黄金島の二層目は、火山地帯【19】
「う~!」
直後、再びシズ1000がお団子に文字を浮かばせる。
浮かべた文字は……一億七千万と伝説のお茶菓子一袋分!……だった。
こっちもこっちで、さりげなく『伝説の』を、お茶菓子の枕詞として追記していた。
そんなお茶菓子なんかあるのか?
よしんばあったとして……それ、宝箱の中に入っていると言う事だろう?
普通に食べるのか……?
いよいよおかしな事をほざいてくれるシズ1000。
そして、一億七千万よりも伝説のお茶菓子の方を大きく主張したいシズ1000。
だって、二回目の表示では『伝説のお茶菓子』の部分だけ、赤文字になっていた物。
「そうかそうか、OKだシズ1000。一億七千万で当たっているんだろう? 相変わらず優秀だな?」
「うぅぅぅぅぅっっ!」
しかし、それでも一億七千万の部分しか見てなかったういういさんに、シズ1000がぷんすか怒っていた。
お団子には……だから、伝説のお茶菓子があるんだ、う! そっち優先にしとけよ、あほんだらぁっ!……と書かれていた。
しかし、そんなシズ1000のお団子文字も、しれっとスルーしてみせるういういさん。
きっと、もう……ういういさんには金の事しか頭にないんだろう。
そして、金の為であるのなら、シズ1000の悪態なんぞ、全く気にもならなかったに違いない!
何て面の皮だ……本気で金の亡者ではないか。
そして、宝箱に入っているだろうお宝の金額が分かった途端に、ういういさんの顔色まで変わった。
もう、完全に本気モードと言う感じの顔だった。
しかし、それは顔だけに至らない。
少し進むと、悪辣なトラップが用意されていたりするのだが、まるで何もなかったかの様に解除して行くういういさん。
途中、普通にスタスタと歩いているだけだったので、もしかしたら欲に目が眩み過ぎて眼前のトラップに気付けていないのかな? なんて思い『危ないぞ、ういういさん!』と、叫ぼうと思ったのだが……私の口が動くよりも先にトラップが解除されていた。
物凄い早業だった。
トラップを専門とした腕利きの冒険者であったとしても、ここまで呼吸をするが如くアッサリとトラップを解除してみせる人間も珍しい。
どうやら、ういういさんは伊達に多くの高難度ダンジョンを踏破していないらしい。
そして、超一流の腕前は剣だけではなかった模様だ。
そう考えると……ういういさんって、もう剣聖って感じじゃないよな……いや、実際に剣の腕前もレジェンドクラスだから、剣聖と言う表現でも間違ってはいないんだが。
ここから先は、ういういさんが最前衛に立って先に進んでいた。
やや早足の状態で先を急ぐういういさんは、途中で遭遇したモンスターを瞬殺しつつも……その残骸には全く目もくれず……。
「え? これ、単体で百万? よし、頂こう!」
……なんて事はなく、金目の物はしっかりちゃっかり剥ぎ取りながらも進んで行った。
ただ、さっきとは違って剥ぎ取り速度も目で見て分かる程に早くはなっていたし、進行速度も格段に上がっている。
恐らく、ここらのエリア一帯にある宝箱の全てを取り終わらない限りは絶対に次に進む気はないんだろう。
私としても借金返済があるから、それはそれで良いとは思うんだけど……それがなかったら、そこまではしない気がするんだよなぁ……。
狙った宝箱は全て頂く!……と言うのがういういさんの基本なんだろう。
本当に良い性格してるよ。
「う~!」
繁雑な迷路が続く中、お団子にアンテナを搭載している謎生物のシズ1000が的確なナビをして行く。
「よし、そっちだな!」
そして、ういういさんも素早くナビに従う形で、複雑な迷路をズンズン進んで行った。
二人の呼吸もバッチリと言えた。
結果的になってしまうのだが、
「我々は、ただ後ろで歩いているだけで終わっている様な気がしますね……」
苦笑混じりに言うユニクスの台詞通りの状態になっていたりもする。
まぁ……楽だから良いけど、これはこれで少し申し訳ない気もするなぁ……。
なんと言っても、宝箱から得た収入の半分は、私達の懐にも入る予定だったからだ。
後ろから付いて来ているだけで半額貰うとなれば……うぅ~むぅ。
やっぱり、少しは仕事をしなくちゃ行けない様な気がして来たんだが。
内心、このままういういさんが独断で進んでしまったのなら、ういういさん本人にも取り分がおかしいと激しく非難されそうで怖いと思っていた私がいた頃、
「お? あれか?」
トントン拍子で進んでいたういういさんが宝箱を見付ける。
うぅむ。
如何にもお宝が入っていそうな……そんな、豪奢な宝箱だった。
しかも、台座に乗っていたりする。
一体、どんな宝が……?
「う~!」
直後、シズ1000が叫んだ。
果たして、台座の上に乗っていた、豪奢な宝箱の中に入っていたのは……。
「海苔煎餅……?」
……キラキラ光る煎餅だった。
……って、お茶菓子かよっ!?




