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黄金島の二層目は、火山地帯【16】

 そして、あのマグマが『触る事が出来る』と言う事になれば、


「あのマグマ、使えそうだな?」


 私は笑みを作りつつも、ういういさんへと口を開いて行く。


 マグマの上に乗る。


 ……これも、冷静に考えるのなら有り得ない話ではあった。

 仮に触る事が出来るマグマであったとしても、童話の世界じゃあるまいし、物理的に見て人間を吹き飛ばすだけの噴射力を持っている物の上に立つ……なんて、正気の沙汰ではない。


 例えば、これがマグマではなく噴水の様な物だったとして?

 噴水の力だけで持ち上げられる程の噴射力があったら、どうなるだろう?


 エレベーターに乗る要領で、上にグングンあがるのか?


 答えはノーだ。

 超高圧の水圧に吹き飛ばされるのがオチだろう。

 場合によっては下からの水圧で、スプラッタな惨状を見る羽目になる。


 簡素に言うのなら、水のレーザーみたいなのに当たって、身体がスプラッタしてしまう訳だな?


 童話や寓話の様な物の様に、勢い良く噴水の上に乗って行ける様なメルヘン状態であるのなら良いんだが。


 そうなると、おいそれと行動する訳にも行かないなぁ……。


「お~? あれ、崖から出て、天辺までドドォ~ンッ! って上がってりゅから、あれに乗れば良いお~」


 どうした物かと思案に暮れる私がいた頃、アリンが単純明快な答えを私に提案して来た。


 うんうん、分かる……分かるよアリンちゃん。

 私もシンプルに物事を考えるのなら、それが当たりで良いと思ってはいるんだよ。


 だけど、これが『絶対に安全』と言う保証も確証もないじゃない?


 実際に乗ろうとしたら……実はトラップの一種で、見事にスプラッタしちゃったら目も当てられない訳だよ!


「言いたい事は分かるぞアリン。確かにそう考えるのが筋と言うか……流れからしてそうだな?……って、あれ? アリン? アリンちゃん?」


 私は、しっかりと安全を確保してからにしようと言う説明をしようとアリンに口を開いたのだが……その言葉を答えていた頃には、既にアリンの姿が忽然と消えていた。


 相変わらず、三歳児の行動力には舌を巻く。

 自分の思うまま、勝手に行動して、勝手に迷子になってくれちゃう物だから、か~たまとしてもマジで困ったりするんだよ!


 こう言った所は、少し自制してはくれない物か?……なんぞと嘆息混じりに考えていた頃、


「これで行けるんだお~っ!」


 再びボタンをポチッ! っと押したアリンが崖をひた走り、


 シュバァァァァァァァァッッッ!


 数秒後に吹き上がるマグマの上に乗るアリンがいた。


 …………。


 私の脳波が止まった。


 きっと、この瞬間だけ脳波を測っていたら『ピーッ!』って感じの状態になっていた事は間違いないだろう!


 だから、なんでお前は勝手な事をするんだよっっっ!?


 余りの光景に、思わずショック死寸前の精神状態になってしまう私がいた頃、アリンは童話の住人になったかの様な勢いでマグマの上に乗り、そのまま崖の上まで瞬間的に登って行った。


 そして、崖の天辺まで行った所でぴょんっ! っと軽くジャンプすると、崖の天辺に着地してみせる。


 ど、どうやら無事だったみたいだな……よ、良かった!


「大丈夫だったお~!」


 崖の上から、元気なアリンの声がやって来る。


 ……いや、だから……せめて、ちゃんと確かめてからにしなさいよ!

 か~たま、マジで心臓止まったからなっっ!?


「全く……本当に、心配ばかり掛けさせる……」


 私は思わず苦い顔になってぼやきを入れた。


 ……まぁ、無事だったなら良しとするか。

 本当に結果オーライな事を連続でやってのけたアリンに、私は呆れ混じりながらも肯定気味の台詞を心の中で呟いた。


「う~!」


 その直後、シズ1000が近くの石を拾っては何か魔法の様な物を掛けている。


 ……うむ。

 どうやら、ここにも伝言石を置いて行く様子だな?


 しかも、今回は一個だけではなく複数個の石に伝言の魔法を掛けていた。

 恐らく、一個だけでは見付からなかった時の為に、敢えて幾つかの石に伝言の魔法を吹き込んでいたのだろう。


 実際、アリンのお陰で簡単に解いてしまった内容ではあったけど、後続の集団にとってはかなり難解な場所になりそうではある。


 特に合言葉は難しいんじゃないだろうか?


 結果的には、ヒントと言うか答えが岩壁にデカデカと書かれていたりするんだが……そもそも、文字が精霊文字である時点で、精霊文字が読めない人間には全く分からない話でもあるし、何より読解する事が出来たとしても、合言葉が丸々同じだと言う答えには辿り着けないのではないだろうか?


 恐らく、次にやって来る冒険者はみかん達だろうし、私もみかんの手助けに一役買ってやろう。


 そう思った私は、合言葉を書いたメモをカモフラージュされた蓋の辺りに置いた。

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