【5】
「本当なんだな?」
「何かあったんですか?」
未だ疑う素振りの彼に私はとっても不思議そうに聞いて見た。
取り合えず言おう、少年。
リダさんは寂しがり屋なのだ!
ボッチは嫌なのだ!
だから、そう言う事にしといてよ、学食のパン上げるからさ!
「……特になにもない。知らないのなら、そっちの方が幸せだ」
少年は少し悩んだあと、私に言う。
中々、人間出来ているじゃないか!
確かに、こんな面倒な事件は知らない方が良い。
巻き込むわけには行かないからな。
まだ若いのに偉いなぁ………リダさん、気にいったぞ!
「所で、まだ名前を聞いていなかったのですが、聞いてもよろしいですか?」
「そう言えばそうだったな」
にっこり笑顔の私に少年はハッと気づいた様な顔になった。
「パラスだ。パラス・ティタン」
「パラスさんですか。わかりました!」
言って、私は彼ことパラスに右手を差し出した。
程なくして、パラスも手を差し出して来る。
がっちり握手。
こうして、私のボッチはなんとか回避されて行くのだった。
取り合えず、友達ゲットだぜ!
「所で、だ?」
「なんかありました?」
「あれは、いつ居なくなるんだ?」
指を差した先には……ああああ!
「還すの忘れたぁっ!」
ガーン! って顔になってしまった。
そこには、まだ鳳凰が、大空を舞っていた。
いや、そこは空気読んで還ろうよ。
「す、すぐに還らせますんで!」
慌てて鳳凰へ帰還する様に求める。
「もういいぞ、フェニぞ~。ありがとうな」
『なんだと? 用もないのに呼んだのか?』
「いや、用はあった。けどもう終わった感じかな?」
『何をした?』
ああ、わかってないのか。
恐らく、出現した瞬間に的が消滅してたから、向こうからすれば用事がなんだったのか分からなかったのだろう。
「お前がここに来た。それで万事解決!」
『次は、もっとマシな用件で呼び出せ』
少し怒って、鳳凰は消えた。
基本、良いヤツなんだけど、頭堅いんだよねぇ、フェニぞ~。
真面目なのは悪い事じゃないんだけどさ。
「しかし、お前は何者なんだ?」
「何者? 転入生ですかね?」
枕詞に美少女を入れてもいいぞ?
「そこは分かるが……まぁ、良い。ともかく魔法が得意だと言う事はわかった」
魔法はどっちかと言うと苦手だぞ?
「ちょっと使えるだけですよ。些末な物です」
「謙遜なのかも知れないが、あんな物をやられた後に、そんな事を言われたら嫌味に聞こえるぞ」
パラスは少し引いていた。
う、嘘ではないぞ……私の知り合いにみかんと言う変人がいるのだが、そいつはこんなの朝飯前だぞ。
「まぁ、しかしだ? ここに転入して来たと言う事は、冒険者を目指してるんだろう? そう考えれば相応の実力があってもおかしくはない。確かにお前の様な人間もいなくはないからな」
………え? いるの?
それはリダさん驚きだ。
もし本当なら、是非、卒業後は中央本部に就職して欲しい。
「へぇー。会って見たいですねぇ。何処にいらっしゃるんですか?」
「………いや、すまない。今のは聞かなかった事にしてくれ」
パラスは、いきなりテンションを下げて言う。
………ああ、なんとなくわかった。
そいつ、死んでるだろ?
「こちらこそ、すいません。なんか聞いてはいけない事を聞いてしまったみたいですね」
「いや、そうじゃないんだ。けれど、そう言ってくれるとありがたいかな」
苦笑した私に、パラスも笑顔を見せた。
そこから少しした所で、周囲にいた生徒の何人かが、私とパラスの前にやって来た。
「おいおいパラス。抜け駆けはないぜぇ?」
まず、最初にやって来たのは、いかにもチャラそうなクソガキ……いや、少年。
名前は聞いてない。
けど、聞かなくても良さそうでもある。
ま、チャラ男でいいかな?
「あ、あの! 師匠と呼んでもいいですかっ!」
次にやって来た少女は……なんだろう? おかしな娘だった。
そりゃ、あたしゃ友達は欲しかったんだけど、弟子はいらないぞ。
「えぇと、リダと呼んで下さい」
「えぇっ! そ、そんな! 畏れ多い!」
私は何様だよ………。
少女は大袈裟に後ずさりしてた。
どうでも良いが、クラスメートだぞ? 私は?
「貴女と私は同じクラスの人間です。普通に友達になるのであれば、全然問題ないと思いますよ?」
「と、友達ですか! そ、そんな無理です!」
私の友達になれないのかい!
今のはリダさん、結構傷付いたよ、普通に悲しくなったよ!
「そうですか………残念です」
「ああ! 違いますよ? 私の様な雑魚が友達とか、リダ様に申し訳がないと思っての事です!」
すごいアセアセしながら言っていた。
いや、雑魚とか思ってないし、そもそもリダ様になってるし、なんであたしゃ同級生に様付けで呼ばれてるんだよ。