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黄金島の二層目は、火山地帯【8】

 お、おかしいな?……わ、私なりにフォローをした筈だと言うのに……。


 涙で明日も見えない勢いで泣きながら全力疾走してたユニクスに、私は少しばかり焦りながらも、その光景を見据えていた。


 周囲にいるモンスターは、ユニクス単体では少しばかり荷の重い相手ばかりだから、正直私としても心配になってしまう所ではあるし、可能であるのなら連れ戻しに行きたい所でもあったんだけど、


「ふぁっ!? なにこのドラゴンッ!? つ、つおいお~っ!」


 事態はそこまで悠長に構えてはいられなかった。


 迷走するユニクスが、明日ではなく明後日の方向へと走り去ってしまった一方で、アリンとういういさんの二人は、レッドドラゴンとの苛烈な攻防戦を繰り広げていたのだ。


 ユニクスと話をしていた関係もあって、詳しい戦況を見る事が出来なかったんだが……どうやら、あまりかんばしくはない模様だ。


 アリンの表情には、予想以上に強いレッドドラゴンの強さに、少し焦りの色合いが含まれていた。


 生まれた時から天才的な能力を誇示していたアリンだけに、自分と同格ないしそれ以上の相手と戦う事なんて滅多にない。

 強いて言うのなら、前回の上位魔導師アークウィザードの試験時に戦う事となった人工邪神が、アリンの能力を上回るだけの強さを誇示していたが……まぁ、すぐに私と交代していたからな。


 今回に関しても、苦しい様なら直ぐに私と交代するつもりではいるんだが。


 他方のういういさんは、まだ顔に余裕があるな。


 恐らく、これは場数の差と言う所だろうか?

 実力的には、アリンとういういさんは、そこまで大きな差があるとは思っていない。

 だが、アリンとは異なり、様々な修羅場を潜り抜けて来たと言う、大きなアドバンテージがある。


 何事も経験が大事と言う事だろうか?

 緊迫した攻防戦の中でも、まだ慌てる時間ではないとばかりに平静さを失わずにいられるその姿は、私としても頼もしくみえた。


 ……そして。


「……ん? あれは?」


 ういういさんが何かに気付いた。


 何に気付いたのかは、私にも良く分からなかったが、恐らくレッドドラゴンを倒すに当たって、有用な方法の様な物を見付けたのではないかと予測出来る。


 ここもやっぱり経験の差かも知れないな?

 戦闘の最中であっても、しっかりと周りが見えている良い証拠とも言える。


「なるほど……つまり、紅蓮の炎は頼もしく……ってか」

 

 何かに感付いたういういさんは、ニィ……っと笑みを漏らして呟いた。


 ふむ、岩壁のヒントが、ういういさんにとって大きなポイントになったのか。


 すると……ああ、なるほど。


 良く見ると、ドラゴンの後方に紅蓮の炎が渦を巻く形で、ゴウゴウと燃えているのが分かる。

 ういういさんは、この炎に何らかの活路を見い出す事が可能だと考えたのだろう。


「アリン、後ろだっ! 後ろにある炎の渦に、コイツを近付けさせるんだ!」


 直後、ういういさんは近くにいたアリンへと叫んでみせた。


 ああ、やっぱりそうなるのか。

 きっと、私もういういさんと同じ立場にいたのなら、アリンへと似た様な事を言っていたに違いない。


「お? 近付ける……はぶっっ!」


 ……っ!?


 次の瞬間、アリンはレッドドラゴンの尻尾によってしたたかに吹き飛ばされた。


 ういういさんに声を掛けられた事で、注意がレッドドラゴンから反れてしまったアリンは……次の瞬間、ドラゴンの尻尾アタックをモロに喰らってしまったのだ。


「ア、アリンッ! 大丈夫かっっ!?」


 物凄い勢いで飛ばされていたアリンを素早く飛ぶ形でキャッチした私は、胸元にアリンを抱きかかえてから口を尋ねてみせる。


「か~たま……痛いよぅ~」


 アリンは涙目のまま、私に答えた。

 見れば頬を痛打し、見事に腫れ上がっている…………くそっ! 大事な愛娘になんて事をしてくれるんだ? あの糞ドラゴンはっ!?


「よしよし……痛かったなぁ? ごめんなぁ? か~たま、ちょっとユニクスを慰めてたら遅くなっちゃってなぁ?」


 私は穏和に微笑みながらも、ぶたれた頬の部分を優しく撫でながら声を返してみせる。

 治療魔法も同時に発動させていたので、アリンの頬にあった腫れも見る間に引いて行くのが、私の目にも見て取れた。


 よし、これで元の可愛いアリンちゃんに戻った!

 

 私は愛娘の頬が綺麗になった事を確認し、内心でホッと安堵の息を漏らす。

 治療魔法で簡単に治る事は分かってはいた物の……しかし、それでも自分の娘が痛がる姿を見るのは、心情的に苦痛だった。


 そして、途方もない怒りを覚える。

  

 やってくれるよ……本当になぁ? 

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