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借金完済目指し、黄金島【11】

 秩序が定めた法則は、人間にとってのみ言うのなら、限りなく絶対だ。


 但し、飽くまでも秩序に制限を受ける存在にのみ適用される法則である為、全く適用されない存在なんぞもいる。


 混沌の世界に生きる存在がそれだ。

 平たく言うと、悪魔辺りはこの法則に縛られる事はない訳だな。


 その他だと、混沌龍カオス・ドラゴン辺りも同じで、秩序を壊す事が役割とも言える龍だけに、最初から秩序の法則に従う必要がなかったりもする。


 ……と、話が大きく脱線してしまったな。

 そろそろ、話を戻そうか?


 どちらにせよ、現在のアリンは人間であり、私の娘だ。

 

 生誕の仕方はどうあれ、生物的に言うのなら私の娘で合っている。

 父親はアインだな。


 まぁ、そこは良しとして……ポイントはアリンが人間である事だ。


 人間である以上、秩序に縛られてしまう為、当然ながら質量保存の法則には従わなければならない。


 そうなると、ありもしない所からいきなり物を出すなんて事は出来ない訳となる。

 

 じゃあ、この砂は何処からやって来たと言うのだろう?

 ふと、小首を傾げてしまう私。


「なぁ、アリン? この砂は何処から持って来たんだ? 実は私達の見えない所に、大きなクレーターが出来ているとか……そんなオチか?」


 もしそうであるのなら、急いで埋め戻さないと……。


 こんな事を考えていた私がいた時だった。


「そんな事はしてないお? この回りにある砂の表面を少しずつかき集めただけだお? 一杯あるから、表面の部分を集めただけで、山になったんだお~?」


 ……マジか。


 アリンの言葉を耳にして、私は少し驚いてしまった。


 もしアリンの言っている事が正しいとするのなら、外見では見分けが付かないぐらいに少しの砂をそれぞれ広範囲に渡って収集した事になる。


 この量からすると……ほぼ間違いなくヘクタールレベルだ。


 あの一瞬で……しかも、軽くやっている様に見えたと言うのに、それでも半径数キロ範囲の砂を集めたのか……。


「本当……か~たまは、お前の底知れない魔力の大きさに、驚く事しか出来ない時が多いよ……」


「お? そ~なんだお? か~たまだって簡単に出来るでしょう?」


「……簡単かどうかは知らないが、やってやれない事はないかも知れないが……」


 キョトンとした顔で言うアリンに、私は苦笑混じりだ。

 砂の表面だけを広範囲に渡って集めると言う行為は、簡単な様で難しい。

 力の加減を間違えれば、表面だけではなく、もっと奥の方の砂まで巻き上げてしまうからだ。


 それを、ヘクタールレベルで簡単にやってのける器用さ加減を加味するのなら……我が娘ながら、魔導のコントロールがずば抜けて高いとしか、他に表現する事が出来ない。


 繊細なコントロールを可能にし……かつ、一撃必殺の強烈な魔法まで発動させる事が可能なのだから、もはやなんでもアリの三歳児である。

 挙げ句、やっている事はことごとく凄まじいのに、目的は恐ろしく単純だと言うのだから……何となく宝の持ち腐れ感が否めないな。


 もっと、こうぅ……人の役に立てる様な物に使った方が良い気もする訳だよ、私はね?


 しかしながら、アリンの人生はこれからだ。

 きっと、もう少し大きくなれば、その膨大かつ器用なコントロールまで出来てしまえる、大魔導の様な能力で、様々な人間に感謝される様な行為をしてくれるに違いない。


 ……多分!


 どの道、今日の所は砂山で遊ぶ事にしようか。


 結果的にクレーターが出来たとか言う、他人迷惑な事にはなっていない事を知った私は、小山を後で元の更地に戻せば良いやと開きなおる形で、砂の山へと足を向けた。


「よぉ~し、それじゃあお城でも作ろうか?」


「おぉぉっ! アリンもやりゅ~! でっかくて立派なお城にするんだおっ!」


 こうして、アリンと二人で巨大な砂のお城を作り始めた。


 しばらくすると、変態二人が復活し、


「リダ様? この凄い量の砂は何ですか? 引く程迷惑な量だと思うのですが?」


 ユニクスが、いつにも増して正論染みた台詞を口にして来た。


 歩く傍迷惑でもあるお前が、こんな時だけ正論を言うとは思わなかったぞ!


「これは……砂を使った造形ですか?……ふむ、なるほど。それでは、砂を少し貰って自分が持っている赤い水着を着たリダ様の像を……」


 ドォォォォォンッッッ!


 そして、普段通り非常識だったバアルは、変な物を造りそうだったので、行動を起こす前に爆破して置いた。


 コイツの場合……砂に魔法を掛けて私のゴーレムとか作りそうだからな……しかも、際どい水着とか着せてだっ!?


 誰がやらせるかっっ!

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