リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【5】
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謎の暗殺者が、トウキの街を目指してやって来ていると言う不穏な情報を耳にしてから、数日が経過する。
周囲に主だった変化はない。
私自身も、特に襲われる様な出来事もなく、ただただ時間だけが経過して行く。
もしかしたら、単純にこちら側に向かっているだけであり、その目的は私ではなかったのかも知れない。
冒アカは、飽くまでも予測されたルートの一つであり、必ずしもここにやって来るとは限らないからだ。
しかし、そこを差し引いても平穏過ぎる。
まるで嵐の前の静けさであるかの様に。
情報を聞いて数週間が経過。
流石に何かあっても良いんじゃないかと、少し考えてしまう。
対象が私ではなかったとしても、何らかのアクションがコチラ側に入って来ても良いのではないか? そうと私は考えたのだ。
けれど、その手の情報は全くと言って良いまでに入って来ない。
トモヨさんの所に行って聞きにいったユニクスもいたのだが、現時点では全くの徒労に終わっている。
このまま、何も無いまま終わるのだろうか?
それならそれで、私は一向に困らない。
暗殺者風味のヤツがこのカントー帝国にやって来て、物見遊山に観光して帰って行った......これだけなら、誰も何も困らないからだ。
そこから一ヶ月程度の時間が経過する。
もう、流石に何も起きないと思っていた。
ついでに言うのなら、結果的に私を狙っている謎の転生者すら、この一ヶ月もの間になんのアクションも起こさないと言う、不可思議な現象が起こっていた。
そもそも、こいつらは私を本気で殺そうと考えているのか怪しい節もある。
その位、私に何もして来ない。
一体、何がしたいのだろう?
もしかしたら、こいつらの目的は私を殺す事ではなく、私を学園に閉じ込めて置きたい事なんじゃないかと、地味にひねくれた事を予測するまでになっていた。
私を学生にしておけば、確かに会長としての仕事は出来ないし、よしんば頑張ってやろうとしても、かなりの制限が生まれてしまうからだ。
もういっそ、このまま学生するのをやめて、会長に戻ってしまおうか?
そんな事すら、私の選択肢として浮かんでいた頃、それは起きた。
「たまには、街に繰り出すのも良いね~」
相も変わらず、花丸笑顔を凛々に描き出していたルミ姫様と私は、冒アカから差ほど離れてない市街地の通りを一緒に歩いていた。
トウキと言う街は大陸最大の都市だけあり、バカ見たいに大きい。
比較的郊外にある住宅街であっても、下手な地方都市の中心市街地よりも街中だ。
逆に言うと、どこに住んでいても衣食住に困る事がない。
それだけ色々な店が、当たり前の様に林立しているからだ。
都市開発と言う一点だけを見れば、ここまで発展している街は稀有と言えるだろう。
まぁ、そこはさておき。
その日、私はいつもの四人で近所の大通りまで散策に出ていた。
理由は特にない。
強いて言うのなら、暇なら皆で買い物でも行かない?
......と言う様な提案をルミがしたので、この提案に乗ったいつもの四人が集まり、アチコチ歩いて回っていたと言う代物。
別段、特筆する様な物もないな。
不穏な情報を入手してから一ヶ月も経過していた事もあり、私を含めた四人はすっかり失念していたのた。
何処でどんな危険が潜んでいるか分からないと言う現状に。
「あ、そうだ」
そこで私は思い付いた感じで声を出す。
今日は私の愛読書の発売日だった。
一回、気にいると毎回発売日に買ってしまう。
「ちょっと、欲しい本があったから、先に行っててくれ」
私はルミとフラウ、ユニクスの三人に軽くそうと答えてから、一人で書店に向かおうとした。
別に怪しい本を買う訳ではなかったんだが、すぐに購入して戻って来るだけの行動をわざわざ全員でやる必要もないだろうと思っての行動だ。
ついでに言うのなら、時刻はもうお昼に差し掛かろうとしている。
みんなでランチタイムと言う流れだった。
そんな流れで、空気を読む事なく書店に行こうとしてる私も中々の大概ではあったんだがな。
ただ、逆に言えばみんなが昼食を取っている間に用事を済ませれは、その後はスムーズになるからと思っての事だ。
「本? まぁ、良いけど? 別に後でみんなで行っても良いんじゃない? 私も欲しいのあるし」
ルミはキョトンとした顔になって言う。
「? そうなのか? じゃあ、ルミは一緒に来るか?」
「じゃあ私も行きます!」
なんの気なしに言うとユニクスが何故か対抗意識を燃やして叫んで見せる。
そうなれば、結果的にボッチとなるだろうフラウも行くしかない。
「......まぁ、別に構わないけどさ」
でも、普通に欲しい本を買い行くだけだぞ?
ぞろぞろ四人で行く場所なのか? 書店は?
心の中で地味にツッコミっぽいのを入れながら、私達は近くにある書店に向かった。




