黄金島の二層目は、火山地帯【12】
「そうか、やっぱりこの先には、これ以上のお宝が……」
シズ1000のお宝情報を見たういういさんは、顔を地味に緩めて声を吐き出していた。
なんてか……だ?
物凄くだらしないと言うか、欲に目が眩んでいる人間の典型と言うか……本当に、金が絡むと人が大きく変わるなぁ……この人。
「これは、行くしかないな!」
この調子だと、どんなハプニングが起こったとしても尚、這ってでも行きそうな勢いで叫ぶういういさんは、まだ見ぬ秘宝に胸を踊らせながら叫んでいた。
胸を踊らせると言うより、ブレイクダンス状態だな。
ここまで来ると正気の沙汰とは思えない位だぞ……。
これが狂気の笑顔ってヤツなんだろうか?……なんざと思いつつ、少しだけういういさんの人格を疑い始めながらも、私達は次のエリアへと進む事にした。
そう言えば、何か忘れている様な気がするなぁ?……なんだっけ?
……うむぅ。
分からん。
まぁ、思い出せないと言う事は、大した事ではないんだろう。
うん、そう言う事にして置こうか。
○▲◎▲○
「……私を忘れて、本当に先へと向かうなんて……」
……と、むせび泣くレズ勇者。
だって、今回のお前……割りと影が薄いって言うかさぁ……。
しばらく先に進んで間もなく、物凄い勢いで私達のパーティーへと戻って来たユニクスがいた所で、私なりの忘れ物が何であったのかを知る。
一人で勝手にいじけまくり、最終的には涙で明日も見えない状態のまま、明後日の方角へと走り去ってしまったユニクスは、
「いくら鬼の様な心を持つリダ様であっても、流石に私を一人残して、この凶悪なダンジョンに取り残す様な鬼畜な真似だけはしないと信じてたいたのに……」
更にひねくれた感情を引っ提げて、私達のパーティーに合流していた。
「まぁ……その、なんだ? 探さなかったと言うか、そもそも存在自体を忘れていた事だけは謝る。うん、ごめんな? ユニクス」
「本当に謝るつもりがあります? なんか、感情が籠ってない気がするのですが?」
ギクッ!
「そ、そんな事あるか! ちゃんと心から思ってるぞ? 多分!」
「最後の一言が凄く余計に聞こえる上に、そこが本音に聞こえるのは私だけですかねぇ……?」
相変わらず鋭いヤツだ。
……しかしながら、これがユニクスのオーソドックスな姿でもあるな。
私はしっかりと人の痛い所を突いて来るユニクスの姿をみて逆にホッとする。
今日のユニクスも、安定の通常運行だ。
「ともかく、無事で良かった」
「……本当にそう思ってます?」
ニコニコ笑顔で言う私に、ユニクスは更に怪訝な顔になって言う。
そこまで疑う事はないだろうに……。
「流石の私も、これは本音で言っている。ここでユニクスが死なれたら、フラウに一生恨まれるからな?」
「フラウが居なかったら、野放しにしてたのですね……」
「実はそうだ」
「うわぁぁぁんっっ!」
ユニクスは大声で泣いた。
……今のは少し酷かったか。
「か~たま、ユニクスを泣かせてたら、先に進めないお~? 面倒だから泣かすのをやめて欲しいお~?」
間もなくアリンが眉を捻って私へと答える。
ユニクスが泣くとダンジョン攻略が始まらないのが嫌らしい。
つまり、ユニクスが泣く事その物に関しては同情しないのね……。
「そこは、少しでも建前を持った方が良いぞ、アリン? 例えユニクスなんかどうでも良いと思っても、ユニクスを労る様な言葉を言うのが、大人の対応ってヤツだ」
「アリン、まだ子供だから、関係ないかもだお?」
確かにその通りだった!
まさか、普通に真剣な顔して正論を返して来るとは思わなかった私は、アリンの言葉に思わず面食らってしまった。
「と、ともかく……だ? ここはユニクスを慰める事にしようか?」
そうと私が言うと、泣いていたユニクスがチラチラと私の方をみている。
その姿は、如何にも私は薄幸ですと自分からアピールをしつつ……更に、慰めて欲しいなぁ? って感じのオーラなんかもそこかしこに出していたりもする。
もう、完全に露骨過ぎて草が生えてしまうのだが?
しかし、アリンに大人の対応と言う物をしっかりと見せる必要があった。
例え、今が子供であったとしても、いつかはアリンも大人になる訳だしな?
ここはビシッ! っと、大人の対応のなんたるかを、しっかりとここで学んで貰わなくては!
思った私は、完全なる建前ながらもユニクスへと優しい言葉を口にする。
「安心しろ、ユニクス! お前は役立たずではない! ただ、邪魔なだけだ!」
「うわぁぁぁんっっ!」
だが、余計泣かす結果を招いてしまった。
あれ……おかしいな?




