黄金島の二層目は、火山地帯【1】
思わぬ所で、思わぬ人間と遭遇した結果、私にとっても想定外の出来事が起こっていた。
……尤も、それは私にとって比較的都合の良い事でもあったんだがな?
結果的にういういさんは、一時的に私達と一緒のパーティーに入る事となった。
どうやら、ういういさんの方が先にこのダンジョンを攻略しており、みかんは後からやって来るらしく……ういういさんの頭上にいたシズ1000とか言う、シズそっくりの魔導人形が、みかんへと伝言を残していた模様だ。
余談になるが、このシズ1000。
密かに結構便利な魔導器と言うか、何気に一人いると助かる存在だ。
詳しい事までは聞いていないが、ういういさんのアイテム管理や財産管理、ダンジョン攻略のナビゲーションまでこなす万能な魔導人形らしい。
実は私も以前に、ナナイケと言うダンジョンで魔導人形の卵を手に入れていた為、私も似た様な魔導人形を孵化させる事が可能ではあったが……やめて置いた。
確かに便利そうだし、何かと私にとっても助けになりそうな気はしたんだが……ユニクスが鼻血を流して欲しがりそうだったし、便利な部分を差し引いても面倒事の方が増えそうな気がしたのだ。
毎度思うが、予想だにしないユニクスの奇行には勘弁して欲しい所だな。
そこはともかく……シズ1000の利便性は色々と細かい所まで手が届く凡庸性を持っている。
本当、私も一人欲しいなと思ってしまうばかりの万能性を誇っていた。
想定外と言うか……予想以上だったのが、ボスドロップだ。
一層目のボスを倒した私達が、間もなく手に入れた大きな水晶の様な物なのだが……ういういさん曰く『王族がオブジェとして好んで設置するレア結晶だよ、それ?』らしく、大層な価値を誇っているらしい。
実際にはどの程度額で売れるのかは不明だが、軽く数億は行くらしい!
この話を聞いた瞬間、私は腰が抜けそうになった。
いや……だって、数億だぞ?
場合によっては、私の借金の大半を、この水晶だけで補う事が可能な額だぞっ!?
見た感じ、ただの水晶玉にしか見えないと言うのにだっ!
飽くまでも結果的にではあったのだが、私の超炎熱爆破魔法の一撃によって倒す事が出来なかったボスを見て、周囲で戦っていた冒険者が全員逃げ出してしまった為、ボスドロップ報酬は私達のパーティーが独占する事となった。
そうなると……私とアリン、ユニクスとういういさんの四人で分割する事となる。
仮に数億の部分を5億と見積もると……一人当たり一億二千五百万マール。
アリンの分も入れれば、二億五千万だ!
良いねぇ……良いよ、早速半額程度の返済が見込めそうだ。
この調子で、残り三億五千万程度の借金を完済させてやるぞ!
でも、冷静に考えると、三億でも十分大金だぞ!
もう、こんな想いは二度とごめんだぞぉっ!
心の中で、地味に魂の叫びを放っていた私は、一応の借金減額を果たせる事が出来て、若干の安堵感を抱きつつも次の階層へと向かった。
ボスを倒した事で出現した階段を降りて行くと、オーソドックスな鍾乳洞の様な通路に繋がっていた。
こんな光景を目の当たりにすると、ここが迷宮の中である事を実感する。
レベルの高いダンジョンは妙に凝っていると言うか……ここが中なのか外なのか良く分からない気持ちにさせられるからな?
鍾乳洞を進んで行くと……何やら、妙に気温が高くなって行くのを肌で感じた。
ぐむ……この暑さは……なんと言うか、抽象的に表現するのなら、冷房のない教室に閉じ込められているかの様な?……そんな、息もむせ返る暑さだ。
飽くまでも個人的な見解になってしまうが……ともかく、私は暑いのが嫌いだ!
もう、毛虫とどっこいの苦手レベルだ!
なんなら、毛虫の方がまだマシだと言いたい。
そのぐらい苦手なのだ!
くそ……なんてこんなに暑いんだ?
私を蒸発させる嫌がらせでもしたいと言うのかっ!?
心の中でこんな事を考え……耐熱魔法でも発動させ様かと考えていた時だった。
「う~!」
私と同様、暑そうな顔をしていたアリンの肩へと飛び乗り、瞳をキュピ~ン☆ と光らせて見せる。
そこから、頭の上にあるお団子から、ニョキッ! っと小さな扇風機の様な物が生えて来る。
あのお団子……扇風機を生やすのか。
てか、なんで扇風機?
私の中にある素朴な疑問はさておき……シズ1000はニコニコ笑顔で、お団子の上にある小さな扇風機をポンッ! っと取ってみせ、アリンへと小さな扇風機を手渡した。




