借金完済目指し、黄金島【23】
「しかし、リダ様? ここに来て少しばかり思ったのですが……」
少し素朴な疑問を持った様な顔になっていたユニクスは、
「ダンジョンの中に入って、まだ1マールも稼げてない気がするのですが……?」
口でも素朴な疑問を私にぶつけて来た。
「……まぁ、ダンジョン攻略も序盤だからな? まだこれからって話じゃないのか?」
私は口元をヒクヒクしながらユニクスに声を返す。
「しかし、リダ様? 最初の層とは言え、もう既に佳境を迎えている様な気がするのですが……これで良いのでしょうか? 通常なら、ダンジョン内にある宝箱を見付けたりする為、敢えて回り道などをして宝箱を回収するのが通常の攻略……と言いますか、私達の目的なのでは……?」
私なりの言い訳……もとい、言い分を聞いたユニクスは、再び素朴な……素朴過ぎる痛い台詞を言って来た。
ユニクスの言いたい事はもっともではある。
しかし……しかし、だ?
「一層目は、マラソン冒険者達が山の様に駆けずり回っている最中だからな? つまり、競争率が高い。しかし、これがまた未攻略の二層目となれば、どうなる?」
「……なるほど、確かに二層目へと最速で向かう事が出来たのであれば、結果的に独占出来ますね!」
私の言い訳……じゃない、言い分を耳にして、ユニクスはようやく納得混じりの声を返して来た。
うむ、良い返事だ!
そうだ……そうだぞ? そもそも、一層目よりも二層目の方が、よりレアなアイテムが宝箱の中に入っている可能性が高いし、私としてもより効率的かつ他の冒険者パーティーと争う様な真似はしたくないんだ。
これでも淑女だからな!
「……しかし、リダ様……この調子で、無駄にサクサクとダンジョン攻略『だけ』をしてしまい、気付いたら1マールも手に入れる事が出来なかった……なんて言うオチがありそうで怖いんですが……」
怖い事言うなよっ!?
今、なんとなく私も、そんな事を考えてたりするんだから!
今回のダンジョン攻略は、迷宮の先に進む事が主目的ではなく、純粋に単純に金が欲しいだけのクエストだ。
そこは私なりにも分かっているので……まぁ、つまり……だ?
「ここのボスはまだ倒されてはいないだろう?……最速攻略となれば、ボスドロップは私達が頂く事になる。グダグダと文句ばかり言ってないで、さっさと行くぞ!」
最後まで地味に言い訳がましい喋り口調になってしまったが……私は空中散歩風味の幻影を抜け、如何にもボスが居そうな門をくぐって行く。
果たして、そこには……。
「おお! なんか、金になりそうなのが居るな!」
ボスっぽいのがいた。
恐らく、この階層のボスなんだろう。
うん、そうだ! そうに決まっている!
残念ながら一番乗りと言う訳には行かなかったが、これで確実にお宝ゲット出来そうなシチュエーションに、ようやく遭遇した訳だ。
「お~? あの、おっきいモンスターがお金になるんだお? ハーピー人形が買えう?」
さっきから、攻略をするだけして、ちっとも金になってませんよ? 的なツッコミをみせるユニクスへと、これ見よがしに訴え掛ける感じの台詞を然り気無く叫んでみせると、ユニクスではなくアリンが私へと尋ねて来た。
だけど、金銭的な物の対象は三歳児クオリティー。
百貨店で1980マールで買えるオモチャの人形が買えるかどうかが、アリンにとっては大切だった。
……どうしてこんな子になった?
「ああ、もちろんだ! 多分、百個は買える!」
当たり前の事ではあったんだけど、私はアリンの言葉に即行で頷きを返した。
きっと、アリンに対してなら、こう答えた方が分かり易いのだろう。
「おおおおおっ! ス、スゴい! 凄過ぎるおぉぉっっ! アリン、絶対にやっつける~っ!」
案の定、アリンは素直に驚いて、俄然やる気に満ちた笑みを作って見せた。
うむ! 良い返事だ!
やっぱりアリンは、私の期待通りの台詞をしっかり吐いてくれるな!
やる気になったアリンを見て、ニコニコ笑顔になっていた私がいた頃、
「相変わらずお子ちゃまは単純だな……リダ様! ここは私にお任せ下さい! 不肖、このユニクス・ハロウは、リダ様の為なら例え火の中水の中! リダ様のピーの中でも喜んで進んでみます!」
ドォォォォォォンッッ!
アリンに対抗して、余計な事を叫んでいたユニクスが爆発していた。
こっちもこっちで、大本の予測通りと言うか……何となく言うんじゃないかなぁ……と考えている通りのふざけた台詞を言っていた。
ある意味でいつも通りではあるんだが、いい加減学習して欲しいぞ!




