黄金島の二層目は、火山地帯【13】
「……全く、何やってんだよ……」
直後、呆れた声音でういういさんが口を開いて来た。
どうやら、私達の一部始終をみて、やや見かねたらしい。
そこから、わんわん泣いてるユニクスの近くにやって来ると、ポンッ……と肩を優しく叩いてから口を開いてみせた。
「ユニクスさん。あんたはここの参謀だ? 良いか? 参謀なんてのは腕力なんざなくて良い」
ここまで答え、ういういさんは右手の人差し指で頭の部分を指して見せ、
「参謀ってのは、ココが良ければ、それで良いんだ」
そう答えると、ニッ! っと快活に笑った。
「…………」
ユニクスは無言だ。
まさか、ういういさんの口から、そんな言葉がやって来るとは思わなかったらしい。
私としても意外だった。
まさか、ユニクスを参謀と言う立ち位置に組み込もうとしていたなんて。
反面、ういういさんの言いたい事は割りと良く分かる。
確かにユニクスは周囲の人間を指示する事に関しては一級品だ。
勇者としての天啓を得てから以降、沢山の人間からの支持だって受けている。
こう見えて、学園では頼れる姉御肌でもあるんだ。
そして、普段のユニクスであるのなら、状況判断にも優れている。
今回のユニクスは、色々と焦っていると言うか……妙に自爆している傾向にあるが、いつも通りに平静であるのなら、誰よりも状況判断に長ける力を持っているのだ。
これらを総合的に考えるのであれば、確かにユニクスは参謀としての能力があると見て良いだろう。
でも、今回に限って言うのなら、見事にポンコツなんだよな……。
閑話休題。
「生憎、私は剣しか取り柄のないバカでね?……威張れる話じゃないが、ユニクスさんの様に学校とかで色々と勉強をした試しがない。一応、少しは通いはしたけどさ……でも、真面目に勉強なんざした事がないのさ、ははっ!」
快活に笑って、ういういさんは言う。
その言葉が額面通りであるのなら、本当に威張れた話ではないな……。
けれど、そこで横槍を入れるのは野暮ったい気がしたので、敢えて何も言わなかった。
果たして。
「オツムの出来が違う、ユニクスさんの頭に私は期待してるよ? 頑張ってくれ」
「……分かりました。精一杯頑張ってみましょう」
「ありがとう。そう言ってくれると助かるよ」
ういういさんとユニクスの中に、何やら友情めいた物が芽生えていた……様に見えた。
直後、ういういさんがチラッ……と、一瞬だけ私の方に顔を向ける。
そんなういういさんの顔は、こう言っていた。
相手をやる気にさせる……ってのは、こうやるんだよ?……と。
…………。
……うむ。
なんと言うか、やっぱりういういさんらしい。
つまり、ういういさんも早くダンジョン攻略がしたいらしい。
厳密に言うと、眼前にまで迫ったお宝を、一秒でも早く手にしたいのだろう。
結果、今の様な態度をみせた訳で。
「お~。なるほど~。これが、本音と建前か~」
しかも、今のういういさんをみて、アリンも学習してるし!
確かに本音と建前を使い分けていると言うか、良い感じに纏めてはいるけど……全部を真似ては行けないからなっ!? 自分の都合に合わせて相手の心情をコントロールする事が主目的ではないからな? そこは勘違いしては行けないぞっ!?
「アリンも、か~たまに欲しいのを買って貰う時に、本音と建前を使うお~!」
だから! そう言うのじゃないんだからねっ! アリンちゃん!
確実に間違った学習の仕方をしてしまったろうアリンを見て、私は思わず天を仰いでしまった。
本音と建前については、後で一から抜本的に教える事にしよう。
取り敢えず、この社会勉強は話をすると長くなりそうなので、今回の所はやめにして置く。
ユニクスも良い感じに立ち直ったし……アリンへの社会勉強とは言え、ここで余計な事を言うと、話がややこしくなる可能性も濃厚だしな……。
仕方がないので、話を切り上げる形を取った私達は、再び先を急ぐ形で歩き始める。
しばらく進んで行くと……。
「お~? なんだろうね~? でっかい壁がありゅよ? か~たま? しかも、すんごぉ~く赤いお~? 触ったら、アッチッチなんだお~?」
……こうと答えたアリンの言葉通りの壁が、私達の前に聳え立っていた。
一見すると行き止まりにも見える。
しかしながら、上の方を見ると……かなり高い所ではあるのだが、頂上の様な物が見える。
簡素に言うと、この岩壁は崖の様な造りになっているみたいだ。
ここからだと良くは分からないが、崖の天辺には通路の様な物がありそうな? そんな感じがする。
ふぅ~む。
すると、この崖を登れと言う事なんだろうか?




