅を手に取ってはシズ1000と同じ様に天高く掲げていた。


 二人揃って、瞳をキュピ~ン☆ と光らせながら。


 もはや、全力でボケている様にしか思えないぞ……。


「……お茶菓子から先に回るなよ」

  

 他方、げんなりした顔になっていたういういさん。


 冷静に考えれば、シズ1000がナビをしているのだから、シズ1000の欲しい物から順番に回るのは自然の流れだったのかも知れない。


 だからと言うのも変な話だが、あまり驚いた様子もなく、少しだけ呆れた顔をみせるだけにとどめるういういさんがいた。


 恐らく、シズ1000がお茶菓子にかなりの興味を持っていた事はういういさんにも分かっていた事だし、理解もしていたのだろう。

 ……華麗にスルーしていた様にも見えなくはなかったんだけどさ。


 よって、遅かれ早かれ、伝説のお茶菓子を取りに行くつもりはあったに違いない……多分。


「う~っ!」


 伝説のお茶菓子……海苔煎餅を手にしたシズ1000は、そこからパリッ! っと一口食べて見る。


 次の瞬間、シズ1000の瞳が潤んでいた。

 どうやら、格別の味がしたらしい。


「うぅぅぅっ!」


 パリッ! パリッッ!


 そこから、むさぼる様に食べて行くシズ1000。


「お、おぉぉぉ! 美味しいお! 美味しいぉぉぉぉっっ!」


 他方のアリンもスーパーテンションで、海苔煎餅を平らげていた。

 

 …………。


 そんなに美味いんだろうか?


 しかし、私としては宝箱の中にあった海苔煎餅を口にしたいとは思えない。


 いや……だって、宝箱の中にあったんだぞ?

 どういう訳か、袋でしっかりと包装されている見たいだけど……普通に考えたら、恐ろしく劣悪な保存状態だと思うんだが?


 そんな、得体の知れない物を、好きこのんで口にしたいとは思えない私がいたのだが、


「あ、これ……マジで美味いな」


 こんな事を言っているのはういういさん。

 

 折角手に入れたんだからと、食べているらしい。


「え?……なんでしょうか、これは? 煎餅独特の食感を損なわず……しかし、米の甘味を全力で引き立たせているのに、醤油の味が絶妙に絡んで来る……いや、ここに海苔が加わる事で奇跡の融合を見せている……愕然となってしまうまでに恐ろしい煎餅です!」


 ユニクスに至っては、真剣な顔で食レポまでしている始末。


 ……つか、私以外はみんな食べてんのかよ。


 どうして、ダンジョンの中にあった様な良く分からない物を平気で食べる事が出来るんだろうねぇ……コイツらは。


「か~たまも食べるお~?」


「あ、うん、食べる」


 ……まぁ、私も食べるんだけどさ。


 最初は気が進まなかった私ではあるが、周囲の面々が見せる態度をみていると……なんて言うかさぁ? 食べたくなるって言うか……そんな感じだった。


 アリンからニコニコ笑顔で手渡された煎餅をパクリと口に入れる。


 見た目は普通の煎餅だったが…………なんだこれ? 本当に煎餅か?

 いや……確かに煎餅ではある……普通に醤油味だし、海苔とかも普通だし、おおよそファンタジーな異世界では逆立ちしても出て来ないだろ? って言いたくなる様な味ではあったんだが、根本的な食感と言うか食べた感覚が違った。


 一言で言い表すのであれば、煎餅革命と表現すれば良いのだろうか?


 こんな煎餅が、世の中にあったんだなぁ……と、思わず唸ってしまいたくなる様な美味しさが、口の中一杯に広がって行く。


 そして、お茶が恋しくなる味だった。

 

 だからと言うのも変な話はあるんだが、


「う!」


 すかさず、シズ1000がお茶を用意して来る。

 うむ! この気遣いが、地味に嬉しいぞ!

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