黄金島の二層目は、火山地帯【17】
これで、よし……っと。
じゃあ、次は全員で崖の上に登ろうか。
メモを置いた私は、再びボタンを押して崖の上で待っているだろうアリンの元へと向かおうとした。
そこら辺で気付いた。
「……どうせ私なんて、そこらのモブキャラと大差ない役割しか持っていない脇役ですしぃ……?」
すっかり落ち込んでいたユニクスが、どんより雲を頭上に浮かべた状態で体育座りしていた事に。
まぁ……なんて言うか、今回は少し同情しない訳でもない。
ういういに励まされた事で、ようやく自分らしさと言う物を思い出し、本領発揮しようと一念発起した直後にアリンの横槍が入って、活躍の場をゴッソリ全部持って行かれたのだから。
最終的には、みんなが各々の意見を言い合っていたりもするんだが、その中にユニクスの言葉がやって来る事は終始なかった。
多分、アリンの横槍が入り、色々とまぐれもあったけど大活躍を見せた事で、ユニクスの精神が完全に崩壊してしまったのだろう。
そして、以後はみんなから存在すら忘れ去られた状態のまま、体育座りをしているだけで話が進んで行き……現在に至る。
なんとも悲し過ぎるユニクスの惨状には、さしもの私も慰めたくなってしまう。
「ユニクス、大丈夫だ。本来であるのなら、この謎を誰よりも早く解く役をやっていた……アリンがやった事は、偶発的な産物が色々と雑多に混じっていたからな?……けど、お前なら、そんな事はしないだろう?」
「……ふふ、良いんですよリダ様。私の様な村人その1程度のモブ力しかない存在に、その様なお気遣いをしなくても」
村人その1程度のモブ力って何だよ?
「どうやら、私はこれまでの様です。このまま私は村人その1として、この場で体育座りをして、その生涯を閉じようかと思います」
お前の人生、それで良いのかっ!?
つか、高難易度のダンジョンで体育座りしている村人その1って言う時点で、大きな矛盾がある事に気付いた方が良いと思うぞっ!?
「何を言ってるんだ、ユニクス? 私にはお前が必要だ。くだらない事を言ってないで、さっさと行くぞ?」
ツッコミを入れる気になれば、無尽蔵に沸いて来そうな勢いでぼやきを口にするユニクスに、私は半ば強引に話を終わらせる形で声を吐き出した。
……その瞬間。
「私は、リダ様にとって必要ですか?」
ユニクスはピクンッ! っと、敏感に反応した。
…………。
なんだろう? この、名状し難い悪寒は……?
ここで素直に『そうだ!』と言えば、ユニクスは素直に従うとは思う。
……そう……それで全てが事足りる筈だ。
しかし……しかし、ここで肯定の言葉を口にした日には、何か大きな間違いへとばく進してしまう様な? そんな、珍妙な不安が私の精神を大きく駆け摺り回っていた。
……ぐ、ぐぐぅ……むぅ。
ヤバイ、言いたくない。
幾ら、方便的な意味合いがあったとしても、ここで『お前が必要だ!』と、再び公言するのは、言葉の地雷を自分から踏みに行く事と同義語な気がするっ!?
「どうしたんですか、リダ様? ほら、ちゃんと言いましょう?『私はお前が必要だ。大切な存在で、最愛のまなびとだ!』とっ!」
「そこまで言ってないわっっ!?」
「良いんです! 一言、そうだ! と頷いてくれれば! 後は、私の脳内で勝手にそうと変換されるのですからっ!」
「尚悪いわぁぁぁっっ!」
ダメだ……コイツには危険過ぎる台詞だ!
くそ……何か、他にそれっぽい言い回しはないか?
「次、挽回すれば良いだろう? リダ会長は、ユニクスさんにまだチャンスを与えてるんだよ?」
この調子だと、ずっとレズのターン! になりそうな危機的状態になってしまうと、かなり焦る私がいた所で、ういういさんが真顔になってユニクスへと答えていた。
ナイス! ナイス過ぎるぞ、ういういさん!
そのフォロー力は、称賛に値する!
「チャンスを……ですか?」
「そうさ? 中々の大物だと思わないか? 普通、ここまで失敗したら、途中で見捨てられても文句は言えないぞ?」
「……う」
「しかし、リダ会長はそれでもユニクスさんを見捨てない……何でだと思う?」
「……そ、それは……」
笑みのまま言ったういういさんに、ユニクスは少しだけ口ごもる。
すると、ういういさんはやんわりと微笑みながら口を開いた。
「ユニクスさんだって分かってるだろ? リダ会長は、なんだかんだでユニクスさんを信じてるんだよ? その実力をしっかりと認めている。だから、まだユニクスさんに挽回のチャンスを与えようとしてる」
いや、実はそこまでは考えてなかったんだけどね?
私的にはそう言いたい所だったけど、ここでそんな事を言ったら、話が余計にこじれて面倒な事になってしまう。
仕方ないから、そう言う事にして置こう。




