借金完済目指し、黄金島【13】
入り口付近で待っている冒険者は、早くもソワソワし始めては……フライングするんじゃないかって勢いで復活の時を待っていた。
果たして。
時間は、復活の時……十二時を迎えた。
その瞬間。
ワァァァァァァアッッッ!
あたかも攻城戦でもしている尖兵みたいな勢いで、ダンジョンの中へと次々と入って行く冒険者達。
まるで徒競走だな?……もはや、ダンジョン攻略をしているのか競争をしているのか良く分からない光景だぞ……?
……っと、私達も行かないと!
正直な所を言うのなら、ここまで急いで入らなくても問題はないと言うか……どうせ、前を行く連中の大半は冷やかし半分にダンジョンの中へと入って行る感じなので、私からするのならむしろそこまで死に急いでどうするんだ? と言いたい光景ではある。
しかしながら、我先にと言う妙な雰囲気みたいな物が不思議と出来上がっていて……私も急がないと行けない的な心理が生まれていた。
そして、
「みんな凄いお! すんごぉ~く走ってりゅー! アリンも負けないぞぉっ!?」
特に何も考えていないのだろう三歳児が、不毛な対抗意識を燃やし始めて、一気に走り出す。
……って、アリンちゃんっ!?
「ま、待てアリンッ! 別にそこまで急がなくても……」
満面の笑みのまま、かけっこなら負けないと言うばかりの勢いで駆け出して行ったアリン。
一応、制止させようと声を張り上げたが、周囲の異様な熱気と足音で掻き消されてしまったらしく……ってか、人と人の合間を縫って、グングンと先を行ってしまう。
ちょっ……アリンちゃんっ!?
「リダ様! 安心して下さい! 私がしっかりとアリンを追います!」
焦る私がいる中、ユニクスが素早く言い放つと、アリンを追いかける形で走り出した。
何だか知らないが、えらい事になってしまったな。
「全く、うちのアリンちゃんは……」
ある意味でユニクスがいてくれて良かったかも知れない。
こんな事を考えつつ、私も早足でダンジョンを進んで行く。
道は、元来であるのなら見通しの良い一本道だ。
まるでマラソン大会の様に、冒険者と言う名のランナー達がバタバタ走っていなかったのなら、ここは奥まで見通す事の出来る一本道であったに違いない。
百年迷宮と言う割には親切と言うか……楽だな。
一本道と言う、実に分かりやすい道と言うのも良心的ではあったのだが、何らかのトラップが仕組まれている訳でもない。
本当にただの通路としか他に言い様のない状態だった。
いや、今はただのマラソンコースか。
どちらにせよ、おおよそ迷宮とは言い難い、実に単調なエリアだ。
こんなので良いのか?
私が知っているダンジョンとは大きく違うなぁ……?
こんな事を軽く考えていた頃、
『警告します。ここは百年周期の極めて危険なダンジョンです。腕に自信のない者、無駄に過信している者、くそ雑魚ナメクジは、ここで引き返して下さい』
何だか良く分からない警告が入った。
……わざわざこんなアナウンスまで入るんだな。
余りにも良心的過ぎて、少し草が生えてしまった。
もしかしたら、ダンジョンに入って間もなく一本道になっていたのは、ここで警告を入れる為に敢えてこんな造りにしていたのかも知れない。
だけど、ここに居る連中がこんな警告に耳を傾けるとは思えないんだけどなぁ……。
少なからず、警告を聞いて引き返そうとする者は誰一人していない。
そもそも、この警告の文言と言うか台詞も、何処か相手を挑発している感じの内容だったし……まぁ、結局はこうなるよな。
警告をするにしても、もっと相手に伝わる様な内容の方が良いんじゃないのか?……なんぞと考える私がいた時、
「…………ん?」
私は立て札の様な物を見付けた。
その先には、大きくて如何にも頑強そうな門がドドーンッ! っと構えている。
さっきの警告と言い、この単調な通路染みたマラソンコースと言い……ダンジョンとは思えない状態なんぞを加味するのであれば、これまでは警告をする為に敢えて作られた場所なんじゃないかと思われる。
そうなると、この立て札も警告の類いなのかな?
「……ん? 精霊文字?」
警告の類いだろうと思っていたが……ふむ、違うな。
どうしてなのかは知らないが、立て札に書かれていた文字は精霊文字だった。
何年前からあるのか知らないが、このダンジョンはかなりの大昔に作られた物だと思うし……そこらを考慮するのであれば、精霊文字が汎用文字で使われていた時代が、この島にあったのかも知れない。
ここに関しては憶測の域を越える事はないんだがな?




