黄金島の二層目は、火山地帯【9】
「よくも、ウチの可愛い娘をぶん殴ってくれたなぁ?……その代償は高いぞ 100万マールでも足りないぞ?」
正直に言うのなら、1000万マールでも足りないけどな?
どちらにせよ、こう言うのは金の問題でもなかった!
だけど、ちょっとばかり金に困っているせいか、金に換算する様な事を口走ってしまう私がいた。
…………。
うむ……これは、良くないな。
なんと言うか、ういういさんにツッコミを入れる事が出来なくなってしまうではないか。
何にせよ、それ相応の報いは受けて貰おう。
覚悟は……良いか?
私はアリンを抱えたまま、右手をスゥ……とレッドドラゴンへと向ける。
同時に、
超龍の呼吸法レベル5!
補助スキルを全開で発動する。
一つ前の階層では、レベル4を発動させていたのだが……今回に限っては、更に一つ上……現時点での私が発動して、それなりに余力を残す事が出来る最大限のレベルまで上昇させてみせた。
水の精霊から貰った加護のお陰で、かなりエナジーの消耗を抑える事が出来る様になったが故に、レベル5までの発動を可能にしていたんだが……ぐぅむ。
やっぱり、今の私だとレベル5辺りが限界かな……いや、頑張って6か7と言った所だろうか?
感覚的に言うと、レベル5で以前のレベル1に相当する程度のエナジーを奪われて行く感覚だった。
そこらを考慮すると、レベル5が通常の全力、6で無理した全力、7で玉砕覚悟の全力って感じになりそうだ。
現時点での私なりに持っている全力を出す形を取った所で、
ガォワァァァァァァァッッ!
レッドドラゴンが好戦的な威嚇をして来た!
ハッキリ言おう!
「やかましいんだよっ!」
超炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォォォンッッッ!
次の瞬間、レッドドラゴンが大爆発した。
予想以上の爆発だった。
……一応、睡眠学習スキルで、夢の中では練習がてら何回か今の状態でも超炎熱爆破魔法を発動させた事があったんだが、現実で使うと、予想以上の火力がある事に気付かされるな。
爆破されたレッドドラゴンは、爆風に吹き飛ばされる形で後方へと飛んで行き、グシャッ!……っと、嫌な音を立てて壁に激突していた。
爆風の衝撃ダメージと、岩壁に衝突した時のダメージのダブルパンチになってしまった模様だ。
更にぶつかった岩壁からバウンドし、百メートルは飛んで見せた所で、レッドドラゴンは、ようやく止まった。
それにしても、このダンジョンって異様に頑強なんだなぁ……発動の瞬間、周囲に大きなクレーターの様な物が出来上がっていたんだけど、一分もしない内に、元の状態に戻ってたりもするし。
レッドドラゴンが岩壁に衝突した時も、大きなひびの様な物が生まれていたみたいなんだけど、そのひびも地面と同じ程度の時間で何事も無かったかの様に修復されていた。
そう考えると、ここのダンジョンを作成したダンジョンマスターは、かなりの実力者……と言う事になるんだろう。
自分で言うのも変な話だが……さっきの魔法を街中で使ったら、半径数百メートルは何も残らないんじゃないかと思う。
そこらを考えるのなら……うむ、この魔法は使い所を誤ると、大きな借金を背負う事になりかねない危険な魔法でもあるな。
「……嘘だろ?」
……とは、ういういさんの言葉。
ういういさんは、ポカンとなった状態のまま、しばらく倒れて動かないレッドドラゴンを見据えていた。
……ふふん。
どうだい、ういういさんよ?
アンタの実力もかなりの物だけど、私だってあれから色々とパワーアップして来たんだ。
もう、過去の私とは比較にならないまでの実力を持っているんだぞ?
少しだけ心の中でどや顔になっていた私がいた時、
「元から化け物だとは思っていたけど……ここまでかよ」
化け物は言い過ぎだから!
思わずツッコミを入れたくなる様な台詞を、かなり真面目な顔をして言っているういういさんの姿があった。
こ、こんな……綺麗で可愛い女の子を捕まえて『元から化け物だと思っていた』はないんじゃないですかねぇっ!?
確かに、かなりパワーアップしているとは思うけど、ちょっと傷つくから、やめてくんないっ!?
私的にはちょっと不本意な気持ちが何かと先を言ってしまう様な台詞を……しかも、真顔で言っていた為に、ついつい反論めいた言葉を口にしようと考えたりもするが……やめた。
なんと言うか、コミカルさがなかったんだ。
同時に、悪意から来る言葉でもなかった。
つまるに、ういういさんは畏敬の念を持って私を表現したのだ。
大した化け物だ……と。
これはこれで別の表現にして欲しい所ではあるんだが、私を尊重しようと言う念がある事だけは認める。
だから……うん、そうだな……今回はツッコミを入れないで置こうかと思うよ。
本当は、そんな風には見て欲しくはないんだけどなっ!?




