リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【2】
防具の面を着けているから、正確には良く分からないが、なんとなく半べそ状態になっていたルミから模擬刀を貰って私は、既に模擬刀を持ってやる気満々になっていたアイン先生の前にやって来た。
うーん。
まぁ、さっきの夢のせいなんだろうけど。
なんとなぁーく、似てる気もする。
確証なんか何もないし、別人である可能性の方が圧倒的なんだけどさ?
「ほいじゃ、ま。よろしく」
「相変わらず、礼儀のないヤツだな......まぁ、別に先生扱いしろとまでは言わないんだがなぁ......」
軽い口調で言う私に、アイン先生は少しだけ呆れ眼でぼやいていた。
もっとも、心から怒ってるとか、そう言う訳ではない。
純粋に、飽くまでも礼儀として、相応の態度を取らないと、社会に出た時に困るぞ的な感じだ。
なんとなくだけど、決して悪い先生ではないと言う事だけは分かる。
守護霊も白いし。
私が対峙すると、アイン先生が構えを取ってみせた。
......ほー。
剣士を専属で教えている先生だけはあると言うべきか?
構えだけで分かる。
中々に熟達してる。
「どうした? 打って来ないのか?」
「そうですねぇ。取り敢えず、先生に先攻を譲ります」
「全く......本当に、凄い余裕だ」
言うなり、アイン先生が動いた。
気迫の籠った突きだ。
普通に手加減なしって感じの鋭い一撃だった。
気を抜いたら喉が潰されかねない強烈な一撃が飛んで来た私は、ギリギリの所でスッとかわす。
すると、一直線に突き進んでいた筈の剣筋が、避けた瞬間に変化する。
まるで誘導弾の様に剣筋が変わり、私の上半身を斬り付け様とする。
これもギリギリでかわして見せた。
それと同時に、私の模擬等も動く。
カウンターの要領でアイン先生の眼前に私の模擬刀が。
「っ!」
刹那、アイン先生は、
ドンッ!
と、床を蹴る感じで後方に素早く逃げた。
当然、私の模擬刀は空を切るのだが、
「なっ!」
間もなく、空を切った私の模擬刀から剣圧が飛び出して、アイン先生を追撃する。
これにはアイン先生も予測出来なかったらしく、愕然とした顔になりつつも......しかし、ちゃんと寸前で避けていた。
ヤバい、この人......かなり強い。
なんでこんなトコで先生してるんだろう?
いや、まぁ......強い剣士が先生してくれた方が、生徒の上達も早いんだろうけどな?
しかし、冒険者ランクにすれば、普通にSS以上には相当する。
率直に言うのなら、こんな所で先生なんかせず普通にもっとお金になる仕事をこなした方が、金銭的にも社会的にも良い待遇や環境を手にする事が出来る筈なんだ。
そう考えると、何となくだが勿体ない気もするな。
「リダ君。本当にキミは何者だい? こないだの剣聖杯の時から気になって仕方なかったんだが......どう考えてもただの学生には見えない」
アイン先生は真剣な顔になって私に答えた。
......うーん。
正直に言うのなら、ここで私の正体を口にして、彼を協会本部にスカウトしたい。
どう甘く見積もっても、SS以上の剣士は貴重な人材だ。
学園の生徒に剣術を教えるだけで終わらせるのは勿体ない。
......とは言え。
現状でいたずらに私の正体をポンポン言う訳にも行かない。
こっちにはこっちの都合があるからな。
......仕方ない。
「ただの学生ですが、なにか?」
どっかの村人みたいな台詞になってしまった。
別に意図的ではないぞ、普通に偶然だ。
「......飽くまでもシラを切るつもりかよ。まぁ、良い」
良いのか?
それなら、もうこの話は終わったと言う事で。
「なら、この勝負で俺が勝ったら、ちゃんとリダ君は自分の正体を言うって事で」
なんでそうなるんだよ!
思わずツッコミを入れたくなった私がいた。
どこまで自分勝手な事を言う男なんだろうか。
しかも、いつの間にか勝負になってるし。
......まぁ、良い。
「別に構いませんよ? けれど、そうなると私にメリットの無い勝負ってのが気に入らないですねぇ」
「なるほど、確かにそうだ」
不本意ではあるが了承した私。
ついでに、向こうの言い分だけを飲むのも気に入らなかったので、取り敢えず吹っ掛けて見る事にした。
ま、特に何かを求めている訳でも何でもなかったんだがな?
「じゃあ、こうしよう。この勝負で俺が勝ったら、キミが自分の正体を言う。そして負けたら」
そこまで言うと、アイン先生は超真面目な顔になって叫んだ。
「俺が土下座して、キミの正体を聞こうっ!」
「バカですかっ!」
結局、同じだろうがっ!




