リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【4】
「困ったと言えば、少し面倒な情報が入っております」
残念勇者は、そこで思い付いた様に言う。
「実は、トモヨさんからの情報で......高額賞金首にもなってるだろう二人の暗殺者らしき人物が、カントー帝国の国境付近で確認されたとの事です」
「......ほー」
それは穏やかではないな。
情報元が、近衛兵長のトモヨさんなら、かなり信憑性の高い案件だな。
「暗殺者ですか......怖いですね」
ユニクスの言葉を耳にして、ルミが生唾を飲み込む感じで声を返していた。
今の話が本当であれば、もうこの近くにその暗殺者が滞在している可能性もある。
物騒な話だなと思ってるのだろう顔をしていた。
他方で、フラウは比較的余裕のある表情と態度を見せた。
「ま、暗殺者が来ようと邪神が来ようと、私は別に構わないかな? こっちにはそれ以上の強者と言うか、化物が二人もいる訳だし」
来るなら来い! とでも言いた気な勢いで、威勢良く豪語してたフラウ。
大したインパクトの無い胸を大きく張っていた。
小さいけど大きく張っていた。
ま、なんにせよだ?
そう言うのを他力本願と言うんだぞ?
「こら、フラウ! 違うでしょ!」
間もなくユニクスが眉を釣り上げてフラウを注意する。
うんうん、そうだよな?
そう言うのは、自力で何とか出来る様になってから言う物だ。
無い胸を張る場所を間違えてるぞ。
「リダ様がいるからでしょ!」
「私だけ化物にするなよっっ!」
てか、さりげなく自分を削除しやがったよ、この残念勇者!
「そうだよ。リダだけとかあり得ないし。ユニクス姉も十分立派な化物だから」
「化物はやめてよ......それじゃ、本当にリダ様じゃないの!」
「私は化物じゃないっ!」
割りと本気で言ってるユニクスに、私は思いきり喚いた。
大概過ぎて二の句が継げない......ユニクスは私の事を何だと思っているんだ。
色々な意味でなっ!
「ともかく、話を戻しましょうか」
そこでルミ姫がポツンとまともな提案をして来た。
普段はただの天然なのだが、今回に限っては一番の常識人に見えるから不思議だ。
「そうですね。問題はこの後にあります」
ルミの言葉に頷いたユニクスは、そこで再び毅然とした表情になる。
こう言った真面目な顔を凛々しく作ってる分には、普通に勇者らしい勇猛な面構えと言えるんだがなぁ。
「その筋の情報を元に、二人の暗殺者の移動ルートを幾つか予測した所......その内の一つに、この冒険者アカデミーが候補として上がっていたんですよ」
「ええええっっっ!」
ルミは慄然とした形相で叫んた。
私も胸中穏やかでなどいられない。
「それは、本当なのか?」
「幾つかの予測ルートがあるので、まだ確定ではないのですが......可能性としてここにやって来る危険性はゼロではないと言う事だけは間違いなさそうです」
......。
なるほど。
しかし、そうなると......だ?
「恐らく、仮に冒険者アカデミーに用事があったとするのなら、その目的は十中八九......リダ様かと」
「だよな」
ユニクスの言葉に私は肯定せざる得なかった。
むしろ、それ以外に予測可能な物が見当たらない。
元々はユニクスもそうだったが、私がこの学園に転入して来る事を予見していた、転生者の仕業だろうか?
もしそうだとするのなら、奴等サイドも追い詰められていると予測出来る。
自力でなんとか出来るのなら、わざわざ暗殺者をここに召喚する必要はないからだ。
だが、その選択肢を選んだ。
仮に選ばざる得なかったとするのなら、大なり小なり困窮していると考えられる。
予見可能なスキルを所持している筈なのに、追い込まれていると言うのは、私にとっても朗報だ。
......まぁ、追い込まれている予測が確実であったのなら、なんだがな?
理由は色々あるが、まず可能性として最も高いのは予見出来る『だけ』と言う事。
これだけであるのなら、全く恐れる必要はない。
未来は常に変動しているからだ。
飽くまでも、現実になるだろう確率の高い時の流れを、予め察知する事が可能な能力......と、こうなる。
私が恐れていたのは、運命を左右出来るだけの能力だ。
この能力があるのならわざわざ暗殺者を呼ぶまでもなく、独力でどうにでも出来てしまえる。
正確に言うのなら、どうとでもなる。
だが、それをしない。
答えはそこにあると見ても良いだろう。
しないのではない......出来ないのだ。
「もし、その暗殺者が私のお客さんであるのなら、丁重なおもてなしをしてやらないとな」
「......そうですね」
ニヤリと笑う私に、ユニクスもやんわりと淑やかに微笑んだ。
「この二人がどれ程の実力なのかは知らないのですが、大丈夫だと私は信じております」
更に微笑みの度合いを濃くしてからユニクスは答え、
「私とリダ様の間にある愛は無敵ですからっ!」
間もなく私にゲンコツを落とされるのだった。




