借金完済目指し、黄金島【10】
……と、魔法のルーツはさておき。
「か~たまもやりゅ~? これ、すんご~く面白いおー! 波がザッパァァンッ! って来て、ぶわぁぁっっ! ってなって、ヒャッハーッ! って感じなんだお!」
アリンは鼻息を荒くした状態で私へと説明して来た。
言いたい事は分からなくもないけど、擬音がメインの説明なので、具体的な物はあんまり良く分からない説明の仕方でもあった。
しかし、それでも三歳児なりに、現状の楽しさと言う物を精一杯、私へと伝えたかったんだろう。
「波がねー? こぅぅ……ね? ザザザァァァッ! って来りゅとー、アリンがねー? ぶわわわっ! って上がって、ジャンプするんだおー! 海の波ってすごいおねーっ!? 力持ちだおねーっ!? アリン、流されるかと思ったお~っ!」
本当に流されなくてよかった。
ふんふんっ! って感じで鼻から息を吐き出して言うアリンの言葉を耳にして、私は内心で安堵の息を吐き出していた。
アリンの事だから、海に流される程度の事では、溺死する様な状態になんてならないとは思うんだけど……しかし、万が一と言う事だってある。
少し心配性で過保護な考え方かも知れないけど、母親の視点からするのであれば大切な一人娘なんだから、やっぱり心配になってしまう所もあるんだ。
だからと言うのも変な話なんだが、
「そうか、そうか~。ははは! 良かったな、アリン。それじゃあ次は海岸で砂山を作る遊びとかしよっか~?」
私は比較的安全な遊びをアリンに教えてみせる。
波乗りは、やっぱりなんだかんだ言って三歳児には早い気がするしなぁ……。
さっきの状態を見る限りでは、そこまで危険な事にはならない気もするんだけど、サーフィンはやっぱり大人の嗜みと言う立ち位置が一番しっくり来る。
決して、若い人間がやっては行けないと言っている訳ではないし、競技的な物を目指すのであれば小さい内からやっていた方が、なにかと有利な部分もあったりもするんだろうが……生憎と、私はアリンをプロサーファーに育て上げる予定は微塵もない。
近未来……大人になって、趣味でサーフィンをやると言うのであれば止めるつもりはないが、今の所は大人しく海岸で砂山を作ってくれた方が、私としては助かるんだよな?
主に、精神的に気が休まる。
「お? 砂山だお? それって、公園の砂場で作うヤツなんだお~?」
「そうだな? 感じ的にはそれと同じなんだけどさ? あっちよりも大きくて立派なのが出来るだろ?」
「お? おぉぉっ! 本当だぁー! 砂が一杯ありゅから、もっと凄いの作れうねー!」
私に言われてから、アリンは周囲を軽く見回して瞳をキラキラさせた。
まぁ、こんな事は言われなくても気付くレベルではあるのかも知れないけど……やっぱりそこは三歳児なのだ。
そして、三歳児だからこその好奇心と言う物もある。
きっと、今のアリンは思っているだろう。
「こんなにお砂があるんなら、本当にお城が作れちゃうお! アリン、お城作う~!」
言うなり、アリンは右手を地面である砂浜に向ける。
そして、精神を集中させる形で瞳を閉じた時、
モコッ……モコモコッ!
砂浜に砂の小山が出現した。
「……へ?」
「ここに海岸の砂を集めてみたお!」
えぇぇっ!?
相変わらずやる事が突飛でもないなぁ……この子は!
やってる事は反則的かつ、人外レベルではあるんだが……いかんせん、その魔法を扱っている子のオツムは三歳児。
魔力は大人以上なのに、頭脳は三歳児だから……必然的に恐ろしい事が起こっている訳で……。
しかし、周囲を軽く見回すが……砂浜に変わった様子はない。
反面、二メートルはあるだろう小山となった砂は、ちゃんと眼前に存在している。
如何に魔法とは言え、質量保存の法則を完全に無視する事は出来ない。
魔法と科学は別の法則を持っている、全く違う概念ではあるのだが……この世界には、一定の絶対的なルールの様な物があり、それらの法則は根本的に従わなくてはならない。
理由は簡素な物だ。
この世界は、秩序のある世界だからだ。
秩序が根底に成り立つ世界ってのは、なんだかんだで絶対的なルールが存在する。
単純に一例を述べよう。
例えば『人間と言うのは男性と女性の二つの性から誕生し、その子供は男性と女性のどちらでもあり、どちらでもない存在でなければならない』なんて言うのがある。
これは説明するまでもない事だが……人間にはお父さんとお母さんがいて、この二人によって子供が誕生し、子供は両親のどちらの血筋にも該当するが、その反面で『どちらにも該当する為』両親とは全く異なる新しい生命になる……と、こんな具合だ。
これは、科学も魔法も関係なく、この世界に置ける秩序が産み出した根本的なルールだ。
この様に、魔法も科学も関係なく、全てに置いてルールを破る事の出来ない代物が、この世界には存在しているのだ。
そして、その中の一つに『質量とは必ず一定でなければならない』と言うルールがあり、このルールの関係上、ありもしない物を増やすと言う事が出来ない様になっていたのだった。




