借金完済目指し、黄金島【21】
さりげなぁ~く私をヨイショして、自分の都合の良い事を言うアリンに、私は少しだけ眉を捻ってしまった。
この調子だと、私をおだてれば好きな物を何でも買って貰える物だと誤解してしまいそうだ。
だが、私はそこまで単純ではないし、甘くはないぞっ!?
甘くはないけど……でも、だ?
「そうだな! ハーピー人形は購入を検討してやろう! まずは、このダンジョンをクリアしてからになるけどな?」
気分が良いので、今回は素直に買ってやろうかと思う。
「おおおおおっ! やった! やったお~っ! ついにハーピーちゃんが、アリンも手に入るんだお~っ!」
アリンは今にも小躍りする様な勢いで喜んでいた。
……うむ。
こんなに喜んでくれるのなら、やっぱり素直にあの時、アリンに買い与えてあげるんだったな。
そうすれば、こんなダンジョンの中にやって来る必要もなかったし、デパートも爆発せずに済んだと思うし。
…………。
ま、まぁ……起こった事をくよくよ考えていても始まらないよな!
「良し! ともかく、次に行くぞ、次!」
「おーっ! ドンドン行くおーっ! そんで、早くおうちに帰って、ハーピーちゃんと一緒に色々な事して遊びたいんだお~っ!」
私とアリンの二人は、気持ちを新たに次のエリアへと向かった。
「……くそぉ……私の出番はいつやって来るんだ? このままでは、リダ様に『好きだユニクス! 愛している!』と、言わせられないではないか……」
一人、ブツブツと妄言めいた事をほざいているレズがいたけど、そこは聞こえなかった事にして置いた。
○◎●◎○
牛男を倒し、洞穴の奥にあった通路へと進んで行った私達は、途中で二つの分岐点に差し掛かる。
見る限り、どちらかが当たりでどちらかが外れ……と言う感じの通路にみえた。
当たりの通路に行けば、更に奥の方まで向かう事が出来るんだろう。
逆に外れを引いてしまった場合は……まぁ、死ぬ可能性すらあるよなぁ……。
さて、どっちが正解なんだろうか?
「こっちだと思うんだお!」
少し頭を捻らせる私がいる中、アリンは迷う事なく二つの内の一つを指差してみせた。
「……? どうしてこっちだと思うんだ?」
「お月様があるからだお!」
「……月?」
アリンの言葉を耳にし……そこで私は気付く。
確かに、アリンが指した方には小さい月がフワフワと浮いていた。
なんと言うか、魔法で作ったオブジェの様な月で……直径二メートル程度の地球儀みたいな月だった。
地球儀にしてはやたら大きな代物ではあるのだが、本物の月と比較するのであれば、当たり前の当然の様に小さい。
「お月様は正直なんだお! か~たまのメモにもそう書いてあったんだお!」
おおおおっ!
鋭いぞ、アリンちゃん!
「そっかぁ~。そうだったな! ちゃんと覚えていたのか~? 凄いなぁ~! アリンは!」
記憶力も良い愛娘に、私は笑みでアリンの頭をなで回していた。
「あははっ! アリン、誉められた! ねぇ? 凄い? 凄いお? アリン、頭良い?」
「うんうん! 頭良いぞ~! 本当に賢い子だ!」
「わぁ~い! か~たまに、また誉められたお~!」
アリンの機嫌は花丸急上昇だ。
「待って下さいリダ様! それが果たして本当に正当な道なのでしょうかっ! もしかすると、立て札に書いてある事が真っ赤な嘘で、我々を欺いている可能性もありますよ! ここは、いたずらにアリンだけを誉めるのはよろしくないかと! 私にも優しく接するのが筋かと!」
直後、ユニクスが訳の分からない理屈でごねる様に叫んで来た。
どうやら、アリンだけ誉められている現状が、ユニクスなりにつまらないらしい。
しかし、私の視点からするのなら、
「いや……だって、お前……私に誉められる様な事なんかしてないじゃないか?」
「ぐはぁぁぁっ!」
私は自分なりに素直な感想を口にすると、ユニクスは胸を右手で抱えて断末魔の様な叫び声を上げていた。
どうやら、私の発言がグサッ! っと胸元辺りに刺さってしまったらしい。
さっきのミノタウロス戦で、結局役に立てなかった事を気にしている模様だ。
全く……仕方のないヤツだな。
「大丈夫だ、お前にだって役に立つ事がある日が来る。それが今ではないと言うだけの話だ」
「で、ではでは! 私の役に立つ時は、いつ到来するのですかっ!?」
「…………」
「ちょっ、リダ様! そこは押し黙らないで下さいよっ!? 私の出番が、完全に思い付かないって事になるじゃないですか! しかも、割りと本気で!」
そう言われてもな……本当にユニクスが活躍する様な場面がやって来るのかと言われるとなぁ……?




