黄金島の二層目は、火山地帯【3】
やっぱり、何事も準備と言う物は必要と言う事だろうか?
どちらにせよ、万全の熱対策をしていた私達は、全く問題なく先を進もうとする。
そんな時だった。
「なぁ、シズ1000。この先は何処をどう進むのがベストなんだ?」
ダンジョンに向かって足を向けるより早く、ういういさんは彼女の頭上に戻ってお茶を飲み始めたシズ1000へと声を向ける。
余談続きで申し訳ないのだが、どうやらシズ1000の定位置はういういさんの頭上にあるらしく、そこで座布団を敷いた状態でお茶とか煎餅とかを食べていたりする。
魔導人形のくせしてお茶を飲んだり煎餅を食べたりしているのは微妙に不自然ではあったんだが、小型扇風機とか頭から出している時点で既に常識外れな事をしているので、そこは敢えてツッコミを入れないで置こう。
閑話休題。
「う~!」
ういういさんに尋ねられたシズ1000は、そこから瞳をキュピ~ン☆ っと光らせると、
「う~!」
軽く叫んでから右方向を指差す。
同時に、左右のお団子から文字が浮かんだ。
右のお団子には『宝箱の数、12個』と。
左のお団子には『的中率97%』と書かれていた。
どうやら、右側方向には12個程度の宝物が存在し、97%の可能性で額面通りの結果になるらしい。
…………。
復活後は、誰も足を踏み入れていない未踏のダンジョンだと言うのに、どうしてそんな事が分かるんだろう……?
次に今度は左を指してみせる。
「う!」
ちょっとつまらない顔になっていたシズ1000と同時に、お団子の文字が変化する。
右のお団子には『強力なトラップ有り』と。
左のお団子には『宝箱の数3個、的中率88%』と書かれていた。
…………。
トラップまで見抜くのか。
一体、どの程度先の事を見据えて、こんな予測を出しているのかは知らないけど、もはや千里眼だな……。
ますますシズ1000が欲しいと思う私がいた。
日常生活には必要のない能力かも知れないが、冒険者にとっては凄まじく便利な能力だ。
このシズ1000が大量生産されれば、無駄死にする冒険者の数も激減する事だろう。
後で、シズ1000の制作者をそれとなく聞こうかな……。
ういういさんの話だと、確かシズからシズ1000を貰ったと言っていたから、シズなら何か分かるかも知れない。
今すぐにと言う訳には行かないが、知れば知る程、シズ1000の能力に驚かされる私がいた。
「う~!」
最後に前方へと指を差したシズ1000が、瞳をキュピ~ン☆ っと光らせる。
実に明るい表情だ。
きっと、ここがオススメ! とでも言いた気な雰囲気でもある。
同時にお団子の文字が変わる。
右のお団子には『宝箱の数27個。内一つがレア宝箱』と。
左のお団子には『的中率95% 但し、レア宝箱の的中率は100%』と書いてみせる。
……うむ。
これは、もう、次に進む場所は決まったな!
「ほ~。なるほど、なるほど? そうなると、まずは右側のお宝からだな?」
……って、待て!
アンタ、全部取る気なのかっ!?
シズ1000の説明を一通り目を通したういういさんは、ふむふむと軽く相づちを打った状態で、右側へと身体を向けた。
「うぅぅぅ~!」
直後、シズ1000もういういさんを止める。
同時にお団子に文字が浮かんだ。
右には『そっちの宝箱を漁っている内に』と。
左には『別のパーティーにメインの宝を取られる』と書かれていた。
つまるに、欲を掻いてしまったばかりに、本来なら手に入れる筈だったメインの宝箱を、後からやって来た冒険者達に開けられてしまう危険性が高い……と、忠告している訳だ。
更にお団子の文字が変わる。
右には『的中率99%』と。
左には『欲張り過ぎだぞバカ!』と。
「うるさいなっっ!?」
シズ1000にまでバカ呼ばわりされてしまったういういさんは、眉を釣り上げて怒鳴っていた。
私としては、シズ1000の言い分が正しいと思うので、ここは何も言わないで置いた。
さっきはボスの脅威に怯えてしまい、一斉に逃げ出してしまった冒険者達ではあったが……そんな冒険者達の内、一つか二つ程度のパーティーは様子を見に戻って来る可能性がある。
何と言っても、私達パーティーが逃げる事なくボスのエリアに残っていたからだ。
また、逃げ出したパーティーとは別に、ボス戦を経験しなかったろう後続の冒険者パーティーがボスのエリアに到達している可能性だって十二分にあるだろう。
その場合、ボスが倒された事を自分の目で確かめる事になる為『ああ、もう一層目のボスが倒されたのか』と言う感じで納得し、そのまま二層目……つまり、このエリアに向かって来る事となる。
どの程度の時間を掛けて、この二層目へと降りて来るのかは不明だが……あれだけの冒険者が居たのだ。
恐らく、この二層目へと降りて来るのも時間の問題であろう。
これらを加味するのであれば、悠長に全ての宝箱を開けに行っている暇などないだろう。
そんな事をしていたら、別のパーティーに一番美味しい所を持って行かれるのがオチだからだ。




